緊急事態宣言の全面解除を待たずして、2月下旬から感染拡大の兆しが見えてきた。解除したのだから、なおさら感染は拡大する。その背景に変異ウイルスの広がりがあると見られている。
連日、新たな都道府県で変異株が確認されている。
倉橋節也・筑波大教授(社会シミュレーション学)は、国内で新型コロナウイルス変異株による感染拡大が続くと、ワクチン接種が進んでも、東京都内ではこれまでの感染規模を上回る可能性があると試算した。
すなわち、ワクチン接種さえすれば手放しで安心できる、という状況にはならない可能性がある。
世界で猛威を振るう3つの変異株 感染力・重症化率・死亡率の増加、ワクチン効果に懸念
変異株3種「五輪開催」で流入加速の恐れ 英国株は死亡率6割増、南ア株はワクチン効果に懸念(大岩ゆり AERA 2021.3.31 08:02)より
現時点で懸念される変異株は3種類ある。英国で最初に見つかった「英国株」と南アフリカで最初に見つかった「南ア株」、ブラジル・日本で最初に見つかった「ブラジル株」だ。
3種類とも日本国内で感染者が見つかっている。前述の変異株への感染者数は3種類への感染者だ。3月23日時点では英国株が501人、南ア株が13人、ブラジル株が35人だった。
英国株は、従来株に比べて感染力が4~7割程度高い。英国政府の専門家会合の小児分科会は2月、「変異株は感染力が上がっているが、特定の年代に対してとくに感染力が上がっているわけではない」という結論をまとめた。
英ブリストル大学などの研究チームが「BMJ(英国医師会雑誌)」に発表した論文によると、2020年10月~21年1月までに感染した約5万5000人の分析では、英国株への感染者の方が死亡率が64%高かった。
南ア株は感染力が50%程度、死亡率も20%程度増加するという報告がある。ブラジル株についてはまだ確実なデータはないが、WHOによると感染力が2.5倍になるとの報告がある。
変異株は、ワクチンが効かなくなる、あるいは一度感染した人が再感染する恐れもある。ブラジル株は、従来株に感染した人の再感染がすでに報告されている。
大阪府、神戸市 感染者数が急増する原因は変異株、4割を超える
大阪「第4波に入った」感染再拡大 いったいなぜ?(NHK 2021年3月29日 17時17分)より
新型コロナウイルスの感染が再拡大している大阪府。吉村知事は29日、「第4波に入った」という認識を示した。一体なぜ感染が拡大しているのか。
感染者数が急激に増えている原因の一つは「変異ウイルス」と見られている。
大阪府は変異した新型コロナウイルスがどれくらい広がっているか実態を調べるため、ことし1月からスクリーニング検査を行っている。
検査の対象には変異ウイルスの濃厚接触者などが含まれているため、大阪府はこの割合がただちに変異ウイルスの広がりの全体状況を示すものではないとしているが、割合がどんどん上がっていることが分かる。
今月14日から20日までの1週間の陽性者、800人の1割を調べたところ、およそ45%が変異ウイルスだった。
コロナ変異株の検出率、38.8%に上昇の意味 「市中に広がっているとまでは言えない」のだが……(日経メディカル 2021/03/16)より
神戸市は新型コロナPCR陽性検体のうち約60%に相当する検体について、変異株(N501Y変異)を確認するPCR検査を実施している。
3月11日に発表したデータは、2月19~25日と2月26日~3月4日の2週間分で、それぞれ7件、26件の計33件の変異株が確認された。検査数に占める割合(以下、検出率)は、21.9%と38.8%だった。
監視が始まって以降の推移を振り返ると、変異株の検出率は上昇傾向を強めており、3月4日までの38.8%は過去最多だった。
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【図解】日本はすでに第4波に突入。勢いは第3波を追い越す。医療崩壊は防げるのか。オリンピックは開催できるのか。
すでに第4波が始まっている。宮城、山形、愛媛など地方で感染が急拡大。前週比は、東京が1.11倍、愛知、大阪、京都、兵庫が1.5倍前後。