多摩地域の井戸PFAS汚染 血中濃度を調べる検査始まる 汚染源の特定へ、米軍横田基地との関連は?

住民の血液検査について記者会見する市民団体の人たち=東京都立川市で 社会

多摩地域の井戸PFAS汚染 血中濃度を調べる検査始まる 汚染源の特定へ、米軍横田基地との関連は?(東京新聞 2022年11月24日 06時00分)

東京都多摩地域の水道水に使われていた井戸水から発がん性が疑われる有機フッ素化合物(PFAS)が検出された問題で、同地域の住民を対象に血中のPFAS濃度を調べる血液検査が23日、国分寺市内で始まった。

検査を実施する市民団体「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」は同日、立川市で記者会見し、検査人数を当初予定の倍の600人分を目標にすると明らかにした。原因究明や汚染源の特定が目的で、18歳以上の参加者を募っている。

有機フッ素化合物(PFAS)
泡消火剤や撥水はっすい加工品などに使われる合成化学物質の総称。分解されにくく、体内に蓄積しやすい特性がある。がんや心疾患による死亡リスク上昇と関連があるとされているほか、出生体重の減少に影響しているとの研究報告もある。1950年代から家庭や空港などで広く使われていたが、PFASの一種PFOSは2009年、PFOAは19年にストックホルム条約で製造・使用が原則禁止された。国内では20年に暫定目標値として、PFOSとPFOAの合計を水道水1リットル当たり50ナノグラム以下と設定した。

住民の血液検査について記者会見する市民団体の人たち=東京都立川市で

国分寺市の本町クリニックで、20〜80代の男女29人から採血。12月3日にも、同市内の別の診療所で約60人の採血を実施する予定。今後は、国立や立川、羽村、昭島、武蔵村山各市などでも検査会場を確保する予定で、約20自治体に住む住民が検査を希望している。

同会は今年8月の発足当初、約300人分を目標に検査を実施すると表明。しかし、採血希望の問い合わせが想定より多かったため、血液分析を担当する京都大の原田浩二准教授(環境衛生学)の研究室で受け入れ可能な約600人分に増やすことを決めた。

国分寺と府中、国立の3市の一部浄水所の井戸から高濃度のPFASが検出されたため、都は2019年に取水を停止。20年には、NPO法人が国分寺・府中両市の22人を対象に血液検査を実施し、全国平均よりも高いPFASが含まれていた。米軍横田基地(福生市など)との関連も取り沙汰されている。問い合わせは同会の根木山幸夫さん=電042(593)2885=へ。

◆「子どもたちのために汚染濃度減らす」

「子ども世代のためにPFAS汚染濃度をできるだけ減らしてあげたい」。検査会場を提供し、希望者の採血を行った本町クリニックの杉井吉彦院長(72)は記者会見でそう語った。

この問題に関わるようになったのは、2020年に国分寺市などで行われた血中のPFAS濃度を調べる血液検査の際、NPO法人からの依頼で採血を担当したことがきっかけだった。今では市民団体「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」の共同代表に名を連ねる。

市民団体の記者会見に同席し、血液検査に参加する思いを説明する中村紘子さん=東京都立川市で
市民団体の記者会見に同席し、血液検査に参加する思いを説明する中村紘子さん=東京都立川市で

23日に採血を行った希望者の多くは、同クリニックのかかりつけの患者で、本紙報道で検査を知った人も多かったという。「健康診断でもこんなに人がいっぺんに来ることはないので驚いた。それだけみんな自分事として、この問題を捉えているということだ」と杉井院長は言う。その上で「本来ならばもっと多くの数で疫学的調査をしなければならない」と話し、今回の血液検査が将来、行政による大規模検査へつながることを期待した。

12月3日に採血を受ける予定の中村紘子さん(79)は、19年に取水が停止になった東恋ケ窪浄水所(国分寺市)の近くに住んで45年になる。長年PFASに汚染された水道水を飲んでいた可能性があることをニュースで知り「おいしい水が汚されてしまったという怒りと悲しみが湧き上がってきた」。この日の市民団体の記者会見に同席し、検査を通して汚染源を特定することで「美しい武蔵野台地を元に戻していきたい」と訴えた。

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