地球上の雨水はもはや飲用に適さないことが研究で明らかに PFASという有害な物質が含まれている

永遠の化学物質PFAS 科学・技術

地球上の雨水はもはや飲用に適さないことが研究で明らかに( By Oh Ryoko Esquire 2022/08/16)

英語で“Forever Chemicals(永久に残る化学物質)”とも呼ばれ、自然界や体内で分解されにくく、一度生成されると蓄積されやすい…さらに発がん性も謳われる「フッ素」の汚染が限界を超えたと、スウェーデンの大学が結論づけました。

アメリカの飲用水汚染ガイドラインに則ると、「地球上の雨水の全てが飲用に適さない」ということが複数の環境科学者の研究によって明らかになったと「Business Insider」が報告しています。

汚染されていない土地はもはや存在しない

現在の雨水には、フッ素系界面活性剤(以下PFAS)という有害な物質が含まれているということ。2022年8月2日に「エンバイロメンタル・サイエンス&テクノロジー(Environmental Science & Technology)」に掲載されたこの論文によれば、何十年にもわたってPFASを研究してきたストックホルム大学の研究者たちは、PFASがこの地球の全体に広がり、PFASに汚染されていない土地はもはや存在しないというエビデンスを発見したそうです。

地球には数千種類ものPFASがありますが、すべて人工物です。「euronews」など複数のメディアが解説するところによれば、食品パッケージ、撥水加工の衣服、家具、カーペット、消火剤、焦げ付き防止機能付きのフライパンや鍋、電気製品、そしていくつかはシャンプーや化粧品にも含まれているとのこと。

これらの製造や使用により、PFASが空気中に排出。PFASは最終的には海水にたどり着き、波しぶきとなってエアロゾル化され、空気中に放出されたのち、雨となって地上に戻ってくるというわけです。PFASはしばしば「永久に残る化学物質(forever chemicals)」と呼ばれます。それは分解されることもなく、人や動物、そして環境内に蓄積されるからです。

PFASは南極大陸と南極海の氷からも発見されています。この地球上に広く拡散したPFASは何種類かのがん、生殖力の低下、ワクチンに対する反応の低下、高コレステロール、そして子どもの発達遅滞などに影響する人体に有害な存在となりました。

マイクロプラスティックのように、PFASへの曝露が及ぼす長期的な人体への影響はあまりにもたくさんの種類があり、あまりにも地球上に拡散しすぎているためいまだ計り知れません。新しい研究によると地球にいるすべての人々にリスクが及んでいるそうです。

PFASのうちで最も毒性が高い物質は、ペルフルオロアルキルカルボン酸(PFOA)とペルフルオロアルキルスルホン酸 (PFOS)とされています。2022年6月に米国環境保護庁(U.S.Environmental Protection Agency)は人体に対する影響についての新しい証拠をもとに、飲料水にどれくらいのPFOAとPFOSが含まれて良いかのガイドラインをより厳しく設定しました。

これまで水道水1リットルの含有量はPFOA・PFOS合算で70ナノグラム(1ナノグラムは1グラムの10億分の1で、1ポンドの約1兆分の1)以下が安全性の目安とされてきましたが、PFOSは0.02ナノグラム、PFOAは0.004ナノグラムに変更しています。

汚染物質は人間の健康にとっての「惑星的境界」を超えてしまった

ストックホルム大学の研究者たちは、地球上の雨水と土壌の中のPFOAとPFOS、そして他2種類のPFASの蓄積レベルを各種ガイドラインと照らし合わせた結果、「非常に高い基準値をしばしば越える」と発表の中で憂慮しました。

ストックホルム大学環境科学部門の教授で論文の主要著者であるイアン・カズンズ氏は、プレスリリースの中で「飲料水中のPFOAに関する最新のアメリカのガイドラインによれば、世界中どこへ行っても雨水は飲用に適さないことがわかった」と記載。そして「工業や産業の世界では直接雨水を飲むことはないが、世界中で多くの人々が雨水を安全な水だと見ており、多くの飲料水の水源は雨水で賄われている」とカズンズ氏は付け加えています。

この論文ではまた、地球上の土壌がPFASに“満遍なく汚染されている”ということを明らかにしました。PFASは非常に長い間、海や空気中、そして土壌に残存するので、研究者たちは蓄積レベルがこれからも危険なほど高くなっていくと予想しています。

「PFASの使用と排出を速やかに制限することが非常に重要」と、論文には記載されています。研究者たちは最終的に、「PFASは人間の健康にとっての“惑星の境界”を超えてしまった」と結論づけています。