<社説>能登半島地震1週間 被災者守る態勢を早急に…毎日新聞

道路寸断で救出難航 能登半島地震 社会

能登半島地震1週間 被災者守る態勢を早急に(毎日新聞 2024/1/8 東京朝刊)

石川県で最大震度7を記録した能登半島地震の発生から1週間となった。現地で懸命の救援活動が続く中、多くの課題が浮き彫りになってきた。

今回の地震を直接の原因とする死者数は100人を超え、東日本大震災後では最多となった。半島先端の奥能登を中心に避難者は約3万人に達している。

通信・交通手段の途絶で孤立し、支援物資を届けられない集落も多く残る。

半島中央を通る道路は使用可能になったが、他の基幹道路は多数の土砂崩落で通行できないままだ。復旧が急務だ。

高齢化が進んだ地域で、持病を抱える人も多い。だが、水や医薬品が不足し、病院は十分な医療を提供できていない。

国や県は、他地域への患者の移送を進めている。多数の災害派遣医療チーム(DMAT)も現地入りし、活動を開始している。さらなる医療支援が必要だ。

避難所に身を寄せる被災者の健康状態も懸念される。暖房の燃料が不足する中、寒波の影響で積雪も予想されている。インフルエンザなどの感染者が増えているとの報告もある。

衛生環境の悪化も伝えられている。避難所では仮設トイレが不足しており、奥能登を中心に、し尿処理施設は軒並み稼働を停止した。対応を急がねばならない。

過去の災害では、車中泊でエコノミークラス症候群になったり、生活環境の変化で心身の健康を崩したりして死亡するケースが相次いだ。災害による直接の死者数を上回ったこともある。

心身両面について相談に乗る医療専門家による長期的な支援も不可欠になる。

現地の自治体は職員のほとんどが被災者でもあり、被害実態の把握もままならない状態だ。国や県が主導して行政機能の回復を図るべきだ。

阪神大震災などの教訓を生かして、自治体間で協力する動きも始まっている。大阪府など12自治体で作る関西広域連合は、被災自治体に職員を派遣して支援することを決めた。こうした取り組みを加速すべきだ。

被災者の命を守るための手段を総動員しなければならない。