6Gや7Gで世界はどうなる? 5Gとの違い・新技術・実現する社会について徹底解説(TEXT:PreBell編集部 2022.10.18)
日本では、2020年から5G(第5世代移動通信)の一般利用が開始されました。5Gは4Gと比べて、高速で大容量のデータ処理が可能です。
しかし、世の中は早くも6Gの世界へ向けて動き出しています。6Gや、その先の7Gの世界では、私たちの生活はどのように変わるのでしょうか。この記事では、6Gや7Gの世界や技術・社会のキーワードについて徹底的に解説します。
POINT
6Gでは空や海、宇宙などあらゆる場所が通信エリアになる
7Gでは惑星間通信で宇宙との距離が近づく
6Gは2030年に実現見込みで、HAPSや衛星ブロードバンド技術が注目されている
1G〜5Gまでで世界はどう変わったか
1G〜5Gまでで、世界はどう変わったのでしょうか。ここでは、1G〜5Gまでの技術の進化について紹介します。
1~2Gまでの世界|1979年〜
1G(第一世代移動通信システム)は、日本電信電話公社(NTTグループの前身)が民間用自動車電話サービスを開始した1979年に始まりました。当初の電話装置は約7kgで、自動車に設置して利用されていました。そこから、カバンのように肩掛けできるショルダーホンへと進化していきます。
2Gはデジタル方式で、携帯電話でのメール・インターネット利用が可能になりました。通信がデジタル化され、装置も小型化します。携帯電話の本格利用が開始されました。メールを携帯電話で確認できるPHS(パーソナル・ハンディホン)などの携帯電話サービスも登場。料金や通話品質が改善されました。
3~4Gまでの世界|2001年〜
3Gでは海外利用が可能になります。通信が高速大容量化し、サービスが増加しました。また、カメラ付き携帯電話や、本格的なマルチメディアも生まれます。
4Gではスマートフォンが普及し、さらなる通信の高速大容量化が進みます。高速化技術「LTE」(Long Term Evolution)が生まれ、2007年にはAppleが「iPhone」を発表しました。大容量の動画もスムーズに視聴できるようになりました。
5Gの世界|現在
5Gには、以下の特徴があります。
① 高速大容量(eMBB:enhanced Mobile Broadband)
② 高信頼・低遅延通信(URLLC:Ultra-Reliable and Low Latency Communications)
③ 多数同時接続(mMTC:massive Machine Type Communication)
通信の遅延が改善し、自動運転や遠隔医療にも活用されています。
テレポートが実現? 6G・7Gの世界とは
ここでは以下について解説します。
・5Gと6Gの違い
・6Gの世界
・7Gの世界
5Gと6Gの違い
6Gでは「高速・大容量」、「低遅延」、「多数接続」などの5Gの性能を、さらに改善しています。「空・海・宇宙への通信エリア拡大」、「超低消費電力・低コストの通信実現」、「産業向け用途における超高信頼通信」など、新しい技術も期待されています。へき地や海上、宇宙空間でも、快適に通信できる可能性があります。
6Gの世界
6Gの世界では、SF映画のような世界を体験できる可能性があります。例えば、電話の相手が3Dでリアルに投影されたり、医療ロボットを使ったリモート手術が受けられたりすることなどです。現実と仮想空間が高度に融合した世界や、サービスの無人化も考えられます。
ロボットや3Dホログラムをアバターとして利用して、通勤や通学をする未来が訪れるかもしれません。
7Gの世界
7Gの世界では、物理的な距離の問題が大幅に解決されると考えられます。例えば、ホログラムが超高画質になって本物と見分けがつかなくなり、目の前にいるかのように遠くの人とも会話ができるかもしれません。
ハプティクスといわれる皮膚の感覚をフィードバックする技術が進化すれば、ロボットを遠隔操作して現地の微風すら体験できるでしょう。他にも惑星間通信を使って、火星のロボットを地球からコントロールして作業したり、一般人でも火星旅行を楽しめたりする可能性もあります。7Gの世界は、世界や宇宙との距離をぐっと近づけてくれるでしょう。
6Gはいつから? 実現する新技術とは
6Gの開始する年や実現する技術については、以下の通りです。
・6Gは2030年に実現見込み
・6Gを実現する技術|HAPS
・6Gを実現する技術|衛星ブロードバンド
詳しく見ていきましょう。
6Gは2030年に実現見込み
6Gは、2030年頃のサービス提供開始を目指しています。2020年1月22日公開のNTTドコモの第6世代移動通信システム「6G」に関するホワイトペーパーによる情報です。
6Gの開始で、2030年代は以下のような内容が実現するといわれています。
・就労場所・時間の制約がなくなる
・モノ同士で機器の制御が行われ、高速・低遅延の通信が可能になる
・空や海、宇宙などあらゆる場所が通信エリアになる
・人の考え・行動がサイバー空間にリアルタイムで反映される
6Gを実現する技術|HAPS
6G関連の技術として、HAPSが注目されています。HAPSとは、成層圏(宇宙との境界面)の無人飛行機などを通して地上に通信サービスを提供する仕組みのことです。HAPS基地局は非常に広範囲のエリアをカバーでき、そのエリアは直径200キロメートルといわれています。
これまで対象になっていなかった海や空なども6Gでは通信エリアになるため、HAPSの技術が注目されています。また、災害により地上ネットワークが使用できなくなった場合も、HAPSで被災地上空から通信を行えます。
6Gを実現する技術|衛星ブロードバンド
6G関連の技術として衛星ブロードバンドも重要視されています。衛星ブロードバンドとは、人工衛星を利用してインターネット接続できるサービスです。衛星ブロードバンドを利用することで地球上から圏外を無くすことができれば、通信エリアが大幅に拡大できます。
衛星通信自体は昔からある技術ですが、衛星を大量に打ち上げることで、より高速な通信を目指す企業が目立ってきました。SpaceX社では、すでに1800機の衛星を打ち上げています。
【2030年】6Gで実現する社会の3つのキーワード
2030年に6Gで実現する社会として、政府が掲げる3つのキーワードについて紹介します。
・誰もが活躍できる社会|自在なサイバー空間
・持続的に成長する社会|最適化で食品廃棄ゼロ
・安心して活動できる社会|自律型セキュリティ
誰もが活躍できる社会|自在なサイバー空間
1つ目のキーワードは「誰もが活躍できる社会」です。地理的な障壁はもちろん、年齢などの違いも取り除かれます。例えば、へき地に住んでいる人でも、アバターやロボットを使用するとリアルな感覚で地球上のどこにでもアクセスできます。
また、体力がない老人でもウェアラブル端末を使えば、サイバー空間で身体機能を拡張して活動できます。
持続的に成長する社会|最適化で食品廃棄ゼロ
2つ目のキーワードは「持続的に成長する社会」です。現実世界さながらのサイバー空間でシミュレーションすることで、資源を使わず効率的な方法を探せます。また、AIによる高精度の需要予測とリアルタイムのマッチングシステムで、食品などの廃棄ゼロを目指すことも可能です。
安心して活動できる社会|自律型セキュリティ
3つ目のキーワードは「安心して活動できる社会」です。インフラとして通信網の安全・安定性が自律的に確保されると、安心して活動できます。例えば、セキュリティやプライバシーがAIによって自動的に確保されたり、電力消費量や供給方法が自動化されて災害でも通信が途絶えないようにしたりする技術の進化も期待されています。
まとめ
今回は6Gや7G、5Gとの違い、新技術、2030年の社会について紹介しました。ホログラムやサイバー空間が当たり前になる社会というのは想像しづらいかもしれません。
しかし、時代は私たちが考えているよりも急速に変化してきました。例えば、2010年時点のスマートフォン普及率はたった4%でしたが、10年で90%を超えるほど急速に普及しました。メタバース空間での待ち合わせも、2030年の当たり前の一つかもしれません。