原爆を作る人々よ!…中國新聞<天風録>
原爆を作る人々よ!(中国新聞 天風録 2024年8月10日(土) 07:00)
〈この男が、世界を変えてしまった〉。
そんな宣伝文句の米ハリウッド映画が、この春から日本で上映中だ。原爆開発の指揮に当たった物理学者の半生をたどる「オッペンハイマー」である。
アカデミー賞を席巻した勢いに乗り、核の脅威に対する関心を呼び覚ましている。
百八十度異なる立場から呼応し合う詩を、きのうの「長崎平和宣言」が取り上げていた。〈原爆を作る人々よ!〉と切り出す長崎の被爆詩人、福田須磨子さんの作品。
〈幾万の尊い生命が奪われ、家 財産が一瞬にして無に帰し、平和な家庭が破壊しつくされたのだ〉。そして残った者には〈明日をも知れぬ“原子病”の不安と、そして肉親を失った無限の悲しみが、いついつまでも尾をひいて行く〉。
うら若き23歳で被爆した福田さんも顔から腕へと肌を紅斑にむしばまれた。他界する前年、地元放送局のカメラに向かい、言い残している。「原爆というものの恐ろしさを次の代、次の代へと語り継いでもらいたい」。
原爆を落とし、世界を変えた米国の駐日大使は、長崎の平和祈念式典に姿を見せなかった。肩入れする国が招かれないのが不服らしい。追悼と誓いの本旨がいまだに分からないとは。
原爆を作る人々よ!…長崎の詩人・福田須磨子さんがつづった詩
「鈴木市長の平和宣言」(2024年8月9日)より抜粋
◆ ◆ ◆
原爆を作る人々よ!
しばし手を休め 眼をとじ給(たま)え
昭和二十年八月九日!
あなた方が作った 原爆で
幾万の尊い生命が奪われ
家 財産が一瞬にして無に帰し
平和な家庭が破壊しつくされたのだ
残された者は
無から起(た)ち上がらねばならぬ
血みどろな生活への苦しい道と
明日をも知れぬ“原子病″の不安と
そして肉親を失った無限の悲しみが
いついつまでも尾をひいて行く
これは23歳で被爆し、原爆症と闘いながらも原爆の悲惨さを訴えた長崎の詩人・福田須磨子さんがつづった詩です。福田さんは詩の最後で、こう呼びかけました。
原爆を作る人々よ!
今こそ ためらうことなく
手の中にある一切を放棄するのだ
そこに初めて 真の平和が生まれ
人間は人間としてよみがえることが出来るのだ