<Q&A>「行政文書」ってどんなもの? 正確じゃないの? 今、問題なのは? 放送法の解釈巡り(津京新聞 2023年3月15日 06時00分)
総務省は、放送法が定める「政治的公平」の解釈を巡る安倍政権下の官邸と総務省のやりとりが記載された文書を「行政文書」と認めた一方で、内容の正確性を調査しています。行政文書とはどんなものでしょうか。
Q 行政文書とは。
A 公文書管理法で「公文書等」の一つに位置づけられています。(1)行政機関の職員が職務上作成、または取得し(2)職員が組織的に用いるため(3)その行政機関が保有しているーという三つの要件を満たすものが行政文書です。電子メールや図面なども含まれます。ちなみに「公文書等」の中でも、独立行政法人などの同様の文書は「法人文書」と呼ばれています。
Q 職員が走り書きしたメモも行政文書なのか。
A 3要件を満たしているかどうかです。メモが個人の「手控え」だけなら該当しません。一方、内容を同僚と共有するなど「組織的に用いる」状態になったと判断されれば行政文書として扱い保管します。
Q 行政文書であれば内容も正しいのでは。
A 行政文書は上司の決裁印も必要なく、内容が正確かどうかは別の話です。さらに今回問題となっている総務省の文書は、2017年の行政文書管理ガイドライン改正前に作成されており、松本剛明総務相は「内容が正確だとの前提で議論するのは難しい面もある」と説明しています。
Q 行政文書管理ガイドラインとは。
A 加計学園問題を巡り、内閣府が獣医学部新設を「総理のご意向だ」と要求したとの文言が文部科学省の行政文書に記載されていたものの、内閣府は否定して「言った、言わない」の食い違いが生じました。このため政府はガイドラインを改正し、複数の職員で内容をチェックすることや、外部との打ち合わせでは可能な限り発言部分を相手に確認するよう求めるなど、行政文書の正確性を高めるよう徹底しました。
ただ、総務省によると、省内の打ち合わせでは発言内容を本人に確認することまでは想定していないとしています。複数の出席者がいれば内容を確認でき、一定の正確性は担保できるからです。
Q 放送法に関する行政文書は何が問題なのか。
A 文書には、首相官邸側が放送法の解釈変更を働きかけ、民放に圧力をかけようとしていた様子が描かれています。当時総務相だった高市早苗経済安全保障担当相は自らが関わる部分を「全くの捏造ねつぞうだ」と全否定。総務省は記載されている高市氏との打ち合わせが「あった可能性が高い」と指摘しており、行政文書に記された事実関係の有無が焦点になっています。