新型コロナ5類移行は昨年末から結論ありき…政府「国民の命より金目」の魂胆ミエミエ

政府「国民の命より金目」の魂胆ミエミエ 政治・経済

新型コロナ5類移行は昨年末から結論ありき、政府「国民の命より金目」の魂胆ミエミエ

新型コロナ5類移行は昨年末から結論ありき…政府「国民の命より金目」の魂胆ミエミエ(日刊ゲンダイ 公開日:2023/01/21 06:00 更新日:2023/01/21 06:00)

新型コロナによる死者数が連日500人前後判明する中、岸田首相は感染症法上の分類見直しに前のめりだ。関係省庁に20日、見直しに向けた具体的な時期や条件の詰めの調整に入るよう指示。魂胆はミエミエで、「最後は金目」である。

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政府はコロナの分類に関し、4月をメドに現在の「2類相当」から、季節性インフルエンザと同等の「5類」に変更する方向で検討している。5類への引き下げに伴い、医療費やワクチン接種費などを全額公費負担する法的根拠がなくなり、一部自己負担となる。

加藤厚労相は17日の閣議後会見で、分類見直しについて「環境ができているのかなと思う」と発言。確かに感染者を取り巻く環境は依然として厳しい。新型コロナによる死者数は14日に過去最多503人を確認。19日も451人と高止まりのまま。米国で急増しているオミクロン株の亜種「XBB.1.5」による感染拡大も懸念されている。

感染収束とはほど遠い状況なのに、政府はコロナ対策の大転換とも言える「分類引き下げ」に躍起だ。きっかけは昨年12月2日の改正感染症法の成立。「新型コロナの感染症法上の位置付けについて速やかに検討する」旨の付則が盛り込まれたことで、政府の見直し議論は一気に加速した。

財務省は来年度予算の編成に向け、5類移行を前提に予算案を取りまとめていたといいます。狙いは防衛費増額の財源確保でしょう。医療費やワクチン接種に関する公費負担が一気になくなる方針ではないものの、公費負担を段階的に減らし、歳出カットした分を防衛費の財源に回す。実際、来年度予算では防衛力強化のための財源として確保した税外収入4.6兆円のうち、コロナ予算で積みあがった積立金などの国庫返納分0.4兆円が充てられています。コロナ分類引き下げに伴う歳出カットも例外ではありません」(霞が関関係者)

専門家の意見を仰ぐアリバイづくり

松野官房長官は18日、「感染状況や科学的知見、専門家の議論なども踏まえ、移行に必要な期間を含め、総合的に判断する」と強調したが、実態は昨年末から「5類引き下げ」の結論ありき。専門家の意見を仰ぐのは、独断専行を正当化するための“アリバイづくり”に過ぎない。

「残念ながら日本のコロナ対策は、まず政治判断が先行し、専門家の意見はなかなか生かされないのが実情です。感染の『波』が来るたびに医療提供体制が逼迫するなど、いまだ問題は山積しています。

感染状況を見ながら分類見直しの準備を進めるにしても、政府が2類から5類へと引き下げるタイミングを柔軟に判断できるのかどうか。現在の『第8波』が収束しても、春先に次の波が襲来する可能性は否定できません。感染状況が悪化しても、分類見直しを堅持するのか。適切なタイミングと状況判断が問われます」(昭和大医学部客員教授・二木芳人氏=臨床感染症学)

コロナ患者の命も救えないのに、防衛費増のためならコロナ対策費を削る──。命よりもカネが大事とは、やはり「最後は金目でしょ」としか言いようがない。

<社説>コロナ「5類」へ 医療の確保を最優先に…東京新聞

<社説>コロナ「5類」へ 医療の確保を最優先に(東京新聞 2023年1月21日 07時03分)

政府は、新型コロナウイルスの感染症法上の危険度分類を、五段階のうち二番目に危険な「二類」相当から、季節性インフルエンザと同じ「五類」に下げ、今春にも対策を緩和する方針を決めた。

しかし、感染症が終息したわけではない。命を守るためには医療の確保を最優先すべきだ。対策の緩和ありきでなく、状況を注視して柔軟に対応する必要もある。

五類に変更されると、行政による入院勧告や、感染者・濃厚接触者に対する外出自粛要請などの措置が取れなくなる。

新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象からも外れ、政府や都道府県の対策本部設置や、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置などの行動規制もできない。

社会経済活動の正常化に向け、感染対策を平常時に戻す必要性は理解できるが、厚生労働省の専門家会合は新型コロナの感染力の高さなどは季節性インフルと同一視できないと懸念を示す。新たな変異株が出現する可能性もある。

政府は、コロナ対策をどう緩和していくのかという手順と併せ、どのような感染状況になれば再び行動制限などが必要となるのか、その考え方も示す必要がある。

感染症医療の安定的な確保も欠かせない。新型コロナの感染力は依然強く、一部の発熱外来や救急医療を逼迫させている。医療態勢を維持するため、医療現場への財政支援は継続したい。

五類になると一般の医療機関でも診察が可能になる。より多くの医療機関から協力を得て診療を担ってもらえるよう、政府は十分な準備期間を設けねばならない。

分類を見直せば、医療費やワクチンなど患者の費用負担が増す。受診やワクチン接種が控えられ、感染が逆に広がる懸念がある。費用は引き続き公費で負担することを検討してはどうか。

政府は、マスク着用を屋内でも原則不要とする方針だが、抵抗を感じる人もいる。なぜ不要か、丁寧に説明しなければならない。家庭や職場でも着用ルールを話し合い、混乱がないよう努めたい。

コロナ禍の三年、政府はさまざまな対策に取り組んできたが、行動制限の実効性や、政府と専門家との意思疎通のあり方、医療態勢の強化策などの問題点も指摘されてきた。対策を平常時に戻すならこれまでの対策について検証し、次に生かさねばならない。