ゲームほしいけど…3年でためた5万円、小6が寄付「命の方が大切」

感謝状を手に笑顔を見せる野口愛菜さん(右)と弟の朋輝さん=熊本県山鹿市の山鹿市役所で2023年2月21日 社会

ゲームほしいけど…3年でためた5万円、小6が寄付「命の方が大切」(毎日新聞 2023/2/23 09:00 最終更新 2/23 13:42)

地元で生活に困る人の支援に役立ててもらおうと、熊本県山鹿市の市立めのだけ小6年、野口愛菜(まな)さん(12)が市社会福祉協議会に寄付金5万円を贈った。お小遣いやお年玉の一部をコツコツと手作りの貯金箱にためること3年。野口さんは「身近な地元の人のために使われるのがうれしい。多くの人を助けたい」と願う。

障がい者就労支援施設に勤める母美紀さん(37)の影響で元々、福祉への関心が強かったという野口さん。「お母さんの仕事場に行った時、利用者に優しく話しかけるお母さんのかっこいい姿を見て、自分も人を笑顔にできる人になりたいと思った」という。

小4だった2020年春、テレビでユニセフ(国連児童基金)の活動を知り、自分と同い年くらいの子どもが食べる物に困り、痩せ細っている姿に「自分にとっては当たり前のことが当たり前じゃないと知ってショックだった」。自分ですぐできることは何か――。導き出した答えが寄付だった。

その年の夏休みの自由研究で寄付のための貯金箱を作った。その名も「夢をかなえる温度計形ちょ金箱」。大工の祖父から譲り受けた廃材の木の板に長さ25センチ、直径3センチのホースを垂直に取り付け、その中に500円玉を入れて積み重なっていく仕組みだ。

500円硬貨を積み上げて5万円をためた「夢をかなえる温度計形ちょ金箱」を手にする野口愛菜さん(右)と弟の朋輝さん

お皿片づけ10円、洗濯物たたみ50円、ごはん作り100円……。お金はほぼ毎日、こうしたお手伝いを積み重ねてためた。貯金箱の目盛りにはその額で買える「ドールハウス」や、家庭用ゲーム機「スイッチ」などがあり、途中、移り気をしそうにもなったが、「困っている人の命の方が大切だから」とぐっとこらえた。

貯金は小3の弟朋輝(ともき)さん(9)も手伝い、23年1月に目標額の5万円に達した。市社協によると、小学生からの寄付は初めてで、事務局長の稗島(ひえじま)直博さん(52)は「感動した。いただいたお金は、愛菜さんのようなボランティア精神あふれる子どもたちを育てるために使いたい」と感謝した。

手作りの貯金箱でためた5万円を山鹿市社会福祉協議会会長の早田順一市長(左)に手渡す野口愛菜さん=熊本県山鹿市の山鹿市役所で2023年2月21日

将来の夢は小児科医という野口さん。「卒業して中学生になってもボランティアをたくさんして、困っている人がどう困っているのか現状を知りたい」。かなえた夢の先にも、温度計では計り知れない情熱がみなぎっている。