1月20日、衆院本会議で菅総理の施政方針演説に対する代表質問が行われ、衆院会派「立憲民主党・無所属」を代表して枝野幸男代表が登壇。新型感染症COVID-19の感染拡大によって国民の命と暮らしが深刻な危機にあることを踏まえ、感染症対策を中心にテーマを絞り、政府の対策をただすとともに、立憲民主党の解決策を提示した。
1.はじめに
新型感染症 COVID-19 によって、4500人を超える方が命を失いました。その中には、同僚である羽田雄一郎参議院議員も含まれます。
今も、陽性と判定されながら、自宅療養を余儀なくされている方、入院できない方、重症者用病棟に転院できない方がいます。適切な治療を受けないまま亡くなった方も、少なくありません。
亡くなられた方に心から哀悼の意を表し、ご遺族にお悔やみを申し上げます。患者、感染者の皆さんにお見舞いを、そして、医療体制に不安を抱いているすべての皆さんに、国会に議席を持つ一人として心からお詫び申し上げます。
医療は、逼迫というより、もはや崩壊です。現場からは、「このままでは壊滅する」との声まで聞こえています。
医療従事者の皆さんは、昼夜を問わず必死で対応しています。感染症に対応している皆さんはもちろんのこと、それ以外の診療科や高齢者施設などでも、多くの皆さんに、長期間ご苦労いただいています。
すべてのエッセンシャルワーカーの皆さんに、厚く御礼を申し上げます。
本来、網羅的、総括的にお尋ねしたいところですが、命と暮らしが深刻な危機にあることを踏まえ、私は、立憲民主党・無所属を代表して、感染症対策を中心にテーマを絞って質問します。
2.政府の対応の遅れ
(緊急事態宣言の遅れ)
今回の感染拡大は、昨年の 11 月には明らかな兆候が表れていました。11 月下旬には、政府みずから『勝負の三週間』と言ったくらいです。
ところが総理は、私たちをはじめ多くの声を無視して GoTo キャンペーンを続け、必要な対策を先送りしてきました。その結果が、感染爆発と呼ばざるを得ない現状です。
緊急事態宣言についても、私たちは、昨年 12 月 18 日には、決断すべきと提案していました。しかし、総理が宣言に至ったのは 1 月7日。
その際にも、1 都 3 県だけで良いのかと指摘しましたが、結局、一週間も経たない13日に、7府県を慌てて追加せざるを得なくなっています。
そして今も、宣言の出されていない地域の中に、複数の指標がステージ4に達しているところが少なくありません。
なぜこんなに、後手に回っているのですか? 今後の適切な対応のためにも、判断の遅れを認め、反省することから始めるべきではないですか?
(国会の閉会)
私たちが、新型インフルエンザ特別措置法などの改正案を国会提出したのは、昨年の 12 月 2 日です。
政府与党も、ようやく重い腰を上げ、今国会に政府案が提出されることになりました。
緊急事態を宣言してから、その根拠となる特措法の改正を進めるというのは、順序が逆で「泥縄」そのものです。
野党の求めを無視して昨年 12 月5日に早々と国会を閉じ、約一月半にわたって国会を開かなかったのはなぜですか?
この間に、政府からも対案を示し、野党案とともに審議を進めれば、特措法等の改正は、とっくに実現できていました。
総理には、国会を閉じ、法改正が遅れたことへの反省がありますか?
(正常性バイアス)
危機において、「正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまうこと」。これを正常性バイアスと言います。危機においてリーダーが最も注意すべきことであり、最悪を想定して対応することが、危機管理の基本です。
私は、東日本大震災での経験と教訓を踏まえ、このことを、昨年も、国会質疑の場で指摘してきました。
残念ながら総理は、根拠なき楽観論に立ち、それによって対応が遅れてきたと言わざるを得ません。まさに正常性バイアスそのものです。
正常性バイアスに陥ってきたことを認め、最悪を想定した対応へと、根本的に転換すべきと考えますが、いかがでしょうか?
3.政治が持つべき基本姿勢
(感染拡大の責任)
昨年の緊急事態宣言は、多くの皆さんに大きな負担をおかけし、いったんは、感染を大幅に抑え込むことができました。一人ひとりの痛みと犠牲が積み重なって、宣言解除に至ったことを、私たちは肝に銘じるべきです。
文字通りの緊急事態であった昨年と異なり、今回の感染拡大は、政治によって引き起こされた「人災」と言っても過言ではありません。
冬場に感染が広がる危険性は、繰り返し指摘されてきました。
しかし、保健所など検査体制の拡充や、重症病床の確保、医療機関とそこで働く方々への支援などは、十分なものでありませんでした。
他方で政府は、経済の再開に大きく舵を切りました。
総理がこだわった GoTo キャンペーンは、税金を使って「旅行に行ってください!会食してください!」と勧めるものです。感染が収まらない中で強行すれば「火に油を注ぐ」ことになることは、初めから心配されていました。
結果として、年末年始の書き入れ時に、営業時間の短縮や自粛が呼びかけられることとなり、緊急事態宣言が出され、経済にもかえって大きな打撃を与えました。
こうした政府の動きを止めることができなかったことに、私は忸怩たる思いです。国民の皆さんに、深くお詫び申し上げます。
(「with コロナ」から「zero コロナ」へ)
同じ過ちを繰り返さないためには、その場しのぎの対応ではなく、先を見通した明確な戦略方針と、優先順位を付けた具体的なプランが必要です。多くの皆さんも、先行きが見えないことに不安を募らせています。
その際、事業や雇用を守り、経済を下支えして、できるだけ早く回復させることは、重要な課題の一つです。できれば、経済を回しながら感染拡大防止と両立させたい。私もそう思います。
しかし、感染が収まらない中で、経済を活性化させようと、人の移動や会食など接触の機会を増やせば、感染が再度拡大し、結果的に経済により大きな悪影響を与えます。残念ながら、この間の状況は、この厳しい現実を明確に突き付けました。
同じ失敗を繰り返すことは許されません。総理の認識を伺います。
国内での感染封じ込めに概ね成功し、経済も順調に回復しているニュージーランドや台湾では、「感染防止と経済の両立」を目指すのではなく、まずは徹底的な感染の封じ込めに取り組みました。市中にウイルスが蔓延する中で経済を回していく「with コロナ」ではなく、市中から感染者をなくしてしまう、いわば「zero コロナ」を目指し、成果をあげているのです。
一時的には強力なロックダウン措置をとった多くの欧米諸国でも、そして日本でも、感染拡大の繰り返しに苦しんでいるのは、十分に感染者を減らさないうちに対応を緩めたからです。
幸い日本は、両国と同様の島国で、水際対策を取りやすい環境にあります。人口や経済規模には違いがありますが、これらの成功例を参考に、「with コロナ」から、「zero コロナ」を目指す方向へと転換することを提案します。
まずは徹底した感染の封じ込めに取り組み、その間は、十分な補償と給付で支える。できるだけ早く感染を封じ込めた後に、いつでも封じ込めができる体制を維持しつつ、旅行でも会食でもイベントでも、制約なく安心して再開する。このことで、結果的に経済を最も早く立ち直らせることにつながります。
これこそが、取るべき基本戦略だと思いますが、いかがでしょうか?
合わせて、政府は、緊急事態宣言について、ステージ 3、新規感染者数 500 人にまで下がれば解除すると言っていますが、これでは、また感染が拡大に向かい、経済にもより深刻な打撃を与えかねず、見直すべきです。答弁を求めます。
(三つのプラン)
こうした基本戦略の下、立憲民主党は、具体的な施策の三本柱として、以下を可及的速やかに進めるべきと考えます。
第一に、命を守る砦である医療の崩壊、壊滅を、最優先で食い止め、充実させることに最優先で取り組みます。医療機関や従事者に対する支援を万全にし、病床の確保を急ぎます。
第二に、感染の広がりを防ぎ、封じ込めることを徹底します。無症状の方を含めた感染者の早期把握と確実な隔離を進め、間違っても第四波を招くことがないよう抑え込みます。
第三に、感染を徹底して封じ込めるまでの間、倒産や廃業を防ぐ補償と、誰一人取り残すことがない生活支援で、暮らしと経済を守ります。
4.医療を守る
(病床確保のための措置)
第一の「医療崩壊を食い止める」ためにも、本来は、新規感染者を減らすことが一番です。しかし、既に崩壊している状況では、医療を急ぎ大幅に拡大しなければなりません。
感染症法を改正し、病床確保への協力を勧告できるようにすることは、やむを得ないと考えます。
しかし、政府には、協力を求める前に、なすべきことがあります。
感染症患者の受け入れには、院内感染の防止措置など多大なコストを要します。その上、他の診療科を縮小することなどを余儀なくされます。診療報酬が増額されたとはいえ、病院経営を著しく悪化させます。今、示されている助成措置では不十分です。
医療機関といえども資金がショートすれば倒産しかねず、医療従事者も霞を食べて生きている訳ではありません。使命感と法的な強制力だけに頼ることは不可能です。
受け入れのためのコストと、受け入れに伴う減収を、全額補填するとを明確にし、事前に包括払いすることが、協力を求める前提だと考えます。総理の認識を伺います。
(医療従事者に対する支援)
医療従事者の疲労は限界に達しています。使命感で頑張ってきた皆さんも、長期化の中で、肉体的にも精神的にも限界を超え、離職が相次いでいます。
政府の進めている緊急支援事業では、医療従事者の処遇改善につながる担保がありません。また、補助の対象が限定され、「第一波」から長期にわたって最前線で頑張り、最も疲弊している皆さんへの支援が抜け落ちています。
病床を確保しても、そこで働いてくれる医療従事者がいなければ成り立ちません。
私たちは、「第一波」から継続している方を含め、「第 2 波」「第 3 波」に対応している医療従事者に、もう一度 20 万円の慰労金を支給する法案を提出しました。
感謝を口にするだけでなく、個々の皆さんに確実にお金を届け、慰労の気持ちを具体化することで、少しでも離職を防ぎ、採用が進むよう努力すべきです。この法案に賛同いただきたく、答弁を求めます。
5.感染拡大を防ぐ
(検査の拡大)
第二に必要な「感染拡大を防ぐ」ためには、検査の拡大が不可欠です。私たちは、昨年春の第一波から、繰り返しこれを訴えてきました。
しかし政府は、一貫して PCR 検査の拡大に消極的です。その結果、政府の把握できていない私費による民間での検査を除けば、人口当たりの検査件数が、先進国で最低水準になっています。
この間、政府は、感染者から保健所が濃厚接触者を把握し、感染ルートをたどってクラスターを防ぐという戦略をとってきました。
しかし、感染ルートの分からない方が増え、保健所の人員などが不足していることもあり、この戦略は既に完全に破綻しています。感染ルート不明者が一定規模を超えれば、この戦略が成り立たないことは素人でもわかります。
感染症対策の基本は、感染者をできるだけ早く見つけ出し、確実に隔離することではないですか?
無症状の感染者による感染拡大を防ぐには、大規模に検査を実施し、無症状感染者を見つけ出し、確実に隔離するしかありません。既に世田谷区や埼玉県などでは独自の対策に踏み切りました。政府として明確に戦略変更することを提案します。
総理の見解を伺います。
こうした方向への第一歩として、立憲民主党は、医療・介護・福祉・保育に従事する方や教員など、エッセンシャルワーカーで希望する方を対象に、月2回の定期検査を、公費で行うよう提案してきました。なぜ、これを進めないのか、その理由を伺います。
PCR検査については、政府の把握している能力ですらフルに稼働していないことに加え、政府の把握していない民間での私費による検査が急激に増加しています。短時間で大量の検査が可能な自動化機械も、相次いで伝えられています。
政府も、民間検査との連携を図り、陽性者の報告を求めるようですが、さらに進めて、民間などの持つ能力の情報を一括して募り、全体像を把握して、計画的に協力を求め、検査の拡大を進めるべきではないですか?答弁を求めます。
(感染者の隔離)
感染者を隔離することも、感染拡大防止に不可欠です。
このために、強制力を持たせようとする政府の考え方を、全面的に否定するものではありません。
しかし、第一に、入院したくてもできない方、ホテル療養すらできずに、やむなく自宅にとどまっている方などが、少なからず生じています。
第二に、感染者の中には、乳幼児を抱えている方、寝たきりの家族の介護をしている方など、様々な事情の方がいます。自分が入院したら、育児や介護の代わりがいないという方など、誰でも安心して入院できる支援体制が必要です。
国民に強制力をもって迫る前に、国民が協力できるよう、病床や療養用ホテルの確保、そして感染者の生活支援体制の充実など、政府としての責任を果たすべきではないですか?
また、懲役刑まで設けようというのは行き過ぎで、容認できません。
総理の答弁を求めます。
(政府による呼びかけ)
感染拡大防止のためには、国民の皆さんに様々なご協力をいただかなければなりません。そのためには、リーダーによる、説得力と真摯さの備わった呼びかけが必要です。
残念ながら、つい先日まで GoTo イートで外食を奨励していた政府が、反省やお詫びもなく、手のひらを返すように会食しないよう呼びかけても、説得力はありません。
また、総理自身に、積極的に国民の皆さんに呼びかけよう、理解を得ようという意思が感じられません。
これで国民の協力を得られると思っているのでしょうか?
6.事業と暮らしの支援
(持続化給付金・家賃支援給付金)
幅広い業種で、多くの方が、倒産や廃業の瀬戸際に追い込まれています。
感染症危機による倒産や廃業が生じないよう、最善を尽くすのが政治の責任です。
持続化給付金と家賃支援給付金について、その申請は、野党などの強い求めに押され、一定期間、延長されました。しかし、従来の給付金についての手続の延長であり、再度の緊急事態宣言など、事態の長期化に対する追加措置はありません。
政府は、「事業再構築補助金」、これは新分野への展開や業態・業種の転換などを図る中堅・中小事業者に対して、設備資金を補助する制度ですが、こうした新たな投資などを前提に補助をするという、通常時と同じような支援策を提起しています。
しかし、総理自身が「もう一度、皆さんに制約のある生活をお願いせざるを得ない」と述べられたように、事業者も消費者も厳しい制約の下にあります。
感染が収束しない限り、業態転換や新事業など新たな投資が可能な事業者は少ないのではないですか? また、これらによって経営状態を好転できる余地も、著しく小さいのではないですか?
多くの事業者が求めているのは、まずは、新型感染症が収束し、制約ある生活から抜け出すことができるまでの間、何とか今日明日の苦しい状況を乗り切りたい、ということです。
持続化給付金と家賃支援給付金を継続し、必要に応じて改善や拡大をした上で、再度支給することで、倒産や廃業を食い止めるべきと考えますが、いかがでしょうか?
(労働者の所得補償)
雇用の危機も深刻です。
雇用調整助成金の特例措置や、休業手当を受け取ることができなかった労働者に支給される休業支援金・給付金の期限は、少なくとも 6 月末まで延長すべきです。総理の見解を伺います。
休業支援金・給付金の対象は、中小企業に限定され、大企業については、雇用調整助成金を活用し、企業が休業手当を支払うことが想定されています。
しかし、飲食や観光業などで、大企業なのに手当を受け取ることができず、生活に困窮する労働者から悲鳴が上がっています。大企業への雇用調整助成金の補助率を 100%に引き上げても、すべての大企業が適切な対応をとることは担保されていません。
大企業の労働者も、休業支援金・給付金の支給対象とすべきはないですか?
また、求職活動のさらなる長期化に備え、失業手当の給付日数を延長するとともに、支給割合を引き上げるべきです。求職者について、職業訓練受講給付金と同額程度の、臨時職業訓練受講給付金を支給することも提案します。総理の見解をお尋ねします。
(子どもの貧困対策)
私たちが提案した「ひとり親世帯給付金年内支給法案」を受け、「臨時特別給付金」が再度給付されたことは、一定の前進です。
しかし、これから4月に向けて、進学、進級が控え、多くの費用が必要となります。進路の変更や断念、中退などを余儀なくされる子どもたちが相次ぐ恐れがあります。
ひとり親世帯以外の子育て世帯でも、少なくない家庭が厳しい経済状況の下にありますが、「臨時特別給付金」の対象からは外されてきました。
ひとり親家庭や、生活に困窮する子育て家庭を対象に、「臨時特別給付金」を 2 回にわたって支給することを提案します。ご見解をお答えください。
7.予算等
(第三次補正予算)
約19兆円に及ぶ第三次補正予算のうち、新型感染症の拡大防止対策は、わずか4兆円ほど。半分以上は、感染症の収束後を見据えたものです。
年度末の 3 月 31 日末までに感染症が収束することは、残念ながら期待できず、特に、GoTo キャンペーンについて、年度内の追加予算を計上しているのは、ピント外れの極みです。
補正予算案は、感染症対策に集中したものへと編成し直し、少なくとも GoTo キャンペーンの追加予算は削除して、感染症対策に振り替えるべきです。答弁を求めます。
(令和三年度予算)
限られた財政事情の中で、最優先すべき感染症対応の予算に思い切った重点配分をするには、不要不急の事業や、効率性の低い予算について、積極的にカットせざるを得ません。
しかし、令和三年度予算は、そのようなメリハリの利いたものになっておらず、何よりも感染症対策の予算が大幅に不足しています。
来年度予算も大幅な組替が必要だと考えますが、いかがでしょうか?
(東京五輪・パラリンピック)
東京五輪とパラリンピックについて、アスリートなど関係者の努力と期待を思えば、私も何とか開催したいと思います。
しかし、ここまで目前に迫りながら、世界的に感染拡大が収まらない以上、希望的観測だけで走るのは、かえって無責任です。
本当に実施や参加が可能であるかを、各国のオリンピック委員会や競技団体との協議など、万一の事態に備えたプラン B は、どのように検討し、準備しているのか、総理の見解を伺います。
8.東日本大震災・原発事故 10 年
(復興に向けた姿勢)
今年 3 月 11 日で、東日本大震災と原発事故から 10 年。
亡くなられた方々に改めて哀悼の意を表し、ご遺族にお悔やみ申し上げます。
いまだ避難生活を送っている 4 万人を超える皆さんをはじめ、被害を受けられた皆さんの、この十年のご苦労に、お見舞いを申し上げ、政治が、被災者の皆さんの期待に応えきれていないことについて、改めてお詫びいたします。
津波被災地域を中心に、ハード面での復興はある程度進んでいます。しかし、地域や家族、壊れてしまったコミュニティーは、とうてい回復されたと言えません。高齢化の中で、孤独死が相次いでいます。
原発事故の被災地復興に至っては、むしろ、これからが本番です。
私は、コミュニティーを再生させるために、そして、福島の復興をさらに本格化させるために、引き続き、全力をあげて取り組む決意です。間違っても、10 年の節目を、風化に向かう区切りにするわけにはいきません。
「有識者検討会」による提言の概要案に、『復興・再生は国の責務』との文言が盛り込まれていないと伝えられています。昨年 9 月に閣議決定された「基本方針」に、復興に関する記述がなかったことに加え、政府の中で風化が始まっているように見えてなりません。
総理に、改めて、その決意を、ご自身の言葉で示されるよう求めます。
(ALPS 処理水放出)
原発事故で発生した処理水を、海洋放出することが検討されています。
しかし地元では、風評被害の心配から、漁業関係者を中心に強い反対の声があります。
トリチウム以外の放射性核種についても、処理水の 73%で基準を満たしていないことが明らかになっています。
トリチウムについては、「分離ができないから大気か海に放出するしかない」と言われてきましたが、タスクフォースの報告書を踏まえると、キュリオンの分離装置を使って、除去できる可能性もあるのではないでしょうか。
漁業関係者など地元の皆さんのご苦労と思いに寄り添うなら、かつて凍土遮水壁に膨大な資金を投じたように、最高の技術を用いて、トリチウムを含む放射性核種の分離に挑戦すべきと考えますが、いかがでしょうか?
9.脱炭素社会と脱原発依存
(脱炭素化と原子力発電)
2050 年の脱炭素を宣言したことは、率直に評価しますが、それを、原子力発電への依存を継続し拡大することの大義名分にしてはなりません。施政方針では、その点が不明確です。
原子力発電所の新増設を進める予定があるのかどうかも合わせて、考え方を明確にご説明ください。
(送電網の強化)
再生可能エネルギーの拡充と送電線の増強という方針は歓迎します。
しかし、既存の電力会社に送電網の増強を迫っても、民間企業である以上、自社の利益につながらない投資はできません。
再生可能エネルギーによる発電に新規参入を促すには、公共投資として、国の責任で送電網を増強することが必要ではないですか? 総理の認識を伺います。
(断熱住宅の促進)
脱炭素のためには、建物の断熱性能を高め、エネルギー消費量そのものを削減することも重要です。
しかし、住宅は、断熱義務化の対象から外れています。
日本は、断熱性能に乏しく冷暖房効率の悪い建物が多かった分、大きな効果が期待されます。断熱工事などは、地場の小さな工務店の仕事を作り、地域活性化にも効果的です。
再生可能エネルギーなどとともに、住宅の断熱化を、脱炭素に向けた柱に据えるべきではないでしょうか?
10.災害対策
日本では、地震や津波、火山噴火に加え、昨年 7 月の豪雨や、昨今の豪雪など、気候変動の影響と思われる災害が、大規模化し、かつ頻発しています。自然災害は、特別の事態ではなく、常に日本のどこかで対応を迫られる状況です。
「命と暮らしを守る」ために、内閣府の防災部局を格上げして増強し、災害対策のための独立の省庁を設けるべきではないか、総理の見解を伺います。
11.外交問題
(米国の状況)
米国でバイデン政権が発足しますが、政権移行にあたって、大きな混乱が生じました。 フェイクに基づいて国民を分断してきた政治がもたらした、民主主義の危機とも呼べる事態です。
こうした状況を、総理は、どう受け止めていますか?他山の石とすべき点があるとは思いませんか?
(中国への対処)
昨年11月、来日中の王毅.中国外相は、茂木外務大臣との共同記者発表の場で、尖閣諸島の領有権を主張しました。中国公船による領海侵入などと合わせて、失礼千万です。
茂木大臣が、その場で日本の立場を明確にし、主張を打ち消さなかったのは、はなはだ残念です。
こうした中国の姿勢に対し、抗議以外に、どういった外交努力をされるつもりかお答えください。
(拉致問題)
拉致問題について、安倍前総理は「この内閣で解決する」と断言し、菅総理も「自ら先頭に立ってあらゆるチャンスを逃すことなく活路を開いていきたい」と述べられました。
しかし、先の臨時国会でも、衆参ともに担当大臣から一度きり説明聴取をしたのみで、野党が求めた特別委員会での実質的な質疑は、一度もありませんでした。
政府・与党から、拉致問題解決に向けての熱意や必死さが感じられません。
総理は、拉致問題の解決に向けて、どんな行動をとるおつもりですか?現状打開に向けた具体策をお尋ねします。
(北方領土問題)
安倍政権は、新しいアプローチと称して、ロシアとの共同経済活動を進めつつ、1956 年の日ソ共同宣言をベースに、二島先行返還を実現するという姿勢を示してきました。
ところが、領土問題にはまったく進展がなく、それどころか、プーチン大統領は、昨年 7 月、領土の割譲を禁止する憲法改正を行うなど、領土交渉に否定的な姿勢を、あからさまに示しています。
はしごを外されたのではないですか?
施政方針で述べられた「これまでの両国間の諸合意」とは、何を意味するのでしょうか?二島先行返還を軸に交渉を行っていくということでしょうか?
このような状況の下でも、北方領土における共同経済活動を進めていくのでしょうか?
12.選択的夫婦別姓
「選択的夫婦別姓」の導入について、総理自身を含め、一部の閣僚などから、前向きともとれる発言があり、前進が期待されました。
しかし、強い揺り戻しにあい、第 5 次男女共同参画基本計画の記述は、むしろ後退したと言わざるを得ません。
私自身、20 年以上にわたって、繰り返し法案を提出してきました。
選択的夫婦別姓を導入する法案を成立させ、結婚における選択肢を増やしませんか?せめて法案の審議を進め、自民党の中はバラバラのようですから、党議拘束を外して採決しませんか? 総理の決意を伺います。
13.官僚のモチベーション
安倍政権では、官僚の皆さんが官邸の意向を忖度せざるを得ない傾向が強まり、官邸の指示によって、現場の職員が、改ざんや廃棄などに加担させられるという事案まで生じました。加えて菅総理は「反対する幹部は異動してもらう」とまで言い切っています。
これでは、官僚の皆さんのモチベーションを高め、積極的な政策提言を引き出すことなど期待できないのではないですか?
私は、内閣人事局制度が濫用、悪用されてしまったと反省しています。見直しが必要だと考えますが、いかがでしょう?
14.結びに
新型感染症よる危機で、これまでの日本政治が、根本から問い直されています。
これまでなんとか自活できていた方が、次々と困窮し、民間の支援現場は、まるで「野戦病院のような状態が続いている」そうです。
ある支援団体の方は、「パンドラの箱が開いた」と表現していました。これまで政治が見ようとしてこなかった社会の貧困が、感染症によって炙り出されているということです。
こうした指摘を総理はどう受け止めますか?
政治は、30 年近く、自助と競争ばかりを強調し、目先の採算性で現場を切り捨て、命と暮らしを守るための基盤を掘り崩してきました。
自助と自己責任が強調され過ぎたあまり、困窮の極みにあっても、国民の権利であるはずの生活保護を申請しないなど、救いを求める声をあげることにためらう方が少なくありません。
この未曾有の危機にあって必要なのは、時代が決定的に変化したことを認め、政治そのものを本質的に変えていくことです。
立憲民主党は、自己責任や自助努力ではどうにもならない、そんな状況が暮らしの現場で広がっていることを、正面から受け止めます。
その上で、政治が先頭に立ち、困った時に支え合い、互いの命を守り、ともに生きる社会へ、そして、それを支える機能する政府への転換を進めます。
感染症による国家の危機を乗り越えるには、政治と国民が一つの方向を向いてともに歩む必要があります。
多くの国民は、すでに十分すぎるほど自助努力をしています。
この局面においても、自助を強調し、政府による公助を怠りながら、罰則をちらつかせることで対策を進めるような姿勢では、国民の信頼と協力が得られるはずがないと思いますが、いかがですか?
「何としても国民の命と暮らしを守る」。
立憲民主党は、そのために、苦しい状況にある一人ひとりと向き合う政治、あなたのための政治を実現します。自己責任から支え合いへ。あなたとともに力を合わせ、感染症と戦い「命と暮らしを守る」政治へ。
あらゆる手段を講じて、この難局を乗り切り、「あなたのための政治」を実現するために、全力を尽くすことをお誓いして、私の質問を終わります。
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