時事通信社が選ぶ10大ニュース(2022年)特集(JIJI.COM 2022年12月15日)
2022年 国内の10大ニュース
安倍元首相撃たれ死亡
【国内1位】安倍元首相撃たれ死亡
7月8日午前11時半ごろ、奈良市で参院選の応援演説中だった安倍晋三元首相が銃撃され死亡した。逮捕された山上徹也容疑者=殺人容疑で送検、鑑定留置中=は、母親が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者で、教団に恨みがあり、つながりがあると思って安倍氏を狙ったと供述。多額の献金や「宗教2世」など、旧統一教会を巡る問題に注目が集まるきっかけとなった。
岸田文雄首相は事件後、首相経験者では1967年の吉田茂氏以来55年ぶりとなる国葬の実施を表明。多額の費用や安倍氏に対する評価などを巡って世論の賛否が割れる中、9月27日に日本武道館で執り行われ、国内外から約4200人が参列した。経費の総額は約12億4000万円で、政府が実施の経緯なども含めて検証している。
旧統一教会との関係、政界揺るがす
【国内2位】旧統一教会との関係、政界揺るがす
安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政界の関係に注目が集まった。与野党議員の関わりが明らかになったが、特に自民党は所属国会議員の半数近くが祝電送付などの接点を持っていた。前回衆院選で、関連団体が提示した「推薦確認書」に署名していた議員もいた。山際大志郎経済再生担当相は教団との関係が次々と明らかになり、岸田文雄首相によって事実上更迭された。
首相は高まる世論の反発や野党の批判を受け、自民党と教団の関係を絶つ考えを表明。永岡桂子文部科学相は宗教法人法に基づく「質問権」を創設後初めて行使した。臨時国会では、悪質な寄付要求を禁止し、被害者本人だけでなく家族による取り消し権行使も可能にする新法が成立した。
円安、資源高で値上げラッシュ
【国内3位】円安、資源高で値上げラッシュ
ロシアのウクライナ侵攻により、原油や小麦など資源、農産物の国際取引価格が上昇した。一方、外国為替市場では日米金融政策の方向性の違いから円が売られ、10月には32年ぶりに一時1ドル=151円台を付けるなど急速な円安が進行。資源輸入国である日本ではエネルギーや原材料の輸入価格高騰に拍車が掛かった。企業は商品やサービス価格への転嫁を進め、食料などの生活必需品で値上げラッシュとなった。
政府は物価高の影響緩和のため、ガソリン価格の抑制策や輸入小麦の売り渡し価格据え置きなどの対策を順次実施。2023年1月以降は電気・都市ガス料金の負担軽減策も実行する。急激な円安進行を阻止するため、政府・日銀は9月と10月に24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入に踏み切った。
五輪汚職で組織委元理事ら逮捕
【国内4位】五輪汚職で組織委元理事ら逮捕
昨夏に開催された東京五輪・パラリンピックのスポンサー契約を巡り、電通元専務で、大会組織委員会の高橋治之元理事が8月、東京地検特捜部に受託収賄容疑で逮捕された。組織委の役職員は「みなし公務員」だが、AOKIホールディングスやADKホールディングス側など5社から頼まれて口利きし、計約2億円を受領したとされる。元理事の逮捕・起訴は4回に及び、贈賄側などを含め計15人が立件された。
捜査の過程でテスト大会を巡る入札談合疑惑が浮上した。ADK側が談合を申告し、特捜部と公正取引委員会が11月、独禁法違反容疑で、落札した電通など8社や組織委大会運営局元次長の自宅を家宅捜索した。各社の受注総額は200億円近くとみられ、電通幹部や元次長らが主導した疑いが出ている。
参院選で自民大勝、改選過半数
【国内5位】参院選で自民大勝、改選過半数
参院選が7月10日に投開票され、改選124と非改選の欠員補充の計125議席のうち、自民党が63議席を獲得した。単独で改選定数の過半数を確保して大勝。立憲民主党は改選議席23から6減らした。日本維新の会は議席を12と倍増させ、比例代表では立民を上回った。公明党は13議席、共産党は4議席、国民民主党は5議席を獲得したが、いずれも議席減だった。
自民、公明両党と憲法改正に前向きな維新、国民で改憲発議に必要な3分の2を維持した。岸田文雄首相は衆院を解散しない限り、2025年の参院選まで大型国政選挙がない「黄金の3年間」を手にしたとみられていたが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題や閣僚の「辞任ドミノ」を受け支持率が低迷し、政権運営は厳しさを増している。
コロナ猛威続く、感染2000万人超
【国内6位】コロナ猛威続く、感染2000万人超
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、2022年も国内外に影響を及ぼした。国内では「BA.5」などの「オミクロン株」派生型が次々と流行し、8月には1日当たりの新規感染者数が約26万人と過去最多を記録した。派生型に対応した「2価ワクチン」は9月から供給が始まり、政府は年内に希望者への接種完了を目指している。
一方、海外では水際対策や行動制限の緩和など「ウィズコロナ」に向けた動きが加速した。国内でも10月、入国者数の上限を撤廃し、外国人の個人旅行を解禁。全ての患者の情報を集める「全数把握」の見直しや国産の飲み薬の緊急承認なども行われた。感染症法上、厳格な対応を取る「2類相当」とされている分類の見直しに向けた議論も始まった。
知床で26人乗り観光船沈没
【国内7位】知床で26人乗り観光船沈没
4月23日、北海道・知床半島沖で乗客乗員26人が乗った観光船「KAZU I(カズワン)」が沈没した。これまでに20人の死亡が確認され、6人が行方不明となっている。運航会社「知床遊覧船」は欠航基準を上回る波高が予想される中、出航を強行。桂田精一社長が虚偽申告で運航管理者に就いていたほか、運航ルートの大半で通信圏外の携帯電話を連絡手段に用いるなど、ずさんな安全管理体制が次々と発覚した。
海上保安庁は5月、業務上過失致死などの容疑で知床遊覧船を家宅捜索。カズワンを海底から引き揚げ、沈没原因と桂田社長らの過失責任を調べている。国土交通省は同社の不備を見逃していた反省から、監査の強化や罰則に拘禁刑を導入するなど安全対策の強化を進めている。
原発活用へかじ、建て替え推進
【国内8位】原発活用へかじ、建て替え推進
岸田政権は原発を最大限活用する方針にかじを切った。電力は火力発電所の相次ぐ休廃止などにより供給力が低下しており、夏と冬には需給逼迫への懸念から政府が広く節電を要請した。ロシアのウクライナ侵攻で火力発電の燃料である液化天然ガス(LNG)の調達不安も強い。電力の安定供給と脱炭素化に向け、東京電力福島第1原発事故を受け凍結してきた建て替えなどを進める。
具体的には、廃炉を決めた原発敷地内で次世代型原発への建て替えを検討。「原則40年、最長60年」としてきた原発の運転期間についても、「60年超」の運転が事実上可能となるよう制度を見直す。ただ、次世代型原発の建設には巨額のコストが掛かるほか、運転延長には安全性を懸念する声が高まっている。
反撃能力保有へ、安保政策転換
【国内9位】反撃能力保有へ、安保政策転換
自民、公明両党は、敵のミサイル基地などを攻撃する「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有で合意した。軍事活動を活発化させる中国や弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮など、厳しさを増す東アジアの安全保障環境を踏まえた対応。専守防衛を基本とし、打撃力を保有してこなかった戦後の安保政策は大きく転換する。
政府は今後、国産の「12式地対艦誘導弾」の長射程化や、米国製巡航ミサイル「トマホーク」の購入を進める。自衛隊は「盾」に徹し、打撃力を持つ米軍の「矛」に依存してきた日米の役割分担も変容を迫られる。反撃能力行使に当たっては、現行の安保関連法制で定める「武力行使の新3要件」に基づき実施する。国会承認が必要で、対象は「軍事目標」に限定し、詳細は明示しない。
ヤクルト村上、最年少三冠王
【国内10位】ヤクルト村上、最年少三冠王
プロ野球では若手選手による歴史的な快挙が続いた。ヤクルト5年目の村上宗隆内野手は王貞治を超える日本選手最多の56本塁打を打ち、打率3割1分8厘、134打点で三冠王に輝いた。2004年の松中信彦以来18年ぶり、史上最年少の22歳で8人目の達成。7月31日の阪神戦から8月2日の中日戦の2試合にわたり、プロ野球新記録となる5打席連続本塁打も。パワーだけでなく柔軟さを併せ持つ打撃が光り、勝負を避けられて四球となる場面も多かった。
ロッテの佐々木朗希投手は4月10日のオリックス戦で28年ぶりの完全試合を、史上最年少の20歳で達成した。160キロを超える速球と鋭いフォークを武器に、13者連続奪三振の新記録、1試合19奪三振のタイ記録。次戦も日本ハムを相手に8回無安打の快投だった。
2022年 海外の10大ニュース
ロシアがウクライナ侵攻
【海外1位】ロシアがウクライナ侵攻
ロシアが2月24日、隣国ウクライナに軍事侵攻した。ロシアのプーチン大統領は米国主導の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を非難し、侵攻はウクライナ東部の親ロシア派保護などを目的とした「特別軍事作戦」と正当化。ロシア軍の残虐行為や、プーチン氏が繰り返す核威嚇に国際社会は戦慄した。
圧倒的軍事力を持つとみられていたロシアは短期間での首都キーウ(キエフ)制圧に失敗。欧米の支援を受けるウクライナが反転攻勢を強め、占領地を相次ぎ奪還した。プーチン政権は9月、部分動員令を発出し、ウクライナ東・南部4州の「併合」を強行したが、劣勢が続く。両国軍の死傷者は計20万人以上との推計がある中、停戦交渉は頓挫しており、先行きは見通せない。
中国で習政権3期目発足
【海外2位】中国で習政権3期目発足
10月に中国共産党大会が開かれ、習近平政権が3期目入りした。1980年代末以降に最高指導者となった江沢民、胡錦濤両氏は2期10年の原則に従ったが、習氏は自らに権力を集中させ、4期目以降も視野に入れているもようだ。一方で、厳格な行動制限を伴う「ゼロコロナ」政策に対して、11月に北京を含む各地で抗議活動が行われ、習氏の強権的な手法への反発も表面化した。
2012年に党総書記に就いた習氏は反腐敗闘争で政敵を次々と失脚させ、2期目は18年の憲法改正により国家主席の任期制限を撤廃。3期目の最高指導部は、経済政策などで習氏と路線が異なる李克強首相が外れ、習氏に近い人材で固められた。27年までの3期目で、台湾統一に向けた動きが具体化するかどうか注目される。
北朝鮮、相次ぎミサイル発射
【海外3位】北朝鮮、相次ぎミサイル発射
北朝鮮が11月末までに80発以上と、過去にない頻度でミサイルを発射した。挑発は9月下旬に米原子力空母「ロナルド・レーガン」が韓国・釜山に入港して以降加速。9月末からの約1カ月半の発射数は50発以上に達した。10月4日には5年ぶりに日本を越える弾道ミサイルを発射。北海道、青森県に全国瞬時警報システム(Jアラート)が発令された。
北朝鮮は「戦争初期に主導権を握るため」(金与正朝鮮労働党副部長)戦術核の開発を進め、発射も夜間や早朝に行い実戦を意識。貯水池や列車を利用するなど形態も多様化させ、新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」の発射成功も発表した。日米韓は、北朝鮮がミサイル発射に続き7回目の核実験に踏み切る可能性もあるとみて、警戒を強めている。
インフレ加速、米欧大幅利上げ
【海外4位】インフレ加速、米欧大幅利上げ
コロナ禍に伴うサプライチェーン(供給網)の混乱などでモノの値段が世界的に上昇した上、ロシアのウクライナ侵攻で石油・天然ガスや穀物の価格が一段と高騰した。米国のインフレ率は6月に9.1%と、約40年半ぶりの高い伸びを記録。欧州も10月にユーロ圏で10%を突破した。
急激な物価高による経済への悪影響を食い止めようと、米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は6月の金融政策会合で、通常の3倍となる0.75%の大幅利上げを約27年半ぶりに決定。利上げ幅は7、9、11月を含め、4会合連続で0.75%となった。英中銀や、マイナス金利を長年維持した欧州中央銀行(ECB)も大幅利上げで追随。「インフレ退治」を優先するあまり、景気減速懸念が強まっている。
エリザベス英女王死去
【海外5位】エリザベス英女王死去
エリザベス英女王が9月8日、滞在していたスコットランドのバルモラル城で96歳で死去した。1952年に父ジョージ6世の死去を受け25歳の若さで即位して以降、歴代最長の70年にわたり在位。「国民に開かれた王室」を目指し、積極的に改革に努めた。国民に寄り添い、親近感のある英王室をアピールし、世界120カ国以上を訪問するなど、国内外で敬愛を集めた。
ロンドンにひつぎが安置されての一般弔問には、約25万人が訪れ、昼夜途切れることなく長蛇の列ができた。9月19日にウェストミンスター寺院で執り行われた国葬は、各国の要人約2000人が参列し、葬列を見ようと多くの人が沿道に駆け付けた。テレビやインターネットの中継は40億人が視聴したといわれている。
米議長訪問で台湾情勢緊迫
【海外6位】米議長訪問で台湾情勢緊迫
ペロシ米下院議長が8月、米下院議長としては25年ぶりに台湾を訪問した。これに猛反発した中国は台湾への軍事的威嚇を強化し、台湾を包囲する形で大規模軍事演習を実施したほか、台湾産農水産物の輸入停止などの経済制裁も発表した。台湾海峡を巡る緊張が高まり、米中関係にも影を落とした。
11月の米中首脳会談では、習近平国家主席が台湾問題について「越えてはならないレッドライン(譲れない一線)」と強調。議論は平行線をたどった。米国防省が同月末に公表した中国の軍事・安全保障分野の動向に関する年次報告書は、中国が「台湾海峡周辺で挑発的かつ不安定化させる行動を増加させた」と指摘。今後も軍事的選択を取る可能性があるとして、台湾侵攻への危機感を強めている。
韓国で雑踏事故、158人死亡
【海外7位】韓国で雑踏事故、158人死亡
ハロウィーンを前にした10月29日夜、韓国ソウルの繁華街・梨泰院の路地で群衆が折り重なるように倒れる雑踏事故が発生し、邦人2人を含む158人が死亡した。死者の多くが若者だったことや事故の様子を映した動画がインターネット上に投稿されるなどしたことで、国内外に大きな衝撃と悲しみが広がった。
事故発生直後から尹錫悦大統領が事故対応の陣頭指揮に当たり、11月には国会が真相究明を図る「国政調査」を実施することを議決。警察の捜査は、警察や消防、地方自治体など広範囲を対象に進められている。12月には、安全面を懸念する事前の報告書を事故後に隠蔽した疑いが持たれている警察幹部ら2人が逮捕された。現場周辺は事故後も長い間、犠牲者を追悼するメモや花であふれた。
米中間選挙、共和が下院奪還
【海外8位】米中間選挙、共和が下院奪還
バイデン米政権に対する「審判」となる中間選挙が11月8日、行われた。与党・民主党は連邦議会の上院の多数派を維持したが、野党・共和党が4年ぶりに下院の過半数を奪還。上下両院のいずれかの多数派と政権政党が異なる「ねじれ」の構図となり、バイデン大統領は厳しい政権運営を迫られそうだ。
中間選挙は当初、共和党優位と予想されていた。しかし、上院の激戦州でトランプ前大統領が支持した候補が相次いで敗北。トランプ氏の「負の影響」も議論されるようになった。同氏の求心力に陰りが見える中、共和党内では将来の大統領候補と目されるフロリダ州のデサンティス知事ら次世代が台頭する。トランプ氏は11月15日、ライバルの機先を制するため2024年大統領選に異例の早さで出馬を表明した。
大谷、投打で規定数到達
【海外9位】大谷、投打で規定数到達
米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手が今年も投打の二刀流で歴史的な活躍を見せた。投手としてメジャー5年目で最多の15勝(9敗)を挙げ、打者としても34本塁打。1918年のベーブ・ルース以来、104年ぶりに同一年の2桁勝利、2桁本塁打を達成した。試合に出続けた証しでもある規定打席(今季502)と規定投球回(同162)を同じ年に満たしたのは、ワールドシリーズが始まった1903年以降で初の快挙だった。
先発投手が降板後も指名打者として試合に残れる通称「大谷ルール」も活用して躍動したシーズン。ア・リーグ最優秀選手(MVP)はリーグ新記録の62本塁打でヤンキースの地区優勝に貢献したアーロン・ジャッジに譲り、2年連続の受賞は逃したが、唯一無二の存在として輝きを放った。
サッカーW杯、日本が大健闘
【海外10位】サッカーW杯、日本が大健闘
11月20日から中東で初開催されたサッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会で、7大会連続出場の日本が世界を驚かせた。突破は難しいとみられた1次リーグで強豪のドイツとスペインを相手にともに逆転勝利。2勝1敗で決勝トーナメントに進み、1回戦で前回準優勝のクロアチアにPK戦で惜敗した。初のベスト8はまたもならなかったが、優勝候補の各国と互角以上の戦いを演じ、「ドーハの悲劇」として記憶される地で鮮烈な記憶を残した。欧州のリーグで活躍する若い選手の実力が証明され、年末の列島は盛り上がった。
2月の北京冬季五輪でも日本勢は活躍した。小林陵侑、平野歩夢、高木美帆が金、カーリング女子代表は銀を獲得するなど、冬季大会で最多のメダル18個。雪と氷の祭典も人々に希望を与えた。