国民に知られたくない統一教会と公安警察の本当の関係 昔は頼もしい存在だった? 元公安警察官は見た

統一教会と公安警察の本当の関係 昔は頼もしい存在だった? 元公安警察官は見た 社会

国民に知られたくない統一教会と公安警察の本当の関係 昔は頼もしい存在だった? 元公安警察官は見た(デイリー新潮 2022年10月15日)

日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。昨年9月に『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、統一教会の関係団体である勝共連合と公安警察の深い関係について聞いた。

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国際勝共連合は、旧統一教会を母体として、教祖・文鮮明が1968年1月に韓国で創設した政治団体である。同年4月には、日本でも創立された。当時、日本船舶振興会(現・日本財団)の笹川良一会長が名誉会長を務め、政財界の黒幕と呼ばれた右翼の児玉誉士夫が支援した。

「勝共連合の目的は、『地球上から共産主義を完全に一掃する』ことでした」

と解説するのは、勝丸氏。

「勝共連合は北朝鮮や中国、旧ソ連の情報収集能力に秀でていたので、韓国の大韓民国中央情報部(KCIA)は共産主義国家の情報を勝共連合から引き出していました」

新左翼と戦う

勝共連合が設立されてから2年後の1970年、日米安全保障条約の自動延長を巡り、第二次安保闘争が起きた。

「学生や労組の左翼運動が最盛期で、日米安保に反対する大勢の学生や労働者が過激なデモを行い、右翼は押されっぱなしでした」

そんな中、安保闘争で機動隊と闘っていた新左翼(世界革命を目指した反体制運動家)に真っ向から立ち向かったのが勝共連合だった。

「機動隊の近くで、新左翼とまともにぶつかり、殴られても逃げなかった。そのため右翼の人間は、統一教会のカルト的な教義を棚に上げ、彼らを頼もしい組織と見なしていました」

勝共連合は、機関紙として月2回刊行の「思想新聞」、月刊誌の「世界思想」を発行している。また統一教会の関連会社の世界日報社は日刊新聞「世界日報」を発行している。

「思想新聞や世界日報は、反共的立場から緻密に取材し、共産党の腐敗や矛盾を鋭く追及していました。共産党の内部事情にも精通していて、時には、共産党内部に協力者がいるのではないかと思われるような記事もありました」

そのため、警視庁公安部や公安調査庁は、思想新聞や世界日報の記者などから情報を収集していたという。

「公安部は統一教会をカルトと認定しているので、監視対象にしています。ですがその一方で、彼らを協力者にしていたのです。公安の捜査員は1970年代から、勝共連合の機関紙や世界日報の記者や編集長と会食していました。『あの記事、なかなか良かったね。記事にしなかったことで面白い話ある?』などと言いながら、話を聞いていました。記者や編集長はさすがに情報源までは明かさなかったものの、情報提供にはかなり協力的だったといいます」

「スパイ防止法」

世界日報は設立当初、全国紙を目指していたこともあり、いくつかスクープをものにしている。

例えば、1984年8月4日、朝日新聞は南京大虐殺が事実だったと生首が転がる写真を添えて報道。これに対して1985年12月28日の世界日報は、「朝日、こんどは写真悪用 南京大虐殺をねつ造」と報じたのだ。朝日が掲載した写真は1931年、朝鮮で市販されたもので、中華民国遼寧省で中国軍が馬賊を処刑したものだった。

さらに勝共連合は、日本で国家機密へのスパイ行為等の防止に関する法律「スパイ防止法」制定のための署名運動を行っていたことも、公安関係者に好意的に見られていたという。

「勝共連合は1979年、『スパイ防止法制定促進国民会議』を発足し、有識者懇談会も行っています」

1987年には、スパイ防止法実現のために、北朝鮮のスパイ活動を描いた映画『暗号名 黒猫を追え!』を制作、全国各地で上映した。

「安倍晋三元首相の銃撃事件が起こるまで、公安部や公安調査庁は時々勝共連合の関係者と接触して情報収集を続けていました。合同結婚式や霊感商法を行うなど黙認できないことがあるので、彼らと接触する公安関係者には後ろめたい気持ちもあったと思います。もっとも安倍さんの事件以降は、彼らとの接触は控えているそうです」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部