2類?5類?分類引き下げ論 保健・医療は負担緩和の一方、受診控えで感染増リスクも

新型コロナ_2塁?5塁?_費用負担は? 社会

<新型コロナ>2類?5類?分類引き下げ論 保健・医療は負担緩和の一方 受診控えで感染増リスクも(東京新聞 2022年1月31日 06時00分)

現在「2類相当」の新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを、入院勧告などが必要ない「5類」(季節性インフルエンザなど)に引き下げる見直し論が浮上している。

引き下げた場合、保健所や医療機関の負担は減るが、PCR検査や治療費の一部が自己負担になる可能性が高く、受診控えで感染者が増えるリスクがある。多額の治療費を心配する生活困窮者の支援団体からは不安の声も上がる。

「2類相当のままでは保健所の機能はパンクする。社会インフラや経済活動を止めないためにも5類相当に引き下げるべきでは」

20日、衆院代表質問で日本維新の会の馬場伸幸氏が政府をただした。

岸田文雄首相は「感染急拡大の中、現実的ではない」としつつ「今後、専門家の意見を聞きながら議論したい」と答弁した。

インフル並みなら制限少なく

位置付けの見直しは、これまでも課題となってきた。感染症法は、感染症の感染力や症状の重さによって「1~5類」「新型インフルエンザ等」に分類。新型コロナは、結核や重症急性呼吸器症候群(SARS)などの「2類」に相当する位置付けになっており、保健所や医療機関が入院勧告や就業制限措置、速やかな発生届け出など多くの対応にあたる。感染者増によって業務が逼迫ひっぱくする事態が繰り返されてきた。

第6波では東京都内の1日あたり新規感染者数が1万人を超え、28日には1万7631人と4日連続で最多を更新。保健所などの業務負担が急増し、都は一部軽症者らの健康観察は自身が行うよう切り替える方針を決めた。

現在の主流のオミクロン株は重症化しにくいとの見方もあり、小池百合子都知事は13日、「5類への変更を含めて、科学的な知見を集めていただくようお願いしたい」と語り、28日の定例会見でも「オミクロン株の特性を踏まえた対応方針を国に示していただきたい」と重ねて発言。「5類」になれば、保健所の入院調整などはなくなり、就業制限による社会活動の影響も軽減される。

治療費負担はどうなる

ただし、入院などを強制できる「危険性が高い感染症」から外れるため、治療費などを公費で全額負担する法的根拠がなくなる。他の「5類」感染症との整合性もあり、患者負担が生じる可能性が高い。

認定NPO法人「世界の医療団」の武石晶子さんは「受診控えが起きると思う。我慢して仕事をして感染を広げる可能性もある」と指摘。「国民健康保険料の滞納などで無保険の人もいる。医療につながりにくくなり、重症化する可能性もある」と懸念し、慎重な議論を求める。

「自己負担があるのはしんどい。もし5類になったら、行政はどの程度対応してくれるのだろうか」

認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の大西連理事長は、自宅がない人や収入が不安定な非正規労働者らへの対応を心配する。「無料だから医療機関に相談しやすいが、ハードルが上がってしまう。住まいがないため接種券が届かず、ワクチンを未接種の人もいるだろう。感染発覚が遅れて職場やネットカフェなどで感染を広げてしまうリスクもある」

厚生労働省の担当者は「現時点ではオミクロン株の特性が十分に明らかではない。まず感染力や重篤性の分析を専門家に議論してもらう段階だ」としている。