小規模事業者やフリーランス虐めの「インボイス制度」が23年から始まる

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消費税 インボイス制度、23年開始 免税事業者、募る不安 取引厳しく?/税負担増?(東京新聞 2021年10月21日 10時20分)

「インボイス制度」という言葉を聞いたことがあるだろうか。2023年10月から事業者を対象に始まる、消費税の新しいルールだ。インボイスは、登録された事業者が発行する請求書などの書類のこと。本紙には事業者から「商売が厳しくなる」といった不安の声も寄せられている。その理由を探った。

商品を買ったり、サービスを受けたりしたときに負担する消費税。国に納めるのは買い手から税金を預かった事業者だ。その預かった税金から、原材料の仕入れなどで事業者自身が支払った消費税を引き、差額を納税する。二重課税を避ける「仕入れ税額控除」という仕組みで、例えば、11万円(うち消費税1万円)で材料を仕入れ、付加価値を付けた商品を22万円(同2万円)で売ると、納税額は1万円となる。

国税庁によると、仕入れ税額控除をするには、取引先からの請求書や納品書などの書類を保管しておく必要がある。19年10の消費税増税に伴い、軽減税率とともに導入が決まったインボイス制度では、8%と10%の税率や税額を請求書に正しく記載するようルールを厳格化。事前に登録した事業者から受け取った登録番号付きの請求書でなければ、控除が認められず、納税する側の負担が増える。制度の導入まで2年となった今月、事業者の登録受け付けが始まった。

登録を済ませれば商売への影響はなさそうだが、なぜ不安の声が上がるのか。「免税事業者は制度に登録できないルールになっている」。大手税理士法人「山田&パートナーズ」名古屋事務所(名古屋市)の中橋知治さん(48)は話す。年間の課税売り上げが1000万円以下の事業者は、消費税の納税が免除される。こうした免税事業者は、売り上げが1000万円を超えなくても課税事業者として登録するか、登録せずに免税事業者のままでいるかの選択を迫られる。

財務省の試算では、約488万の免税事業者のうち、161万ほどが課税事業者になる見込み。「課税事業者を選べば消費税を納めなければいけない。一方で免税事業者のままだと、控除ができないことを理由に取引先から敬遠されたり、値下げを求められたりする可能性もある」と中橋さん。いずれの場合も、免税事業者にとっては資金繰りが厳しくなりかねない、というわけだ。

同制度の影響を特に受けるのが、主に企業を相手に取引している免税事業者。例えば、大工の一人親方、フリーランスのライター、デザイナー、インストラクター、運送業者などだ。一般客向けの飲食店など、企業と取引のない免税事業者なら「今まで通りでも問題ないのでは」とみる。

免税事業者として、図面制作の夫の仕事を手伝っている中部地方の60代女性は最近、同制度を知り「大変なときにどうして」と戸惑う。「リーマン・ショックや新型コロナで売り上げが落ちる中、何とかやってきた。もうやめようかという気持ちになる」と話す。

そもそも消費税を巡っては、免税などによって消費者が支払った税金の一部が国に入らず、事業者の利益となる「益税」の批判がある。インボイス制度で免税事業者を対象外とした理由について、財務省の担当者は「免税事業者の売り上げに消費税は含まれていないため」と説明。「インボイスは複数税率の下で税率や税額を正確に伝える手段。結果的に、益税の抑制につながる面はある」と話す。