北朝鮮のオリンピック委員会が、今夏の東京五輪への不参加を決めた。
北朝鮮が東京五輪に不参加の理由は、①北朝鮮の医療体制が脆弱、②韓国をけん制する狙い
決定を伝えた北朝鮮体育省運営のウェブサイト「朝鮮体育」の4月5日付記事によると、理由について、新型コロナウイルスが流行するなか、「世界的な保健医療危機状況から選手を保護するため」としている。3月25日に平壌でビデオ会議方式で開いたオリンピック委員会総会で決定されたという。
주체110(2021)년 조선민주주의인민공화국 올림픽위원회 총회 진행 2021.4.5
北朝鮮情勢に詳しい南山大学の平岩俊司 教授は、
「北朝鮮は医療体制がぜい弱で、外国との関係を断つという非常に厳しい対応をしている。仮に選手を派遣して感染者が出た場合に、北朝鮮に帰国したあとの対応が極めて難しいという懸念が基本的にある。」
と指摘した。また、韓国をけん制する狙いもあるのではないかという見方を示し、
「韓国は東京オリンピックをきっかけに次の米朝の協議を後押ししたいという思いもあったし、同時に日本を舞台にするオリンピックなので日朝関係の進展も韓国が後押しをして、北朝鮮問題で韓国が全体のイニシアチブを取りたいという思いがあったが、そうした韓国側の思いをけん制したのだと思う。」
と分析した。
文在寅大統領の「五輪政治利用」の計画が砕かれる
北朝鮮の東京五輪不参加で最もダメージを受けるのは、韓国の文政権であろう。文在寅大統領の「オリンピック政治利用」の計画はついえた。
韓国の文政権はこれまで東京五輪が南北対立の事態を打開する突破口となるよう、外交活動を続けてきた。昨年11月には韓国情報機関トップ、朴智元(パクチウォン)国家情報院長が訪日し、菅首相に対し、東京五輪開催中に日米南北4者会談を開くことを提案したとされる。
文大統領は3月1日にソウルで開いた抗日独立運動記念式典での演説で、「東京五輪は韓日、南北、日朝そして米朝の対話の機会にもなり得る」と訴え、韓国が開催成功のために日本に協力する姿勢を見せていた。
この文大統領の五輪重視の背景には、2018年の平昌冬季五輪を通じて南北関係が改善した「五輪外交」の成功体験がある。平昌冬季五輪の開会式には北朝鮮の金正恩総書記の実妹、金与正氏らが出席し、大会期間中に文大統領と会談した。
だが、2018年当時と現在は、北朝鮮を取り巻く状況は違う。北にとっては今、韓国や日本と無理に対話を再開してもメリットがないと判断したことも、東京五輪不参加を決めた理由の1つと見られる。
日本では、北朝鮮に続きドミノ式にボイコットを心配する声
自民党の二階俊博幹事長は6日午前の記者会見で、北朝鮮が東京五輪への不参加を表明したことについて「それはその国の考え方でしょうから、承りましたということだ」と語った。
五輪に合わせて北朝鮮の要人が来日した場合、菅義偉首相が拉致問題解決に向けて対話する意欲を示していたことに関しては「別の方法を考えなくてはならない」と述べた。
北朝鮮の辞退によって「東京はコロナが危険だという認識を世界に与えかねない」と懸念する声もあり、他の国や地域が追随する『ドミノ式ボイコット』が起きても不思議ではない。
【参考・引用・抜粋 記事】
北朝鮮の不参加理由はコロナだけか 韓国関係者の分析は(朝日新聞 2021年4月6日 12時24分)
北朝鮮 五輪・パラ不参加 “感染懸念”と“韓国けん制”背景か(NHK 2021年4月6日 19時13分)
北朝鮮が東京五輪不参加表明 韓国の文政権に大きなダメージ(高橋浩祐・国際ジャーナリスト 4/6 14:41)