岸田内閣3回目の「骨太の方針」、目玉ない「政策カタログ」…「小骨を集めたようなものになった」

岸田内閣3回目の「骨太の方針」、目玉ない「政策カタログ」 政治・経済

岸田内閣3回目の「骨太の方針」、目玉ない「政策カタログ」…「小骨を集めたようなものになった」(読売新聞 2024/06/22 08:42)

岸田内閣で3回目の策定となった今年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」は、デフレ脱却に向けた賃上げ促進を掲げたものの、2022年の防衛力強化、23年の少子化対策のような目玉政策に欠ける内容となった。近年は各省庁が持ち込んだ主要施策をはめ込む「カタログ化」が定着しており、改めて存在意義が問われる。(経済部 秋田穣)

「出し尽くし」

岸田首相は21日の経済財政諮問会議などの合同会議で「人口減少が加速する2030年度までが経済構造変革のラストチャンスだ。経済・財政・社会保障を一体とした改革を進めていく」と強調した。

骨太の方針では冒頭からデフレ脱却に向けた決意を打ち出した。24年春闘で33年ぶりの高水準となった賃上げの定着や、中小企業、地方への波及、男女間や正規・非正規雇用の格差是正などに向け、「政策を出し尽くした」(経済官庁幹部)形となった。

顧客による理不尽なクレーム「カスタマーハラスメント」や、人身被害が相次ぐクマへの対策、保護司への支援充実など、最近注目されている社会課題への対応も盛り込まれた。ただ、期限や目標を明示しないケースが多く、着実な実行につながるかが焦点となる。

曖昧な形に

今回の特徴の一つが、「経済・財政新生計画」を策定し、国と地方の「基礎的財政収支」(PB)を25年度に黒字化させる目標を3年ぶりに明記したことだ。財政健全化への姿勢を強めたと言える。

ただ、26年度以降の具体的な見通しはなかった。自民党内では、財政再建と経済成長のどちらに力点を置くかで意見が分かれている。双方に配慮し、曖昧な形にしたとみられる。

取りまとめを担当した新藤経済再生相は21日夜の記者会見で「国民全体がそれを目標とできるような、世の中の変革のムーブメント(動き)を作り出せるかどうかが課題だ」と述べた。

「小骨集めた」

骨太の方針は、首相が議長を務める経済財政諮問会議が議論し、毎年6月頃に閣議決定される。

01年に小泉内閣が初めて策定し、郵政民営化や公共事業削減など「官から民へ」の主要政策が並んだ。「骨太」の表現は当時の宮沢財務相が「骨太な問題を集約し」と発言したことがきっかけだ。民主党政権下で中断したが、政権交代で復活した。今年は21回目の策定となる。ただ、近年は各省が次年度予算で盛り込みたい予算の「お墨付き」を得る場ともなってきた。

法政大の小黒一正教授(公共経済学)は「骨太に載れば予算が取れるとか、制度改正ができるという狙いから、各省の政策が書き込まれる形になった」と指摘する。経済官庁幹部からも「骨太どころか、小骨を集めたようなものになった」との声も上がっている。

◆ 基礎的財政収支
社会保障や公共事業といった政策にかかる経費をどれだけ税収で賄えているかを示す。赤字の場合、国債(借金)に頼っている状況を表す。内閣府の試算では、高い経済成長が続いても25年度は1・1兆円の赤字が見込まれる。