新電力の4分の1超が「倒産」「事業撤退」 3月までに195社、前年比6.3倍増(JCAST 2023年03月31日19時15分)
ロシアのウクライナ侵攻や円安によるエネルギー価格の高騰で、「新電力」と呼ばれる新規参入した電力小売り事業者のうち27.6%が電力事業の契約停止や事業撤退、もしくは倒産していることが、帝国データバンクの調べでわかった。2023年3月29日に発表した。
電力の市場価格の高騰が長引くなか、2021年4月までに登録のあった新電力会社706社のうち、195社が3月までに事業の撤退などに追い込まれた。昨年3月末時点の31社と比べて6.3倍に増えた。
背景に、長引く電力の市場価格の高騰
急激なエネルギー価格の高騰で、電力大手10社のうち、9社が2022年度第3四半期(22年4~12月)決算で最終赤字を計上した。電力大手が家庭向け電力の値上げ方針を打ち出すなか、それに伴い電力小売業者(新電力会社)でも値上げの動きがある。
その一方で、新電力の倒産や撤退で契約継続が困難となり、無契約状態となったため、電力大手などから供給を受ける「電力難民」企業は、昨年10月には4万5871件に急増。今年3月は3万7873件まで減少したものの、依然として高水準となっている(電力・ガス取引監視等委員会が3月15日公表)。
帝国データバンクの調べによると、2021年4月までに登録のあった706社の「新電力会社」(登録小売電気事業者)のうち、今年3月24日時点で全体の27.6%に当たる195社が倒産や廃業、または電力事業の契約停止や撤退などに追い込まれたことがわかった。
昨年3月末時点では累計で31社だったが、同年6月に104社に急増。さらに、同年11月28日時点で146社まで増加していた。そして今回、昨年3月末からの1年で6.3倍に急増したかたちだ。電力の市場価格の高騰が長引き、撤退などに踏み切る新電力会社が増えている。【図1参照】
図1 倒産や廃業、事業撤退などに追い込まれた新電力は195社だった(帝国データバンク調べ)
195社のうち、新規申し込み停止を含めた「契約停止」は112社で、最も多かった。昨年11月時点の91社から21社増えた。また、電力販売事業からの「撤退」は57社で、同年11月時点の33社から大幅に増加。
「倒産・廃業」は26社で、東北電力と東京瓦斯の共同出資で設立されたシナジアパワー(東京、22年12月破産、負債130億円)や日本電灯電力販売(東京、23年1月破産、負債5000万円)などの倒産が発生した。【図2参照】
図2 電力事業の契約停止は112社で最多(帝国データバンク調べ)
2020年末以降の断続的な卸電力市場の価格高騰の影響は色濃く、従来のビジネスモデルの継続が難しくなっているようだ。財務基盤が脆弱な事業者が契約停止から撤退、大手資本の出資があっても撤退後に倒産に転じるケースも出てきた。
電力の販売価格、改善へ前進 22年12月の利益は前年比4倍超増加
一方、電力・ガス取引監視等委員会の電力取引結果のデータから、帝国データバンクが推計した12月の新電力の電力販売価格の平均は、供給1メガワット時(MWh)当たり約3万2270円で、前年同月の1万9082円を上回り、1年間で約7割上昇した。
電力需要の高まりを受けて、新電力が調達価格の上昇分を売電価格に反映させる動きが続いている。
この結果、新電力の1MWh当たり販売利益(電力販売価格-電力調達価格)は、22年12月は7232円に上昇し、前年同月(1733円)の4倍超まで増加した。
昨年7月は461円の赤字という薄利の状況で「逆ザヤ」も懸念される事態にあったが、7月以降の調達価格が22~26円で推移するなか、電力販売価格の平均は2~3万円台まで上昇。そのため、8月は183円、9月は3053円、11月には7790円と、利益は「電力ショック」以前の水準まで改善傾向にあるという。
帝国データバンクは、
「電力調達価格が安定していけば、またプレーヤーとなる登録企業が増加する可能性があるが、一方で撤退企業の増加は継続しており、財務基盤の強弱で二極化していくとみられる」
と予測している。
冬の需要期から夏期の需要期に向けて、今後の価格転嫁が需要家にどのように影響するかが注目される。