物価高対策 選挙目当てが過ぎないか(新潟日報 2023/3/25 6:00)
効果の検証も国会での議論も不十分なまま、予備費を使った巨額の追加対策が決まった。これでは選挙向けのばらまきと言われても仕方がない。財政規律を軽視する姿勢は将来に禍根を残す。
政府は、物価高対策として、低所得世帯への現金給付や、地方で主に使われるLPガスの料金低減のための補助など2兆円強の追加策を決めた。財源には2022年度予算の予備費を充てる。
岸田文雄首相は24日の参院予算委員会で、予備費を使った今回の対策について「物価の動向に機動的に対応していく姿勢が大切だ」と強調した。
物価高対策では既に、電気・ガス料金抑制策などを盛り込んだ22年度第2次補正予算が昨年12月に成立している。自治体などからはさらなる対策を求める要望が出ており、それに切れ目なく応える必要があるとの判断なのだろう。
しかし、財政運営上の観点からは疑問が多い。その最たるものは、予備費の使い方だ。
予備費は本来、災害対応などで5千億円程度を毎年計上していたが、新型コロナウイルス対策を契機に急増し、22年度は過去最大の11兆7600億円に上った。
国会の審議が必要な補正予算と異なり、内閣の裁量で使い道を決められる点で、迅速に対応できる利点はある。ただ、これまでの使途の効果がほとんど検証されていないのは問題だ。
予備費が無駄遣いの温床となっている懸念がある中、今回も十分な議論もなく財源に充てるのは妥当なのか。透明性の確保には補正予算で対応するのが筋だろう。
政府の追加対策は、与党が幅広く並べた提言のメニューをそのまま反映させたものだ。
主な個別対策では、自治体に配る地方創生臨時交付金に「低所得世帯支援枠」を新たに設け、住民税非課税世帯を想定して3万円を目安に支援する。
本県などの自治体が求めていたLPガス料金の負担軽減も臨時交付金を通じて実施する。都市ガス料金や電気代は一律軽減されているが、LPガスは対象外だった。
いずれの対策も具体的な施策は自治体に委ねられる。どう使われ、どのような効果があるのか、ここでも検証が欠かせない。
政府、与党が対策を急ぐのは、既に始まっている統一地方選や衆参5補欠選挙を控えているからだ。地方や国民の生活に配慮する姿勢を示すことで、有権者の支持を得ようとする狙いが透ける。
国の財政は、借金依存体質が続く。国内総生産(GDP)に対する政府債務残高比率は250%を超え、先進国で最悪だ。
必要な物価高対策は講じなければならないが、ばらまきでは放漫財政から脱却することはできない。政府には責任ある財政運営を改めて求めたい。