アベノミクスの10年「貧しい人はもっと貧しく」非正規、中小に恩恵届かず

アベノミクス「3本の矢」 政治・経済

アベノミクスの10年「貧しい人はもっと貧しく」非正規、中小に恩恵届かず(東京新聞 2023年3月14日 12時00分)

トリクルダウンが起きなかったのは、非正規労働者や中小企業に恩恵が波及しなかったことが大きい。格差を実感してきた当事者が10年間の思いや課題を語った。

東京都内で住宅内装業を担う企業の契約社員、大橋翼(たすく)さん(41)はこの10年間を「豊かな人が豊かになり、貧しい人はもっと貧しくなった」を振り返る。戦後2番目の長さの好景気を含む期間だが、「景気が良くなった実感はない」という。

早朝から深夜まで1日に3、4件は現場で作業をし、長時間労働は当たり前。会社は売り上げを伸ばしているように見えたが、残業代の削減などの「賃下げ圧力があった」。他の契約社員と未払い残業代の請求などをするようになったといい、「交渉しなければ、奪い取られるだけの10年だった」と実感を込める。

賃金停滞が続くのは、働く人の7割を占める中小企業も同じだ。原材料費などが上がった際、商品の販売先に取引価格を上げてもらう価格転嫁が進まなかった。

中小の従業員が多くを占める労組、JAMの安河内賢弘会長は1日の会見で、中小にとっての価格転嫁を「悲願であり最大の課題だ」と強調。「昨年まで順調ではなかった。今年もできないなら罰則規定の強化が必要だ。価格転嫁が行われて賃金が上がる当たり前の社会を」と力を込めた。

政府の2021年調査では、非正規は正規と比べて賃金が3割以上低い。従業員10〜99人と規模の小さな企業は、1000人以上の大企業より約2割低かった。