”エモい弔辞”で人気急上昇!菅前首相「再登板」の可能性 安倍国葬が分水嶺に。岸田政権の終焉が見えてきた(FRIDAY DIGITAL 2022年10月03日)
国民の声を二分した安倍晋三元首相の「国葬儀」からまもなく1週間。騒動はすでに「終わったこと」になりつつある。が、そんななか、ひとり菅義偉前首相の人気が上昇し続けている。友人代表として読んだ弔辞が、多くの人の「心を揺さぶった」のだ。
あの「エモい弔辞」が分水嶺になった
「かたりあひて 尽しゝ人は 先立ちぬ 今より後の 世をいかにせむ」
平成と令和をまたぐ7年8ヵ月という長期政権を成し遂げた安倍元首相と官房長官だった菅。女房役としての最後の仕事は、この歌を引用して安倍元首相への惜別の辞を読み上げる大役だった。
「悔しい」
「7年8ヵ月は本当に幸せだった」
見上げた視線の先の遺影に声を震わせながら語りかけた菅義偉を「ガースー」と呼ぶ者はもういない。
会場の日本武道館で菅前首相の弔辞を見ていた自民党最古参の一人は、この光景を目の当たりにして「岸田文雄政権は長く保たない」と言い切った。
崩壊する岸田政権
「安倍さんの死によって高まった気持ちが、菅さんの弔辞でピークを迎えたと言っていい。国民の『気持ち』がひと段落した今、この政権はもう長く保たないだろう。統一協会、国葬、五輪汚職、円安物価高の四重苦に、岸田首相は狼狽している。会見では、同じことを繰り返し話しているだけで、ピントがずれて打開策になっていない」
これから待っているのは「解散」なのか、「総辞職」なのか。
「統一教会選挙と揶揄される愚行を自民党は許さないだろう。岸田首相は、解散ではなく辞職を決意するんじゃないかと思う。もちろん、禊ぎ選挙として統一教会問題を一気に片付けるという手もあるが…。はたしてこの問題に終わりがあるのか」(自民重鎮議員)
では、ポスト岸田は誰か。
「茂木敏允幹事長は、自民党内の人気がなさすぎて、何が何でも嫌だという声ばかり。河野太郎デジタル担当相は霞ヶ関から総スカン。麻生太郎副総裁には、ワンポイントで鈴木俊一財務相という腹案があるようだ。麻生派の後継者として財務相にしたんだから。しかし、安倍国葬ですべてが変わった。岸田の後は、ずばり菅の再登板しかないと思う」
菅前首相は、その短い任期中、世論に「ボコボコ」にされて退陣した。
「しかし不思議なことに、ワクチンに東奔西走した菅前首相の評価は、退陣後に高まった。選挙遊説のときは、ヤジではなく『ありがとう』の声援ばかりだった。そしてなにより党内の力関係を考えると、菅再登板なら、安倍派、麻生派、二階派、茂木派は妥協できる。
問題は、菅前首相自身が迷っていることです。自分はあり得ない、と。しかし、菅さんの取り巻きが、それこそ土下座の勢いで頼み込んだらどうなるか。他派閥からも、自民党の窮地を救えるのはあんただけだと推され、最後に麻生さんが説得に動いたとき、菅の心は大きく動く可能性がある」
「菅さんしかいない」の舞台裏
別の自民党幹部もまたこう明かした。
「すでに菅グループは各方面に走り、今後の政権運営について話し合いを始めている。その中身は『総裁選に関する相談ごと』なんだ。安倍派の一部でも会合がもたれ、麻生さんにも接触したと聞いた」
この幹部議員は、政治の現状を難局中の難局と言い、霞ヶ関をフル稼働させるには官僚機構の操縦術に長けた菅前首相しか人材はいないと断言した。
安倍国葬儀での弔辞以降、国民のみならず、党内でもその人気は爆上がりなのだ。また、BSテレビに出演した菅前首相は、岸田政権の経済政策に不満を吐露し「円安なら、円安を生かした経済政策を打ち出すべき」と一刀両断した。全国紙政治部の菅番記者はこう言う。
「菅さんは円安下の経済運営のプロ。例えば、『円安物価高の状況で日本に来たがっている外国人がどれほど多いか。コロナ規制をいつまでも引きずっているから外国人旅行者はなかなか来られない。ワクチンが普及した今、国として観光アピールを始めていいとき。それにこの円安は、日本ブランドの農林水産品をセールスする格好のチャンスだろう』と、打開の方策を語っています」
菅前首相には、安倍政権下で培った円安対策のノウハウがある。それは、輸出、観光、インバウンドの三本柱と至ってシンプルだ。
「菅官房長官時代、韓国のインバウンドが1000万人、日本は840万人という差の原因を徹底的に調べたんです。その理由は、根拠のない治安悪化を懸念した日本の行政が、ビザをなかなか発給しなかったからだと分かった。そこで菅官房長官の一喝で、ビザ発給を緩和した。結果、訪日外国人は2019年に過去最高の3190万人に達した。その実績から、今の円安は、日本への外国人旅行者を呼び込む最高のチャンスなんだと力説しています」(経産省キャリア)
菅グループの議員が言う。
「菅さんはかつて、再登板など微塵も考えていないと言っていました。が、増上寺での家族葬儀の後、菅事務所を訪れた安倍昭恵さんに『弔辞の機会があるときは、安倍の友人代表として菅先生にお言葉をいただきたい』と言われた。これは、菅前首相が安倍家から後継指名を受けたのだ、と我々は理解しています」
生前、安倍元首相はたびたび、菅派立ち上げを持ちかけていた。当時は、安倍派の補完勢力として、岸田、麻生、茂木連合への対抗手段とみられていたが、安倍亡き今、事情は大きく変わった。
国民人気に加え昭恵未亡人のお墨付きも得た菅前首相。自民党内は、岸田政権の「次」へ大きく踏み出したようだ。