維新・吉村大阪府知事 中国・武漢との港湾提携に「国防上問題ない」 「一帯一路」で物議も

武漢と提携「国防上問題ない」 大阪知事 政治・経済

漢と提携「国防上問題ない」 大阪知事、「一帯一路」で物議も

漢と提携「国防上問題ない」 大阪知事、「一帯一路」で物議も(産経新聞 2022/5/30 22:30)

大阪府の吉村洋文知事は5月30日の府議会本会議で、府と大阪市の共同部局が昨年12月に結んだ中国・武漢との港湾提携について「国防の観点から、問題があるなら当然やめるべきだと思うが、そうとも思わない」と述べ、協力関係を維持する考えを示した。西野修平府議(自民)に対する答弁。

提携を巡っては、交流サイト(SNS)上で中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」に組み込まれたのではないかと物議を醸した。提携の覚書に「一帯一路」の文言はなく、日本の民間団体と武漢を抱える中国・湖北省人民政府が都内で主催した「説明会」の席上で提携が締結されたが、この説明会のプログラムに「一帯一路」の記載があった。

無関係だと改めて訴える吉村氏に対し、西野氏は、中国メディアの報道は「一帯一路」への参加を想起させる表現だったと指摘。中国側の戦略に利用されており、経済安全保障の観点からも「港湾管理のガバナンスを改めるべきだ」と提起した。

吉村氏は、締結時に部局側から自民府議団幹部らにも説明が行われていたとし、「問題視するなら本来提携時に指摘すべきだ」と反論。「(提携は)港湾の国際競争力を強める取り組みだ」と意義を強調した。「選挙前になって何か(今回の話が)出てきた」とも語った。

大阪府市が「一帯一路」に? 中国・武漢との提携が呼んだ波紋

大阪府市が中国「一帯一路」に参加? 武漢と覚書が思わぬ騒動(産経新聞 2022-05-18・大阪朝刊・第1社会)

■松井市長否定「ネット世界の想像」

中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」に大阪が参加を表明し、中国・武漢とパートナーシップ協定を結んだ-。最近、交流サイト(SNS)でこんな言説が飛び交い、物議を醸している。大阪府と大阪市の共同部局が昨年末、中国の政府系機関と交わした港湾提携を巡る覚書が発端だが、当該文書に「一帯一路」の文字はない。なぜ、こうした騒動になったのか。

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《なんじゃこりゃ、武漢新港とパートナー港提携!?》

《関連ページにある、一帯一路連通提携プロジェクトって何!?》

きっかけは今月10日、西村日加留(ひかる)・大阪府議がツイッター上にこんな書き込みをしたことに始まる。

西村氏が添付した画像は府のホームページ(HP)の一画面。府市で組織する大阪港湾局と中国・武漢港の管理者(武漢新港管理委員会)が、パートナーシップ港提携の覚書を結ぶ、とアナウンスされていた。

◆保守系から反発

問題視されたのは、覚書が締結された場-だった。昨年12月の当日は、中国との経済交流を進める「日本国際貿易促進協会」(東京)と武漢を抱える中国・湖北省人民政府が主催した「説明会」の席上でパートナーシップ港提携が結ばれたのだが、この説明会のプログラムに「中国湖北-日本関西の川海連絡輸送一帯一路連通提携プロジェクト」なる記載があったのだ。

一帯一路を巡っては、対象国に対する中国の過剰融資が問題となり、平成31年には当時の安倍晋三首相が国会で「全面的に賛成ではない」と見解を述べたこともある。

説明会の主催団体である同協会の会長に、かつて政界きっての親中派として知られた河野洋平元衆院議長が就いていることもあり、保守系のネットユーザーらを中心に府市への批判が噴出したのだった。

◆“炎上”に当惑

府市の行政運営を担うツートップは、大阪維新の会の現代表である吉村洋文知事と、前代表の松井一郎市長。「一帯一路」騒動と政情を絡めて、維新を批判する向きも多く見られた。

だが実際のところ、締結された覚書に一帯一路の文言はない。大阪港湾局によると、説明会のプログラムにあった「一帯一路連通提携プロジェクト」に調印したのは、港湾局ではなく協会と湖北省政府だった。

港湾局としては、昨年11月に武漢側から「協力関係の構築」について打診があり、これまでも外国の他の港湾都市と結んだのと同じような友好協定を交わしたに過ぎないという立場だ。

当日の締結式に出席し、覚書に署名した前港湾局長(今年3月で定年退職)は取材に「プロジェクトのタイトルから誤解が生じたのだと思うが、港湾同士の交流や活性化のための提携が『一帯一路』と混同されている」と予期せぬ“炎上”に当惑。一帯一路関連プロジェクトが同じ場で紹介されることは事前に把握していなかった、とした。

一方で「認識が甘い」と指摘するのは、今回の提携にいち早く疑義を呈した西村氏。武漢では新型コロナウイルスのヒトへの感染が最初に始まったとの説が有力視されているとし、世界的に感染が収束していなかった昨年12月時点での提携は「拙速に過ぎる」と批判した。

松井氏は17日、記者団に対し「日本として『一帯一路』に正式にコミットしていないわけで、地方自治体がそれを飛び越えてコミットできるわけがない。ネット世界の想像の域でしかない」と一連の指摘を一蹴。「『一帯一路』という中国の覇権主義には大反対だ」とした上で、武漢との提携について「要は港の利便性向上、チャンスを広げようという連携。国の大きな外交防衛とか、そういうとことつながる話ではありません」と語った。

吉村氏も「大阪府が『一帯一路』にくみすることは一切なく、その権限もない」と強調した。

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【用語解説】一帯一路

中国の習近平国家主席が2013年に提唱した中国から欧州を結ぶ巨大経済圏構想。中央アジアや東南アジアを経由する陸路(一帯)と、南シナ海やインド洋を経由する海路(一路)で、港湾や鉄道などインフラ建設を中国主導で推進、経済発展や親中国圏の拡大を狙う。対中債務の増大により中国支配が強まることへの懸念もある。