あれっ、暑いのにもう長袖…?「認知症の初期症状」に現れる11のサイン【医師が解説】

認知症の中核症状と周辺症状 社会

あれっ、暑いのにもう長袖…?「認知症の初期症状」に現れる11のサイン【医師が解説】(幻冬舎 2022.8.31)

現役医師が解説!様々な「カラダの不調」への対処法【第216回】
武井智昭 高座渋谷つばさクリニック院長

超高齢社会の日本では、現在6~7人に1人が認知症を患っており、今後もますます増えていくことが予想されています。認知症は早期発見により進行を遅らせることが可能なため、初期症状のサインを知り、変化に気づくことが重要だと、高座渋谷つばさクリニック院長の武井智昭先生はいいます。「認知症の初期症状」にはどのような言動がでるのか、11のサインをみていきましょう。

日本人の6~7人に1人が「認知症」

「認知症」とは、老化などさまざまな原因で脳機能が低下した結果、記憶障害と判断力低下が起き、屋外から屋内の順で社会生活や対人関係などに支障が出る状態のことをいいます。「せん妄」と異なり、意識障害がないことが診断の前提です。

日本では少子高齢化の進行とともに、認知症の診断数も増加しています。現在では軽症例を含めて6~7人に1人程度が認知症であり、今後も増加すると予想されています。

認知症は以下の分類があります。

・ アルツハイマー型認知症
記憶障害(もの忘れ)から始まる場合が多く、進行は緩やかです。記憶障害が中心となりますが、「物盗られ妄想」があることが特徴です。

・脳血管性認知症
脳梗塞・脳出血、脳の動脈硬化などにより、認知機能が「まだら状」となることが特徴です。記憶障害・言語障害などが現れやすく、脳血管障害であるため、アルツハイマー型に比べ歩行障害などの身体症状も出やすいです。

・レビー小体型認知症
幻視、睡眠時の異常行動、手足の不随意運動などの身体症状(パーキンソン症状)が特徴です。

いつも行く病院名がいえない…「中核症状」のサイン

認知症には記憶力低下などの「中核症状」と怒りやすいなど精神症状である「行動・心理症状(BPSD)」の2つに大別されます。

中核症状

はじめに気づくのは、外出時であることが多いです。街のなかで自分がどこにいるか、どこに向かっているのかが理解できなくなります。

1.記憶障害
新しいことを記憶できず、昨日の夜の食事などを忘れます。症状が進行すると、以前覚えていたはずの記憶も失われていきます。

2.見当識障害
まず、今日の日付や曜日、いまの季節、いつも行っている病院やスーパーの名前がわからなくなります。その後、道に迷ったり、バスや電車の行き先を間違えたりするようになります。さらに進行すると、自分の年齢、家族、相手の人物に関しての記憶がなくなります。

3.理解力、判断力の障害
思考スピードが低下し、瞬間の判断や2つ以上の複雑な動作を要することができなくなります。自動販売機、駅の自動改札、銀行ATMなどの前で戸惑ってしまいます。

4.実行機能障害
買い物の際、同じものを購入してしまう、料理ができなくなる、金銭や服薬の管理ができなくなるなど、日常生活に支障が出てきます。結果として、自分で計画を立てられず、予想外の変化にも柔軟に対応できなくなります。

5.感情表現の変化
その場の状況がうまく認識できなくなるため、周りの人が予測しない、思いがけない感情の反応を示すようになります。

夜間徘徊、幻覚…「行動・心理症状」のサイン

行動・心理症状(BPSD)

本人がもともと持っている性格や生活環境などさまざまな要因によって生じる心理面・行動面の症状で、BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)とも呼ばれます。

6.抑うつ
気分の落ち込みや意欲の低下により、反応が薄く、閉じこもります。

7.徘徊
他者には理由がわからないことが多いですが、本人には理由があり絶えず歩き周ります。夜間に多い傾向があります。

8.幻覚
実際に見えないものが見える「幻視」が多く、聴こえないはずの音が聞こえる「幻聴」の症状もみられます。また、アルツハイマー型認知症の場合は鏡の前の自分の姿に対して、違和感を訴えます。

9.暴力・暴言
脳の機能低下で意思表示が難しくなり、感情抑制が困難となります。

10.睡眠障害
入眠困難、中途覚醒、昼夜逆転などの状態が生じます。

11.妄想
もの盗られ妄想など、被害妄想が多いです。

まとめ…初期症状から気づけるチェックポイント

以上のことから、初期症状で気づけるポイントとしては以下の通りとなります。

・同じことを何回も話したり、質問をする
・物を忘れて探すことが多い。「盗まれた」と訴えるようになる
・金銭管理や服薬管理ができなくなる
・仕事や料理など家事の能率が低下している
・冷蔵庫のなかに似たような物ばかり増えている
・趣味や外出などに興味を示さなくなる
・ATMや自動販売機、リモコンの操作が困難になる
・喜怒哀楽が激しくなる
・季節に合わない服装をする
・約束を破ることが多い

認知症外来の受診のきっかけとしては、こうした症状を本人が自覚するというよりも家族など周囲の人間から指摘されて来られるケースが多いです。自分自身や家族に認知症が疑われる場合、まずは地域包括支援センターや市役所などの行政機関に相談するのがいいでしょう。

その後、医療機関を受診し診断を受け、治療が開始されることになります。この際、同時に介護保険申請を行う場合がほとんどです。

武井 智昭 高座渋谷つばさクリニック院長
小児科医・内科医・アレルギー科医。2002年、慶応義塾大学医学部卒業。多くの病院・クリニックで小児科医・内科としての経験を積み、現在は高座渋谷つばさクリニック院長を務める。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として地域医療に貢献している。