上位論文数、世界12位に 初めて10位以内に入らず 自然科学分野(毎日新聞 2022/8/9 17:00 最終更新 8/9 17:00)
世界で2018~20年に発表された自然科学分野で影響力の大きな上位論文数で、日本が世界12位と、統計がある1981年以降、初めて10位以内から脱落した。文部科学省科学技術・学術政策研究所が9日にまとめた調査結果で分かった。日本は研究力の低迷に歯止めがかかっていない。
論文は、他の論文に引用されるほど注目度や影響力が高いとされる。同研究所によると、日本が12位になったのは、被引用数が上位10%に入る論文数だ。前期は10位で、新たにスペイン(10位)、韓国(11位)に抜かれた。
日本は論文総数でも前期の4位からインドに抜かれ5位、被引用数が上位1%の論文数も前期の9位からインドに抜かれ10位と、いずれも順位を下げた。とくに注目度の高い論文で、世界における存在感の低下が顕著だ。
研究力の伸びが著しい中国は、上位1%論文数で初めて米国を上回り1位になった。上位10%論文数、論文総数も前期に続き1位で「3冠」を初めて達成した。
各国の研究者がどれほど研究をけん引しているのか把握するため、初めて論文の責任著者の所属国単位でも分析した。日本の研究者は08~10年平均で3位だったが、10年後の18~20年平均では6位。上位10%論文数も6位から12位へ下げ、研究のけん引面でも低迷していることが分かった。
一方で、日本の産学官を合わせた研究開発費、研究者数はどちらも3位だ。日本の論文数が低迷していることについて、同研究所の伊神正貫・科学技術予測・政策基盤調査研究センター長は「日本は横ばいが続き下げ止まっているが、研究への投資を増やしている国が上昇したため」と分析。「いかに研究者の研究時間を確保し、博士号取得者を増加させていくかが重要だ」と指摘した。