北朝鮮とウクライナの教訓 古賀茂明(週刊朝日 2022年3月18日号より)
ミンスク合意ほど有名ではないが、実はもう一つ重要な合意、すなわち、ブタペスト覚書がある。特に、金正恩氏から見ると、こちらの方がはるかに重要度が高い。この覚書は、ウクライナ、ロシア、アメリカ、イギリスが1994年12月に結んだものだ。ウクライナがソ連崩壊時に国内にあった核兵器を放棄する代わりに、同国の主権を尊重し、武力行使や威嚇をしないと定めた。ウクライナから見れば、今回のロシアの行動により、貴重な核兵器保有国としての立場を自ら放棄して得た主権の保証がものの見事に踏みにじられたということになる。