「東京・江東5区全域が浸水の恐れ」高速道ランプへ垂直避難…道路会社と協定
「東京・江東5区全域が浸水の恐れ」高速道ランプへ垂直避難…道路会社と協定(読売新聞 2023/06/05 15:00)
大規模水害時にほぼ全域が浸水し、最大250万人が被害に遭うと想定される東京都東部の江東5区(墨田、江東、足立、葛飾、江戸川)の住民避難を巡り、東京都や江東5区、高速道路各社は、高速道路と一般道をつなぐ傾斜路(ランプ)を緊急避難先に活用することで合意した。今後、避難訓練を行うなど万が一に備える。
都や区の関係者によると、4月下旬に協力協定が締結された。避難先となるのは、江東5区を通る首都高速道路と京葉道路の出入り口約20か所のランプ。河川氾濫などにより、各区が避難情報のうち最も危険度の高い「緊急安全確保(警戒レベル5)」を発令した場合、避難住民に開放される。都は高速道路各社への要請、区は住民の誘導、高速道路各社は車両の通行止めなどを担う。
江東5区は荒川や江戸川などが縦横に流れ、海抜0メートル地帯が広がる。大型台風の接近時には河川氾濫や高潮による風水害が想定され、ほぼ全域が水につかり、水深が約10メートルに達する地域もあると予測されている。
一帯の人口は約265万人に上り、避難には混乱が予想される。都や江東5区は、隣県などに早めに逃れる「広域避難」の徹底を呼びかけるが、間に合わない場合は、マンション上層階などに逃げる「垂直避難」を促す考えで、高速道路への避難もその一環だ。災害時に高速道路の本線が通行止めとなっても、緊急車両は走行するため、避難場所はランプに限定する。退避可能な人数は限られるため、ランプの利用は必要最小限にとどめ、避難住民は速やかに大型バスで安全な場所に輸送する計画だ。
道路の高架部を水害時に活用する取り組みは、甚大な津波被害を受けた東日本大震災を機に国が各自治体に検討を促してきた。国土交通省によると、3月末現在、国道約310か所、高速道路約170か所の計約480か所(35道府県)で活用を決めており、国は2025年度までに国道でさらに約510か所の整備を目標に掲げる。
都と江東5区では、19年に台風19号が接近した際、鉄道の計画運休により住民の広域避難の難しさが浮き彫りとなり、高速道路の高架の活用が検討されていた。
大雨被害の埼玉・越谷、住民「冠水する土地と聞いていたが…ここまでひどいとは」
大雨被害の埼玉・越谷、住民「冠水する土地と聞いていたが…ここまでひどいとは」(読売新聞 2023/06/05 15:12)
埼玉県東部を中心に記録的な降水量が観測された大雨で、県は4日、越谷市や松伏町などで住宅の床上浸水が約600棟、床下浸水が約3100棟に上るとの見通しを発表した。建物や乗用車などの被害に加え、商品が被害を受けた店舗などもあり、県や自治体は被害の全容把握を急いでいる。
24時間の降水量が観測史上最大を記録した越谷市では、4日も住民が後片付けに追われた。東武伊勢崎線せんげん台駅前の書店は、床上約30センチの浸水被害に遭った。大雨予報を受けて商品を棚の上に移していたが、一部の書籍や文具は対応が間に合わず、ぬれて販売できなくなった。同日朝から店内でモップがけや消毒作業をしていた店長の男性(53)は「大変だが、早く店を再開するために頑張る」と話した。
同市東越谷の県道沿いの理髪店は、店内に流れ込んだ泥水のにおいが取れず、いすなどの廃棄処分が必要になった。同店の男性(28)は「営業再開のめどは立っていない」と落胆した。近くの写真店でも壁紙や床が泥水につかり、経営する男性(44)は「張り替えなどにかかる出費がかさみ、かなりしんどい」と肩を落とした。
同市増林では、道路の冠水でエンジンがかからなくなった乗用車を越谷署員らが数人がかりで押して撤去作業を進めた。近くに住む会社員の男性(31)は「冠水する土地だとは聞いていたが、ここまでひどいとは思わなかった」と話した。
埼玉県は3日に越谷市と草加市、松伏町に災害救助法の適用を決めており、被害復旧に必要な費用は県と国が負担する。