【完全版】「売り上げなんて操作すればいい」と…三浦瑠麗 夫の会社「給付金550万円」不正受給疑惑(FRIDAY 2023年3月13日)
東京・永田町にある投資会社TRIBAY CAPITAL(以下「トライベイ」)。国会や首相官邸にほど近いビルの1階にオフィスを構え、通りに面したガラス張りの外壁の向こうに、代表を務める清志氏の執務室が見える。
間仕切りで確保されたこうした個人用執務スペースは合わせて5つある。通りから最も奥まったところにある一角を瑠麗氏が使い、その隣には夫妻の一人娘の部屋も用意されている。そのほかの従業員は、通路などのオープンスペースに設けられた机で日々の業務を行う。このオフィスに瑠麗氏の専用スペースがあるのは、彼女が代表のシンクタンク「山猫総合研究所(以下「山猫」)」も入居しているからだ。
’20年10月下旬のある日、スマホを手にした清志氏が自身の執務室から出てくると、瑠麗氏の部屋に向かいながら従業員に声をかけた。
「あれ、どうなった」
トライベイはこの少し前、中小企業庁に「家賃支援給付金」を申請していた。新型コロナウイルスの蔓延に伴う同年春の緊急事態宣言などで、売り上げが減った企業を支援するための国の事業である。清志氏は、三井住友銀行麻布支店に設けたトライベイの普通預金口座に、予定どおり約520万円が入金されたことを確認すると、親指を立ててこう言ったという。
「グッジョブ!(よくやった)」
本誌は今回、複数のトライベイ関係者を取材。彼らの証言から、トライベイが、国や自治体が用意した各種給付金を不正に受けとっていた疑惑が浮上した。清志氏が「グッジョブ」と言ってサムズアップしたのは、偽りの申請に基づいて給付金を得たときの姿である。
「給付金を取りにいけ」
清志氏が従業員に指示を飛ばしたのは、’20年10月の初め頃だった。最初に狙いをつけたのが、中小企業庁の「家賃支援給付金」である。その申請要領によると、’20年の緊急事態宣言以降、いずれかひと月の売り上げが前年同月と比べて50%以上減った企業などを対象に、最大で600万円を支給する制度だという。ただ、10月時点で、トライベイはこの条件を満たしていなかった。前年と比べても遜色ない収入が見込まれていたのである。
清志氏らがこうした点について議論をしていると、執務室から出てきた瑠麗氏が口を挟んだ。
「売り上げなんて、数カ月ずらして操作すればいい。ばか正直に計上しなくたっていい」
受給条件に合うよう、売上額を減らして申請すればいいというのだ。そのうえで瑠麗氏はこうも言い放った。
「政府なんて、ばらまいてナンボでしょう。国がカネをタダでくれるんだから、もらいにいかない手はない」
ただ、トライベイにおいて、瑠麗氏が言うような売り上げの操作は可能なのか。
トライベイは、全国の複数の地域で、太陽光発電所の開発事業に出資している。いずれもパートナーとなる別の出資企業などを募り、発電所の開発に特化した特別目的会社(SPC)を立ちあげるスキームである。東京地検特捜部の捜査対象となった太陽光発電事業も、こうしたSPCの1つが開発を担っていた。
「トライベイは各SPCに『代表社員』などの立場で関わっていて、各SPCでは、トライベイの従業員らが実務を進めている。一方、大半の発電所は土地の買収もままならない状況で、完成した発電所からの売電収入はほぼない。そのためトライベイの売り上げを支えているのは、各SPCとの間で結んだ業務委託契約です。SPCが、地権者との売買交渉や、開発に必要な各種資格の取得業務をトライベイに委託することで収入を得ているのです」(トライベイ関係者)
トライベイと各SPCは実質的に一体なので、業務委託契約書など、売り上げの計上に必要な書類も都合よく作成できる。したがって、売り上げを操作するのも容易だというのである。
また、給付金の申請時には、売上額のほかにも嘘の内容を報告した疑いがあるという。前出とは別のトライベイ関係者が明かす。
「オフィスの家賃は1カ月あたり170万円(税抜)ですが、そのうち50万円は山猫が支払っている。給付額を計算するベースとなる家賃は、あくまでトライベイが負担している金額です。ところがトライベイは、山猫の負担分を差し引かずに申請したと聞きます」
申請要領にも確かに〈賃借人(かりぬし)が借りている土地・建物の一部を第三者に転貸(又貸し)した場合(一部転貸の場合)、転貸(又貸し)をせず自らが使用収益する部分については、今回の給付の対象となります〉とある。つまり〈自らが使用収益〉していない部分については、今回の給付の対象とならないのである。
そのうえでトライベイ関係者が続ける。
「トライベイが、売上額を操作して申請した給付金はまだある。それが東京都の『家賃等支援給付金』です。’21年3月に申請して、同月中に約30万円を受けとっています」
こうしてトライベイは、少なくとも約550万円を不正受給した可能性があるのだ。
中小企業庁の訟務・債権管理室によると「不正受給が認められれば、給付金の全額のほか、延滞金や加算金を合計した金額を返還請求することになる。不正受給をした企業に関する調査は、警察とも連携して進めています」と話す。また、東京都の商工部調整課は「家賃を補助する都の給付金制度は、中小企業庁の給付金に上乗せして支援するために設けた。中小企業庁の給付金を返還した企業には、都でも違約金を含めて返還を求めることになります」としている。
三浦夫妻はこうした疑惑にどう答えるのか。
3月2日午前、オフィスビル裏口から出てきた清志氏に声をかけたが、こちらを一瞥(いちべつ)もせずに自家用車に乗りこんだ。同日の夕方、オフィスから現れた瑠麗氏に「FRIDAYです」と声をかけたが、「はい」とほほ笑むだけで質問には答えなかった。その翌日、瑠麗氏の携帯電話を鳴らした。
――FRIDAYです。
なんで私の携帯にかけてらっしゃるんですか。
――取材のお願いを。
取材はちゃんと、ルートを通してください。こういった取材は受けていないので。
――大事なことなので、瑠麗さんの肉声で見解をお尋ねしたい。
いや、まあ、肉声でじゃなくて(笑)。
――トライベイのことです。
なんで私にトライベイのことを聞くんですか。
――コロナ禍のときに、家賃支援給付金という制度があった。
いやいや、私それ、別の会社で知らないので。うちじゃなくて、トライベイに取材を申し込んでください。
――トライベイが給付金を申請するにあたって、瑠麗さんが働きかけをしたと聞いた。その事実関係を確認したい。
いやいや(笑)。あの、えーと、そんな、そんな突飛なことを聞いたことがないので、あの、取材はちゃんとしたルートでやってきてください。じゃあ、失礼しますね、はーい。
あらためてトライベイと山猫に質問状を送ったところ、トライベイからは期限内に回答はなかった。山猫は「(トライベイとは)別会社でございますので、補助金を申請していたかどうかも含めて関知しません。日頃より法令遵守に努めております」と回答した。
逮捕後、清志氏は「無罪を主張していく」とコメントを発表。一方「夫を支えながら推移を見守りたい」と、容疑者の妻の立場から声明を発表した瑠麗氏。しかし、コロナ給付金をめぐっては〝疑惑の当事者〟として脚光を浴びる可能性がある。