プーチンと「その愛人」も同じ運命を辿るのか…かつて独裁者はこうして惨殺された 「平穏無事な最期」はありえない

かつて独裁者はこうして惨殺された 国際

プーチンと「その愛人」も同じ運命を辿るのか…かつて独裁者はこうして惨殺された 「平穏無事な最期」はありえない (週刊現代 2022.04.13)

ロシア軍によるウクライナでの大虐殺が次々と明らかになった。これに対しゼレンスキー大統領は「集団虐殺だ」と告発。現在、プーチンは国際社会から戦争犯罪人と呼ばれている。

この暴走のウラで、ロシアの新興財閥、軍や警察、さらには諜報機関の幹部たちがプーチンに手のひらを返しを始める可能性を前編記事『ここにきて、ロシアで「プーチンおろし」が始まった…「20兆円超の資産」も没収の可能性』で明らかにした。

側近の幹部たちがすべて敵に回れば、かつての独裁者のような運命を辿るかもしれない…。プーチンは、国民が食料不足に喘ぐ一方で、恐怖政治を敷いたルーマニアのチャウシェスク元大統領の末路を自分に重ね恐れているのではと専門家は指摘する。

一族で富と権力を独占し、スイスの銀行には560億円相当の金塊を預けていたというチャウシェスク。その壮絶な末路を明かそう。

100発以上撃たれて惨死

だが、専横の限りは突然幕を閉じる。’89年12月に反政府デモが発生すると、軍部も決起するルーマニア革命が勃発。わずか1週間で政権は倒れた。

チャウシェスク夫妻は逮捕され、6万人の集団虐殺と1400億円の不正蓄財により、すぐさま死刑判決が下る。兵士が後ろ手に縛ろうとすると、チャウシェスクは、

「私には自由に行動する権利がある」

と抵抗。さらに妻・エレナはこう喚き立てた。

「恥知らず、私はあなたたちを母のように育てた」

連行された二人には、3人の兵士により、100発以上の銃弾が撃ち込まれた。ただし、顔は狙いから外され、遺体の映像は即日、国営テレビで放送された。処刑前にエレナはこう叫んでいる。

「殺すなら、二人一緒に殺しなさい。一緒よ!」

最後に叶えられたのは、この願いだけだった。

エレナが最後に夫に話しかけた言葉は語り継がれている。

「私たちは殺されるの?私たちのルーマニアで?」

夫妻は自分たちが残酷な死を迎える理由を最後まで理解しておらず、24年間にわたって君臨し続けた独裁者の最期は実に惨めなものだった。

プーチンの絶望

「チャウシェスクは共産党体制の中でエリート意識を強くしながら上り詰めた。ところが、民主化を掲げる革命によって、自分が信じてきた社会主義が一気に崩壊する。彼が感じた絶望は相当のものだったでしょう」(国際政治学者・六辻彰二氏)

同じく20年以上も最高権力者の椅子に居座るプーチンが失脚した場合、彼とその愛人たちはどんな運命を辿るのか。

ロシア政治が専門の筑波学院大学教授・中村逸郎氏が語る。

「プーチンは身の危険を察知すれば、ウラル山脈の南側、マグニトゴルスクにある地下シェルターに逃げ込む可能性があります。ここはソ連時代に作られ、’02年頃にプーチンが大改造しています。そこに閉じこもるのではないでしょうか。落ちぶれた姿を他人に見せることはありえない。

あるいは海外に亡命するしかない。たとえば北朝鮮です。金正恩総書記は政権が発足した時に、ロシアに債務のほとんどを帳消しにしてもらった恩がありますから、受け入れざるをえません」

他に亡命先として考えられるのは、ロシアが主導するCSTO(集団安全保障条約)の加盟国であるアルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンだ。

「ただし、権力を失ったプーチンを匿うかどうかは分からない。独裁者・ルカシェンコ大統領が支配するベラルーシでひっそり暮らすしかないかもしれません」(国際ジャーナリスト・山田敏弘氏)

4月4日にロシアの独立系メディアは、プーチンが甲状腺がんに罹患しているのではないか、という疑惑を報じた。

憎悪の刃は愛人へ…

泥沼の戦争は、プーチンの焦りの現れなのか。だが、たとえプーチンの最期が病死だとしても、独裁者のバラまいた憎悪の刃は、残された愛人たちに向けられていく。

これまでプーチンは10人以上の女性との関係が取り沙汰されてきた。

「私が承知している範囲では、プーチンがお気に入りの写真家ヤナ・ラピコワ氏です。彼女は唯一プーチンのプライベートに入り込み、船上で上半身裸の写真まで撮っています。私生活を公に明かすことを嫌うプーチンがそれを許すというのは特別な間柄でしょう。

テレビ司会者のティナ・カンデラキ氏も、プーチン好みの知性溢れる女性で、クリミア併合やウクライナ侵攻に関して一貫して支持を表明しており、深い関係にある可能性は否めません」(中村氏)

他にも’20年に現地メディアが、プーチン氏の故郷、サンクトペテルブルク市で清掃員をしていたスヴェトラーナ・クリヴォノギフ氏との間に隠し子がいると伝えている。

そして、愛人疑惑が幾度も報じられているのが、アテネ五輪新体操の金メダリスト、アリーナ・カバエワ氏だ。

複数の海外メディアによれば、現在の彼女は父親不詳の4人の子供たちと一緒にスイスの豪華別荘でVIP生活を送っているという。だが、山田氏はこう明かす。

「プーチンの特権を利用してきたカバエワ氏が、ロシア国民から疎まれていることは事実です。今もオンライン上では彼女を強制送還させて、五輪メダルも剥奪しろという運動が起こっています。プーチンが失脚すれば当然、現在の優雅な生活は続かないでしょう。

一方で、すでにカバエワ氏はプーチンに呼び戻され、スイスから出国して、西シベリアのアルタイ山脈にある地下シェルターに身を隠しているという情報もあります」

地下シェルターでカバエワ氏とプーチンが合流することはありえる。

ヒトラー、ムッソリーニの最期 どこにも逃げ場所はない

独裁者が失墜した時、側にいるのは愛人だけ、という例は珍しくない。

ヒトラーが最期を一緒に迎えたのは、友人の写真家の助手を務めていた23歳年下のエヴァ・ブラウンだった。二人は13年以上にわたって秘密裡に愛人関係にあった。

’45年4月29日、ソ連軍によってベルリンが包囲される中、総統官邸地下壕で二人は結婚式を挙げて入籍する。

その翌日、エヴァは青酸カリのカプセルを噛み砕き、ヒトラーは拳銃で自分の頭を撃ち抜いた。遺体は側近によってガソリンで焼かれている。

「築き上げてきた理想が脆弱だったという現実を見せつけられ、絶望しながら自殺を選んだのでしょう」(六辻氏)

世界の独裁者の中で最も悲惨な形で人生を終えたのはイタリアのムッソリーニかもしれない。

’45年4月27日、逃亡途中にパルチザンに拘束されると、翌日に29歳年下の愛人、クラーラ・ペタッチと同時に機関銃で銃殺され、遺体はミラノの広場に並べられた。二人の遺体は群衆に踏みつけられた後、ガソリンスタンドの鉄骨に逆さ吊りにされ、丸半日も晒された。これは遠くからでも見えるようにするためだった。

ロシアは今、ウクライナの人々から「1000年は残る」ほどの強い恨みと憎しみを買いつつある。それを主導したプーチンと、愛人たちも残酷な運命を辿るのだろうか。

「プーチンは民主的な手続きを経ずに惨殺される可能性が高い。そして政治に関与していない愛人たちも歴史を振り返ると、残念ながら惨たらしい最期を迎えるのではないか。

どこに潜伏しても、ロシアの諜報機関から逃れることはできない。そして彼らは自分たちの手を汚すこともしない。反政府勢力やウクライナの過激派、西側諸国の諜報機関にプーチンの居場所の情報を流すだけで十分です」(山田氏)

野望が潰えた独裁者が、平穏無事な最期を迎えることだけは決してない。

『週刊現代』2022年4月16日号より