科学分野における中国の驚異 最先端技術分野の論文、量・質ともに世界一!?

中国の科学論文の数と質が、8つの分野で米国を超えた 科学・技術

科学分野における中国の驚異 最先端技術分野の論文、量・質ともに世界一!?(アレン琴子 THE OWNER 2022.04.16)

「中国の科学論文の数と質が、8つの分野で米国を超えた」という報告書が発表された。

ナノテクノロジーやコンピュータ・情報科学など5つの重要な科学分野においては、引用頻度が最も高い1%の論文数が米国の2倍を上回った。順位を上げただけではなく、量・質ともに米国を大きく引き離しており、「ノーベル賞水準」とも絶賛されているという。

中国圧巻! 生命科学と臨床医学は米国がリード

韓国科学技術情報研究院(KISTI)が4日に発表した報告書「グローバル米中科学技術競争地形図」は、科学分野を10のカテゴリーに分類し、2000~2019年の論文数を各分野の引用索引数上位1%の論文数と比較したものだ。引用索引(Citation Index)とは、他の論文での引用回数を示す指標で、論文の質の評価基準となる。

10の分野は、コンピュータ・情報科学、物理学・天文学、化学、生命科学、電気電子工学、機械工学、化学工学、材料工学、ナノテクノロジー、臨床医学で構成されている。

2017〜2019年にわたり引用された上位1%の論文数は、中国が8つの分野で米国を上回り、世界一となった。

引用索引数上位1%の論文の割合

朝鮮日報が指摘している通り、引用索引上位1%入りした中国の論文数は米国の2倍以上と圧巻だ。特に米国との格差が拡大しているのは、化学、電気電子工学、機械工学、化学工学など、人工知能(AI)、量子、半導体などのナノテクノロジーに関連する最先端技術分野である。生命科学と臨床医学のみが、米国に次いで2位だった。

20年前は全10分野を制覇していた米国 

近年の科学分野における中国の発展は、目を見張るものがある。

2000〜2002年の時点では、米国が全10分野で圧倒的な1位を誇っており、中国は5位に留まっていた。ところが2010〜2012年になると、中国が論文数と質の両方でそれぞれ2位と3位まで追い上げた。そして、2017〜2019年には10科学分野のうち8分野で、とうとう首位に立った。

OECD(経済協力開発機構)によると、中国は2017年に科学論文の数で米国を、2019年に欧州連合(EU)を追い抜いていた。2020年の時点で、年間66万本以上の論文を発表しており、論文数が世界の学術文献を占める割合は、中国が21.2%、米国が15.6%、EUが19.7%だった。

KISTIのグローバル研究開発分析センターのパク・ジンソ所長は、「10年以上前から、中国は米国にとって定量的な(=論文数)脅威だと一部ではいわれていたが、これからは米国も危機感を持つようになるだろう」と述べた。

中米のR&Dに見る「大きな相違点」

中国の目覚ましい進歩は、研究開発への巨額の投資に下支えされている。

米ハーバード・ケネディスクールのシンクタンク、ベルファーセンターの統計によると、20年前には米国の9分の1だった中国の年間研究開発投資額は、2020年には米国の9割強に値する5,800億ドル(約72兆1,171億円)に達した。

興味深いのは科学分野の研究開発(R&D)にあたり、両国の重点の置き方が大きく異なる点だ。米国が研究開発で基礎研究に巨額を投じているのに対し、中国は実験開発を重視している。

アメリカ国立科学財団(NSF)によると、2018年の米国の基礎研究費が同国の研究開発費に占める割合は17%(1010億ドル/約12兆5,583億円)だったが、中国では6%(260億ドル/約3兆2,327億円)だった。ところが実験開発となると、中国は83%、米国は64%と逆転した。つまり、中国の跳躍の要因の1つは、よりプラクティカルな開発にあると分析できる。

人材育成にも余念がない。米ジョージタウン大学のセキュリティ・新興技術センターの調査からは、中国における2000年の科学、技術、工学、数学の博士課程卒業生数が、米国の2倍以上に匹敵する1万8,289人だったことが明らかになっている。

米研究者「中国のトップ論文はノーベル賞受賞と同水準」

3月には米オハイオ州立大学も、「2019年の科学研究の上位1%において、中国が米国と同水準、あるいは上回っている」という調査結果を報告した。

研究者の1人である科学政策・研究開発投資の専門家、オハイオ州立大学ジョン・グレン公共問題学部のキャロライン・ワグナー教授は、中国の上位1%の論文について「科学の最先端であるノーベル賞受賞と同水準と見なされているほど、質が高い」と称賛した。

「多くの専門家は、中国の論文は質で米国に遅れをとっていると見なしていた。そのため西側諸国はたかをくくっていたが、我々はもはや両国間にギャップが存在するとは思わない」とし、科学分野における中国の脅威が、今後の米国における科学分野への投資に影響を与えると予想している。

集積回路や脳科学、極地探検などにも注力

2021年3月、中国は全国人民代表大会で、AI(人工知能)、量子、脳科学、遺伝子バイオテクノロジー、臨床医学、集積回路、深海、宇宙、極地探検を含む、7つのコア技術の開発に焦点を当てると発表した。元祖最先端技術国である米国、驚異的短期間で急成長を遂げた中国の両国の技術覇権競争はますます拡大していくだろう。

文・アレン琴子(英国在住のフリーライター)

英メディアや国際コンサル企業などの翻訳業務を経て、マネーライターに転身。欧州を基盤に、複数の金融・ビジネスメディアにて執筆活動中。国際経済・金融、FinTech、ビジネス、仮想通貨、行動経済学など、広範囲に渡る「お金の情報」にアンテナを張っている。