「プーチンと安倍晋三」蜜月を訴え過ぎた対露外交の深すぎる罪 ゼレンスキー大統領は、日本に向けて何を語るだろう FRIDAY DIGITAL 2022年03月22日
<ロシアは21日、日本との平和条約交渉を中断すると発表した。「責任は日本にある」という。岸田首相は、これに猛反発。強い抗議の姿勢を見せている。この「酷い戦争」を始めたプーチン大統領と、日本の安倍晋三元首相は、「ウラジーミル」「シンゾー」と呼び合う親密な仲だった。対露外交で「日本は何を間違えたのか」、今一度、検証する。>
ウラジーミルとシンゾーは「27回」何を話したのか
安倍元首相は自身の政権下で「11回」訪露し、プーチン大統領とは計「27回」の首脳会談を行っている。
「ロシアがウクライナ国境に軍隊を集結させていた昨年末から、安倍元首相に対し、この緊張時に政治的役割を果たすべきという期待がありました。が、何もできなかった。
やったことといえば、自身の派閥会合で、『岸田首相がプーチン大統領と会談することになる。日本の立場を説明し、この事態が平和裏に解決される努力をしなければならない』と、他人事のように注文するだけでした」(安倍周辺議員)
「今は首相ではないから関係ない」といわんばかりの対応に、党内でも失望が広がった。政権を去ったあとも世界平和に尽くすため、外交特使として老骨にむち打ったカーター元米大統領らとはほど遠い、日本の「有力政治家」の実情だ。
しかも、この安倍発言があった時点で、日露首脳電話会談はまだ「調整中」だった。つまり、公表前の「外交機密」を漏洩してしまった安倍元首相。顰蹙を買ったのはいうまでもない。自民党重鎮が、重い口を開いた。
「安倍元首相は、北方領土返還交渉にともなう平和条約の締結を目指していた。そのために、アベノミクスを駆使した経済協力で、せめて2島でも返還を成し遂げようという思いだったろう。
安倍は『東方経済フォーラム』に参加することになったが、その『成果』は北方4島での『イチゴ栽培』。安倍は、プーチンに踊らされただけなんです」
平和条約の交渉は「継続しない」ことが、21日に発表された。1991年から続く「北方領土へのビザなし渡航」も中止になる。
したたかなプーチン外交にいいように振り回された日本。つまり、ロシアのウクライナ侵攻に対し安倍元首相が「外交カード」として影響を発揮できるなど望むべくもない。
「外務省も岸田文雄首相もそれがわかっている。だから『安倍を特使としてモスクワに派遣』など微塵も考えていない」
と重鎮議員は付け加えた。
対露外交の総括が必要
すでに「過去の政治家」である安倍元首相だが…。
「2年後の総裁選に向けた野心があります。安倍元首相は政治の表舞台への復帰を狙っているんです」(自民党幹事長経験者)
次期政権に影響力を行使したい、というのが安倍元首相の願望であることは明らかだ。その政治的野心はとどまるところを知らない。しかし今、首相時代にプーチンと築いた蜜月の総括なしに前に進むことはできないはずだ。それは個人的な「関係」ではなく、国家としての「外交」なのだから。
「独裁者によるウクライナ侵略は、西側のリーダーたちの力不足を見せつけた。なかでも日本は、安倍政権時代の負の歴史が大きなダメージとなっています」(自民党議員)
ゼレンスキー大統領は、その演説のなかで「真珠湾攻撃」に触れた。日本の国会演説では何を訴えるだろうか。ロシアの独裁者と「極めて親しい」関係を築いてきた日本の姿勢が問われている。
*この記事は、2022年3月3日に公開した「ウクライナ侵攻で露呈『安倍政権の対露外交』の大き過ぎる罪」を再構成したものです。
取材・文:岩城周太郎写真:AFP/アフロ