ゼレンスキー大統領が日本の国会で演説「アジアで初めてロシアに対する圧力をかけ始めたのが日本。引き続き継続を」(全文、映像)

ゼレンスキー大統領、日本の国会でオンライン演説_3月23日 国際

ウクライナのゼレンスキー大統領、国会でオンライン演説

ゼレンスキー大統領が国会演説 ロシアに対する制裁継続求める(NHK 2022年3月23日 23時54分)

ウクライナのゼレンスキー大統領は、3月23日、衆議院第1議員会館にある国際会議室と多目的ホールでオンライン形式の演説を行った。

会場には岸田総理大臣や衆参両院の議長、ウクライナのコルスンスキー駐日大使のほか、各党の衆参の国会議員およそ500人が出席した。会場に設置された2台の大型スクリーンにゼレンスキー大統領の姿が映し出されると、出席者からは拍手が起こった。

ゼレンスキー大統領は、ウクライナの惨状を訴えたうえで「日本はアジアで初めて平和を取り戻すためロシアに圧力をかけてくれた」と述べ日本の対応を評価し、ロシアに対する制裁の継続を呼びかけた。

ロシアがウクライナの原発を攻撃したことについて、「ロシアはチェルノブイリ原発を戦場にしました。被害を調査するにはロシア軍が撤退してから何年もかかるでしょう」と述べた。

そして、「ウクライナではすでに数千人が犠牲になり、そのうち121人は子どもです」と述べ、多くの市民が命を落としているウクライナの惨状を理解してほしいと訴えた。

また、「ロシアがサリンなどの化学兵器を使った攻撃をする可能性があると警告を受けています。もしロシアが核兵器が使用した場合、どのような対応をすべきか世界の政治家たちが議論すべき大きな課題です」と述べ、ロシアが大量破壊兵器を使用することに強い危機感を示した。

ゼレンスキー大統領 演説 <全文>

「ウクライナへの侵略の津波を止めたい」 ゼレンスキー大統領が12分の演説で訴えたこと【全文】(AERA dot. 2022/03/23 20:12)

細田衆議院議長、山東参議院議長、岸田総理大臣、日本国会議員の皆様、日本国民の皆様。本日は私がウクライナ大統領として史上初めて、国家元首として直接皆様にお話できることを光栄に思います。

両国の間には、8193kmの距離があります。経路によっては、飛行機で15時間もかかります。ただし、お互いの自由への思いに差はありません。また、生きる意欲の気持ちにも差はありません。それを実感したのは、2月24日です。日本がすぐ援助の手を差し伸べてくれました。心から感謝しております。

ロシアがウクライナの平和を破壊し始めたとき、私たちは世の中の本当の様子を見ることができました。本当の反戦運動、本当の自由や平和への望み、本当の地球の安全への望み。

日本はアジアのリーダーになりました。皆様は、この苦しい大変な戦争を止めるために努力し始めました。日本はウクライナの平和の復活に動き始めました。それはウクライナだけではなく、ヨーロッパ、世界にとって重要なことです。この戦争が終わらない限り、平和がない限り、安全だと感じる人はいないでしょう。

皆様は、チェルノブイリ原発の事故をご存知だと思います。1986年に大きな事故がありました。放射能が放出し、世界各地域で(事故が)登録されました。原発周辺の「30キロゾーン」というのはいまだに危険な場所で、その森の土の中には、事故終息後から多くのがれき、機械、資材などが埋められました。

2月24日、その土の上にロシア軍の装甲車両が通りました。そして、放射性物質のダストを空気にあげました。チェルノブイリ原発が支配されたのです。

事故があった原発を想像してみてください。破壊された原子炉の上にある、現役の核物質処理場をロシアが戦場に変えました。また、ウクライナに対する攻撃準備のために、30キロメートルの閉鎖された区域を使っています。ウクライナでの戦争が終わってから、どれだけ大きな環境被害があったかを調査するのには何年もかかるでしょう。

皆様。ウクライナには現役の原子力発電所が4カ所、15の原子炉があり、すべて非常に危険な状況にあります。ザポリージャ原発というヨーロッパ最大の原発が攻撃を受けています。また、工業施設の多くが被害を受け、環境に対するリスクになっています。ガス、石油パイプライン、および炭鉱もそうです。

先日、スムイ州にある化学工場において、アンモニアの漏れが発生しました。シリアと同じように、サリンなどの化学兵器を使った攻撃をロシアが今準備しているという報告も受けています。また、核兵器を使用された場合、世界がどうなってしまうかが世界中の話題になっています。将来への自信、確信は今誰にも、どこにもないはずです。

ウクライナ軍は28日間にわたって、この大規模戦争、攻撃に対して国を守り続けています。最大の国がその戦争を起こしました。ただし、影響の面で、能力の面では大きくなく、道徳の面では最小の国です。

1000発以上のミサイルや多くの空爆が落とされ、また数十の街が破壊され、全焼されています。多くの街では、家族や隣の人が殺されたら、彼らをちゃんと葬ることさえできません。埋葬は家の庭や道路沿いでせざるを得ません。

数千人が殺され、そのうち121人は子どもです。多くのウクライナ人が住み慣れた家を出て、身を隠すために、命を救うために避難しています。ウクライナの北方、東方、南方の領土の人口が減り、人が避難しています。また、ロシアは海も封鎖して、数十の交易路を封鎖しています。海運を障害することによって、他の国にも脅威を与えるためです。

皆様。ウクライナ、そのパートナーおよび、反戦連立だけが世界の安全保障を出すことができます。すべての民族、国民にとって、社会の多様化を守り、それぞれの国境や安全を守り、子どもや孫のための将来を守るための努力が必要です。

国際機関は機能してくれませんでした。国連の安保理も機能しませんでした。改革が必要です。機能するためには、「誠実の注射」が必要です。ただ話し合うだけでなく、影響を与えるためです。

ロシアによるウクライナ侵攻によって、世界が不安定になっています。これからも多くの危機が待っています。世界市場も不安定で、資材の輸入などにも障害が出ています。環境面や食料面の調整も前例のないものです。

また、これからも戦争をしたいという侵略者に対して、非常に強い注意が必要です。「平和を壊してはいけない」という強いメッセージが必要です。責任のある国家が一緒になって、平和を守るために努力しなければならないです。

日本国が、建設的、原理的な立場をとっていただいていることをありがたく思います。また、ウクライナに対する本当の具体的な支援に感謝しています。アジアで初めてロシアに対する圧力をかけ始めたのは日本です。引き続き、その継続をお願いします。また、制裁の発動の継続をお願いします。

ロシアが平和を望む、探すための努力をしましょう。また、このウクライナに対する侵略の津波を止めるために、ロシアとの貿易禁止の導入をお願いします。また、各企業はウクライナ市場から撤退しなければならない状況です。その投資は、今後のロシア5年の投資になります。

そして、ウクライナの復興も考えなければなりません。人口が減った地域の復興を考えなければならないです。避難した人たちが故郷に戻れるようにしなければならないです。日本のみなさんも、きっとそういう気持ち、住み慣れた故郷に戻りたい気持ちがおわかりだと思います。

また、全世界が安全を保障するために動けるためのツールが必要です。既存の国際機関がそのために機能できていないので、新しい予防的なツールを作らなければなりません。本当に侵略を止められるようなツールです。日本のリーダーシップは、そういったツールの開発に大きな役割を果たせると思います。

ウクライナのため、世界のため。また、明日、将来のために自信を持てるように。慢性的で平和的な明日がくると確信できるように。皆様、日本の国民の皆様、一緒になって努力すれば、想像以上のことができます。

日本は、発展の歴史が著しい国です。調和を作り、その調和を維持する能力は素晴らしいです。また、環境を守り、文化を守るということは素晴らしいことです。ウクライナ人は日本の文化が大好きです。それはただの言葉ではなくて、本当にそう思っているのです。

2019年、私が大統領になってまもなく、妻のオレナが、目がよく見えない子どものためのプロジェクトに参加しました。オーディオブックのプロジェクトでした。そこで、日本の昔話をウクライナ語でオーディオブックにしました。これは一つの例ですが、日本の文化はウクライナ人にとって非常に興味深いものなのです。

距離があっても、私たちの価値観はとても共通しています。ということは、もう距離がないということになります。私たちの心は同じように温かいです。

今日の努力が、ロシアに対するさらなる圧力をかけることによって、平和を戻すことになります。また、ウクライナの復興を行い、国際機関の改革を行うことができるようになります。将来、反戦連立ができあがった際には、日本が今と同じようにウクライナと一緒にいてくれることを期待しています。(日本語で)ありがとう。ウクライナに栄光あれ、日本に栄光あれ。

ゼレンスキー大統領 各国での演説

ウクライナのゼレンスキー大統領は、これまでイギリスやアメリカなど各国の議会でオンラインで演説を行い、ウクライナ上空の飛行禁止区域の設定や防空システムの供与などさらなる軍事的支援を訴えてきた。

その際、各国の歴史に言及したり著名人のことばを引用したりするなどしていて、ウクライナが置かれた厳しい状況への共感を得ようという狙いもあると見られている。

イギリス

3月8日のイギリス議会でのオンライン演説では、まずイギリスの劇作家、シェークスピアの「ハムレット」の有名な一節を引用する形で、ウクライナの状況について「生きるべきか、死ぬべきか。返事は明らかに生きるべきだ」と強調した。

そのうえで第2次世界大戦中の1940年に当時のチャーチル首相が議会で行った演説になぞらえて「われわれは決して降伏せず、決して敗北しない。どんな犠牲を払おうとも海で戦い、空で戦い、国のために戦い続ける」と訴えた。

アメリカ

さらにアメリカ連邦議会で16日にオンライン演説を行った際には、人種差別の撤廃を訴えたキング牧師の「私には夢がある」という歴史的な演説の一節に触れ、「私には必要がある、それは、私たちの空を守ってくれること。あなた方の決意、あなた方の支援です」と述べ、ロシア軍機による攻撃から国土を防衛するため、ウクライナ上空に飛行禁止区域を設定することなどを求めた。

イスラエル

また20日のイスラエル議会の演説では、ロシアの軍事侵攻を第2次世界大戦中のナチス・ドイツによるユダヤ人の大量虐殺、ホロコーストになぞらえ、「ロシアはいまナチスと同じことをしようとしている」と非難した。

ドイツ

17日のドイツの連邦議会では「ヨーロッパには、ベルリンの壁ではない、自由と不自由を分かつ壁があり、われわれは隔てられている。私たちを助けるはずの平和のための決断がなされないたびに、この壁は大きくなっている」と訴えた。