露の侵略構図が鮮明に 親露派独立承認

緊迫化するウクライナ情勢、いま何が起こっているのか。 国際

露の侵略構図が鮮明に 親露派独立承認(産経新聞 2022/2/22 21:28)

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国際社会が懸念してきたロシアのウクライナ侵攻は、プーチン露政権による親露派地域の独立承認と派兵という形で現実のものとなる。プーチン政権は2014年以降、ウクライナ東部紛争で親露派武装勢力を軍事支援してきたが、今後は露正規軍が直接介入する。ロシアがウクライナを侵略し、武力で欧州の国境線を変更する構図が鮮明になった。

東部紛争の端緒は14年2月、親露派のヤヌコビッチ政権が大規模デモを受けて崩壊したことだ。プーチン政権は憤激し、ロシア系住民が6割超を占めるウクライナ南部クリミア半島を併合した。さらに情報・特務機関を駆使して東部の各地で攪乱工作を行った。

「キエフではファシストが政権に就いた。ロシア系住民には身の危険が迫っている」という壮大なプロパガンダ(政治宣伝)に基づく工作だった。

多くの地域でそれは失敗したが、ドネツク、ルガンスク両州では親露派が行政庁舎などの中枢施設を占拠し、政府軍との大規模戦闘となった。親露派は当初、小銃などの軽火器しか持っていなかったが、装備や兵器は短期間に変貌した。

14年7月には紛争地域上空でマレーシア機が撃墜され、乗客乗員298人が死亡。オランダを中心とする国際合同捜査チームはロシア軍の地対空ミサイル「ブク」が使われたと特定し、19年6月にロシア人ら4人を殺人罪で起訴している。

大規模戦闘は15年2月の和平合意(ミンスク合意)で収まったが、その後も衝突は続き、1万4千人以上が犠牲になった。ロシア兵の死傷者も明るみに出てきたが、ロシアは彼らを「除隊者」「休暇中の兵士」などと糊塗した。

ミンスク合意は、①親露派支配地域に広範な自治権を与える②ウクライナによる東部国境の管理を回復する-を2本柱とした。しかし、ロシアが前者を、ウクライナが後者を優先する立場をとり、履行は行き詰まった。ロシアには、ウクライナを「連邦国家」に改変し、東部を足がかりにしてウクライナが欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)に接近するのを阻止する思惑があった。

ミンスク合意の履行が袋小路に陥ったのを受けて19年4月、プーチン政権は親露派地域の住民に簡素な手続きで国籍を付与し始めた。これまでに70万人以上が露国籍を取得し、ロシアが今回の独立承認で「自国民保護」を口実とする下地がつくられた。

ロシアが独立を承認した2地域の「国境線」がどう規定されるのかは判然としない。ロシア軍が今後、境界を画定させるといった名目で親露派支配地域の外への侵攻を想定している可能性もある。