「タカをくくってはならない」オミクロン株 専門家警鐘 重症化率低くても医療逼迫の懸念(東京新聞 2022年1月10日 06時00分)
新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」が加速度的に広がり、感染拡大の第6波に突入したとみられる。オミクロン株の重症化率はデルタ株に比べて低いとされるが、感染者が増え続ければ、医療の逼迫ひっぱくは起き得る。専門家は「タカをくくってはならない」と警鐘を鳴らす。
感染力はデルタ株の2~4倍か
昨夏の第5波で猛威を振るったデルタ株は、急速にオミクロン株に置き換わっている。東京都によると、6日までの1週間では、感染者の約7割がオミクロン株だったと推計される。
デルタ株の場合、最初に感染が確認されてから7割に達するまで2カ月半かかったが、オミクロン株は1カ月弱で到達した。その感染力はデルタ株の2~4倍とされる。
軽症でも入院者は増える可能性大
一方、重症化率については希望的な観測が広がる。政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は7日、「国内のデータが今1番多い」として沖縄県の状況に注目。厚生労働省に助言する専門家組織「アドバイザリーボード」に提出された資料では、沖縄でオミクロン株に感染し、療養中の675人のうち、無症状・軽症は92.3%と大半を占め、気管挿管を必要とする重症者はいなかった。
それでも、専門家組織の座長、脇田隆字・国立感染症研究所長は「デルタ株と比較し、重症化しにくい可能性が示唆される」との表現にとどめる。理由は沖縄の療養者の年齢構成だ。全体の6割が重症化リスクが低い20代以下の若者だった。
また、沖縄の感染者50人の調査では、完全な無症状は4%にとどまり、72%は発熱、6%は呼吸困難の症状があった。たとえ軽症でも入院者数は増える可能性が高い。さらに、重症化しやすい高齢者やワクチン未接種者に感染が広がれば、ベッドの確保は容易でなくなる。
1日の新規感染、5万人の可能性も
「ただの風邪に成り下がったとタカをくくり、英国のように経済を回すため感染者を野放しに増やしては失敗する」。二木芳人・昭和大客員教授(臨床感染症学)はそう警告する。
デルタ株による第5波のピークで、全国の1日の新規感染者は約2万6000人。二木氏は「今度は5万人はいく可能性がある」とし、「入院率がデルタ株の半分でも、感染力が2倍なら前回と同じく医療は逼迫し、自宅療養者が増え、高齢者を中心に死者が出る」と指摘する。
分科会と専門家組織のメンバーを兼ねる岡部信彦・川崎市健康安全研究所長は「オミクロン株の重症化率の低さは、いい材料として安心していい」と話す。ただ「若者でも症状が出て、学校、会社を休めば病院やインフラが機能しなくなり社会問題が起きる。個々の症状が軽くても集団として感染を抑えないといけない」としている。