地熱発電とは? 仕組み・メリット・デメリット(EnergyShift 2021/03/02)より抜粋
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地熱発電とは
地熱発電は、マグマにより生じた高温の蒸気を利用し、タービンを回転させて電気を作る発電方式です。地熱発電の歴史は意外にも長く、1904年にイタリアで地熱発電実験が成功したところから始まります。日本では1919年に掘削が初めて成功し、1966年に日本初となる地熱発電所の運転が開始されました。
1996年には国内の地熱発電設備が50万kWに到達し、世界有数の地熱発電技術を持った国になりました。以降、地熱発電の発展は落ち着きを見せていましたが、東日本大震災をきっかけとして再生可能エネルギーに注目が集まり、安定的な発電を強みとする地熱発電に期待が寄せられています。
地熱発電による発電の仕組み
地熱発電に利用する高温の蒸気は、降雨により地面に浸透した水が地下のマグマに熱されることで発生します。地下1,000~3,000メートル付近に位置する、蒸気や熱水が溜まっている場所は「地熱貯留層」と呼ばれており、地熱発電では地熱貯留層まで井戸(生産井)を掘り、蒸気と熱水をくみ上げています。
くみ上げられた蒸気や熱水は気水分離器により分けられ、蒸気はタービンを回すために利用し、熱水は還元井から地中に戻されます。タービンを回すために利用された蒸気は冷却されたのち、蒸気の凝縮に使われる冷却水として再び活用される仕組みです。以上が基本的な仕組みですが、地熱発電の方式は以下の2つに大別されます。
◯ フラッシュ方式・・
地熱貯留層から取り出した約 200~350℃の蒸気を使い、タービンを回して発電します。
◯ バイナリー方式・・
80~150℃程度の蒸気や中高温熱水を利用し、沸点の低い媒体を蒸発させてタービンを回転させます。タービンを回すために蒸発させた低沸点媒体は、凝縮器によって液化されて再利用される仕組みです。低沸点媒体として使われる媒体には、100℃以下で沸騰する炭化水素・代替フロン・アンモニアなどの液体が用いられます。
地熱発電のメリット
ここでは4つの観点から、地熱発電のメリットについてご説明します。
二酸化炭素をほとんど排出しない
あらゆる発電方式のなかでも、地熱発電は特に二酸化炭素の排出量が少ない傾向にあります。
地熱発電のライフサイクルCO2は、1kWhあたり13グラムとなっており、他の再生可能エネルギーと比べて低い水準にあることが分かります。二酸化炭素の排出量削減は地球温暖化の防止につながり、ひいては生態系の崩壊や異常気象の抑制につながるため、環境保全の観点で優れた発電方式だといえます。
エネルギー源が枯渇する心配がない
地熱発電は、地中深くにあるマグマにより生じた熱をエネルギー源とするため、エネルギーが枯渇することはありません。火力発電に使われる化石燃料や、原子力発電に使われるウランのように、限りある資源を利用するわけではないため、半永久的に発電できる点はメリットです。
発電量が天候・季節に左右されない
地熱資源は安定して取り出すことが可能であり、地熱発電の発電量は天候・季節に左右されません。発電量を日射量に依存する太陽光発電や、風量に左右される風力発電と比べたとき、安定した稼働率を維持できます。
日本は豊富な地熱資源を有している
日本は石炭や石油、天然ガスの大部分を輸入に頼っており、エネルギー自給率が低いことで知られています。ただし、発電に利用可能な資源がまったくないわけではありません。
前述の通り、日本は環太平洋造山帯に位置しており、世界で3番目に多くの地熱資源を有しているのです。地熱資源を最大限活用できていないのが現状ですが、地熱発電は潜在的な可能性を持っている発電方式だといえます。
地熱発電のデメリット
一見すると多くの利点を持っている地熱発電には、どのようなデメリットがあるのか4つの観点からご説明します。
発電効率が20%と比較的低い
地熱発電は発電効率が10~20%程度です。この数値は太陽光発電や木質バイオマス発電と同程度であり、発電効率が80%程度の水力発電や、発電効率が20~40%ある風力発電に比べて劣ります。
調査精度が低く開発リスクは高い
地熱資源は地下深くにあり、高精度な調査が困難です。そのため、井戸を掘削する位置の選定が難しく、開発後にも想定通りの蒸気を確保できないなどのリスクが存在します。
資源エネルギー庁が公開する「地熱資源開発の現状について」によると、開発の初期段階における掘削の成功率は3割程度。太陽光発電や風力発電を始めとする、他の再生可能エネルギーに比べて不確実性が大きく、開発にリスクを伴う点は地熱発電のデメリットです。
建設コストが高く費用対効果に課題あり
地熱発電は開発段階で複数の井戸を掘削しなければならず、掘削にかかるコストは1本につき数億円にのぼります。井戸の掘削費用は、地熱発電の開発費用における約3割を占めており、前述した掘削成功率を考えると成果に対して非常に高コストです。
また、すでに送電線がある街中ではなく山間部に建設される都合上、送電線の建設にも大きなコストがかかります。試算では、3万kWの地熱発電所であれば調査・開発に約73億円、地上設備の建設に約183億円がかかる見込みです。開発期間も10年以上を要するため、費用や時間の面で多大な負担が発生するデメリットがあります。
発電に適した場所は国立公園や温泉地が多い
地熱資源のある場所の多くが、開発に制限がある国立公園であったり、景観を損ねると来客減少が懸念される温泉地であったりします。「NEDO 再生可能エネルギー技術白書 第2版」で取り上げられた課題のなかにも、日本における150℃以上の地熱資源のうち約80%強が、開発を実施できない国立公園の特別保護地区・特別地域にあることが挙げられました。
以上のように、開発に適した場所であるにもかかわらず、開発に制限が課せられるケースが多いことは地熱発電における導入拡大の足かせとなっています。
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