天皇陛下が名誉総裁を務める東京五輪・パラリンピックについて、宮内庁の西村泰彦長官は24日の定例会見で、陛下が新型コロナウイルスの感染状況を心配しているとし、「開催が感染拡大につながらないか、ご懸念されていると拝察している」と述べた。
五輪の開会式が近づく中での考えを問われ、そう言及した。西村長官は「私が肌感覚として受け止めているということ」とし、「直接そういうお言葉を聞いたことはない」と説明した。
また、西村長官は「陛下が名誉総裁をお務めになる五輪・パラリンピックで、感染が拡大するような事態にならないよう感染防止に万全を期していただきたい」とも述べた。
宮内庁の西村泰彦長官の会見要旨
宮内庁の西村泰彦長官と宮内記者会の会見でのやりとりの要旨は次の通り。
(質問)オリンピックの開会式が近づいてきたが、関係機関との調整状況など、長官のお考えを
(長官)調整中でこの場でご紹介できるような状況ではございません。ただオリンピックを巡る情勢としまして、天皇陛下は現下の新型コロナウイルス感染症の感染状況を大変ご心配しておられます。国民の間に不安の声がある中で、ご自身が名誉総裁をお務めになるオリンピック・パラリンピックの開催が感染拡大につながらないか、ご懸念されている、ご心配であると拝察しています。私としましては、陛下が名誉総裁をお務めになるオリンピック・パラリンピックで、感染が拡大するような事態にならないよう組織委員会をはじめ関係機関が連携して感染防止に万全を期していただきたい、そのように考えています
(質問)ワクチン接種、陛下は。
(長官)この場ではご紹介できるような事態になっていません。
(質問)五輪について開会宣言する場合、その文言はオリンピック憲章で決まっていて、祝うという文言が入ることになる。中止論もある中で、陛下が大会開催を祝福するような文言を述べるのはどうか。
(長官)ご指摘の通り、IOCのプロトコルで決まっていますので宮内庁として意見申し上げることは控えたいと思いますが、オリンピックを巡る情勢は先ほど申し上げたとおりで、私としては感染防止に徹底を尽くしていただきたいということに尽きます。
(質問)宮内庁として、文言の変更を申し出るような考えは。
(長官)今のところはありません。
(質問)陛下が五輪が感染拡大のきっかけになるのを懸念されているというのは長官の拝察ということか。
(長官)拝察です。日々陛下とお接しする中で私が肌感覚として受け止めているということです。
(質問)仮に拝察でも長官の発言としてオンだから、報道されれば影響あると思うが、発信していいのか。
(長官)はい。オンだと認識しています。私はそう拝察し、感染防止のための対策を関係機関が徹底してもらいたいとセットで。
(質問)これは陛下のお気持ちと、受け止めて間違いない
(長官)私の受けとりかたですから。陛下はそうお考えではないかと、私は思っています。ただ陛下から直接そういうお言葉を聞いたことはありません。そこは誤解ないようにお願いします。
【以上 出典・抜粋】陛下は開催で感染拡大しないか懸念と拝察」宮内庁長官(朝日新聞デジタル 2021年6月24日 18時35分)
政府の受け止めは?
この宮内庁長官の異例の発言について、スタジオでフジテレビ社会部 宮内庁担当の宮崎千歳記者に聞いた。
加藤綾子キャスター:
このメッセージを政府はどう受け取るのでしょうか?
ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
記者会見の席で、記者の方から「これが出てしまったら影響が大きいのではないか」と確認していますよね。それでも構いませんと意思表示されているということは、陛下のお気持ちが強いということを長官は受け止めていると思うんです。そうであるとすれば、なぜこの時期に長官からこのような発言があったのか、それは一体なぜなのかということを我々はしっかりと受け止める必要があるような気がします。
社会部 宮内庁担当 宮﨑千歳記者:
陛下が心配されていることも受け止めながら、感染防止を徹底していくべきではないかという、その不安に寄り添うような部分だったと思います。名誉総裁というお立場ですけれども、開催の有無云々については、陛下は関与するお立場ではないですし、それは宮内庁も同様ですので、そこは確認しておくといいかなと思います。
加藤官房長官の記者会見
宮内庁長官の会見を受け、加藤官房長官が会見を行った。記者から長官の会見での発言について問われると、次のように述べた。
加藤官房長官:
やりとりは承知しているが、宮内庁長官ご自身の考え方を述べられたと承知している。詳しくは宮内庁に。引き続き関係者と連携して安全安心を最優先に開催したい。
ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
逃げているような印象ですね。あくまでも長官の個人的な受け止め方、という枠の中に収めたいという思いがにじみ出ている
【以上 出典・抜粋】「五輪で感染拡大を懸念と拝察」天皇陛下の“受け止め”に言及…宮内庁長官 異例の発言の真意は?担当記者が解説(FNNプライムオンライン イット! 2021年6月24日 木曜 午後6:08)
米ワシントン・ポスト「東京五輪は天皇の不信任決議を受けた」
宮内庁の西村長官は24日の記者会見で「天皇陛下は現下の新型コロナウイルスの感染状況を大変ご心配されておられる」とした上で、「オリンピック・パラリンピックの開催が感染拡大に繋がらないか、ご懸念されていると拝察する」などと述べました。
これについて、有力紙ワシントン・ポストは25日、「東京オリンピックは天皇の不信任決議を受けた」というタイトルで報道。「天皇がこのような重要で物議を醸す話題について発言することは珍しく、天皇の見解は重みを持つ」と伝えています。
一方、「天皇は、東京オリンピック・パラリンピックの名誉総裁であり、日本で広く尊敬されているが政治的権力は持っていない」とした上で、「天皇の警告は、日本政府とIOCを困惑させるものだが、主催者の気持ちを変えるには遅すぎた」とも指摘しています。
【以上 出典・抜粋】天皇陛下の五輪“懸念”めぐり 米紙「重大な不信任決議」(TBSニュース 2021年6月25日 8時59分)
The Washington Post ”Palace: Japan emperor ‘worried’ about Olympics amid pandemic”
Olympics
Palace: Japan emperor ‘worried’ about Olympics amid pandemic
By Mari Yamaguchi | AP
June 24, 2021 at 10:00 p.m. GMT+9
TOKYO — Japan’s Emperor Naruhito is “extremely worried” that the Tokyo Olympics and Paralympics could accelerate the spread of the coronavirus, the head of the Imperial Palace said Thursday with the games opening in one month.
The games will bring thousands of foreign athletes, officials, sponsors and journalists to Japan during a pandemic, despite caution raised by experts about the risk of infections and the public’s persistent calls for cancellation or further postponement.
Yasuhiko Nishimura, grand steward of the Imperial Household Agency, told a news conference that the Emperor has voiced concerns.
“His majesty is extremely worried about the current situation of the COVID-19 infections,” Nishimura said. “While there are voices of unease among the public, I believe (the emperor) is concerned that holding the Olympics and Paralympics … may lead to the expansion of the infections.”
The delayed games open July 23, and the Paralympics begin a month later.
Nishimura also urged the organizers to “take every possible anti-virus measures so as not to cause the spread of the infections at the Olympics and Paralympics, where the emperor serves the Honorary Patron.”
The emperor is the symbol of the state with no political power. But like his father, Naruhito has gained broad popularity and his words are highly respected.
Prime Minister Yoshihide Suga is determined to hold the Olympics despite concerns from the public and public health experts.
Adding to their concern, officials in Izumisano, a western Japan town hosting the nine-member Ugandan Olympic team for training, said a second member of the team tested positive for the virus. The first, reportedly a coach, was detected upon arrival Saturday in Tokyo. The rest of the team have been isolating at an Osaka hotel.
Suga eased a third state of emergency in Tokyo that had been in place since late April and switched to less-stringent measures focusing on shorter bar and restaurant hours. But experts said Wednesday that infections are already bouncing back in the Tokyo region and could accelerate in coming weeks.
Chief Cabinet Secretary Katsunobu Kato, downplaying the impact of emperor’s concern, said he believed the grand steward expressed “his personal views.”
Naruhito, 61, also expressed his concern about the pandemic in his speech at an academic award ceremony Monday: “In order to overcome this challenge, it is important for all of us, in and outside of Japan, to bring our hearts together and cooperate.”
Under the plan before a one-year postponement, Naruhito was scheduled to declare the start of the Olympics at the opening ceremony, but details, including his presence at the games, are yet to be finalized, palace officials said.
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