山上徹也被告は「単独犯」ではない…!『安倍元首相殺害事件の真相を究明する会』の専門家集団が提示した「3つの根拠」(現代ビジネス編集部 2025.10.30)
弁護士、医学博士らが「山上被告は単独犯ではない」と指摘…!事件の瞬間、「安倍晋三元首相のマイク」に残されていた「重要証拠」(現代ビジネス編集部 2025.10.30)
日本中を震撼させた、あの凶行から3年3ヵ月――。
2022年7月8日、奈良市で街頭演説中の安倍晋三元首相(享年67)が銃撃され死亡した事件。殺人などの罪で起訴された山上徹也被告(45歳)の裁判員裁判の初公判が、10月28日に奈良地裁で開かれた。事件は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への恨みを募らせた山上被告による単独犯行とされ、裁判もその前提で進められていく。
だが、この「定説」に疑問を呈する人々がいる。初公判の前日となる10月27日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いたのは、『安倍元首相殺害事件の真相を究明する会』。彼らが指摘した、歴史的事件の“疑問点”とは――。
弁護士、医学博士、警察関係者らで構成
「この事件の公判は、日程から判決日まで、すべて決まっているかのような異例の進め方です。我々はこれを“出来レース”だと見ています。刑事裁判の本来の目的である『実体的真実の解明』がないがしろにされているのではないかと、強い懸念を抱いています」
会見の冒頭、マイクを握った会長の南出喜久治弁護士は、そう言って司法のあり方そのものに静かに疑問を呈した。
この『真相を究明する会』をいわゆる“陰謀論者の集まり”と思う人もいるかもしれないが、同会は専門的な知見を持つメンバーで構成されている。会長の南出弁護士をはじめ、取りまとめ役を務める元TBSワシントン支局長の山口敬之氏、さらに医師、医学博士、警察関係者、元国会議員といった各分野の専門家が名を連ねているのだ。
彼らは事件後、科学的、医学的、法律的なアプローチで地道な検証を続けてきたという。
「もともと、山上被告の単独犯行という説には、多くの医療関係者や警察関係者から疑念の声が上がっていました。我々はそうした専門家たちと連携し、6つの分科会を設けて多角的に分析を進めてきました。そして今日、その一端を公表します」(山口氏)
会見で示された「山上被告の単独犯ではない」とする“根拠”は、大きく3つあった。
【根拠①】山上家と教団は「和解済み」だった
まず、南出弁護士が言及したのは「合意書」の存在だった_。
「平成21(2009)年5月22日に、山上家と旧統一教会の間で合意書が交わされています。内容は、教会側が山上家に5000万円を返金することで円満に和解するというもので、平成26(2014)年10月までには全額が完済されていました。そして、金銭問題が完全に解決してから約8年後に、この事件は起きているのです。この書類には山上徹也被告自身の署名・押印もあります」
これまで、山上被告の動機は「母親の多額献金によって家庭が崩壊させられたことへの積年の恨み」とされてきた。だが、事件の何年も前に、本人も納得の上で金銭的な和解が成立していたとすれば、その動機付けに大きな影響を与える可能性がある。
「8年も経って、一度は和解したはずの恨みが、再び殺意にまで増幅するものでしょうか。人間の心理として、不自然な点があります。百歩譲って、その恨みが消えていなかったとしても、なぜその矛先が教会の幹部ではなく、安倍元首相に向けられたのか。しかも、単なる抗議行動ではなく、殺害にまで及ぶほどの動機が、この和解の事実を踏まえて存在したのか。検察と弁護士はこの事実をどう説明するのでしょうか」(南出弁護士)
【根拠②】現場にいた地方議員の“証言”
次に山口氏が語ったのは、安倍元首相の「死因」に関する指摘だった。警察の公式発表では、死因は「左上腕部から侵入した銃弾が右鎖骨下動脈を損傷したことによる失血死」とされている。しかし、山口氏らはこれに重大な疑義があると主張する。
「キーワードは『死戦期呼吸(しせんきこきゅう)』です。これは心臓が停止した直後の人が、最後の反射的な動きとして、まるで息をしているかのように『ぜえぜえ』と喘ぐ現象を指します。肺に残った空気が漏れ出ることで起こるもので、酸素を取り込んで生命を維持する生物学的な呼吸とは全く異なります」
山口氏によると、銃撃直後、崩れ落ちる安倍元首相を後ろから支えた人物がいるという。奈良県のある地方議員だ。
「私たちはその議員に直接話を聞きました。彼は安倍さんを腕に抱えた時、まさにその『ぜえぜえ』という死戦期呼吸の音を40秒ほど聞いた後、反応がなくなったと証言しています。これは、銃撃を受けて心臓が即座に停止、つまり“即死”していたことを示唆する重要な証言です。警察の発表通り、(心臓に近い極めて太い血管である)鎖骨下動脈が断裂していたのであれば、心臓はまだ動いているのですから、死戦期呼吸が起きるはずはない。また、即死だったからこそ、現場にはほとんど血液が流れていなかったという見方もできます」
さらに、この重要証人である地方議員に対し、奈良県警は一度も事情聴取を行っていないと、『真相を究明する会』は主張する。
【根拠③】録音されなかった“金属音”の謎
3つめの根拠は「音」。安倍元首相の国葬で祭壇に供えられ、多くの人が目にした粉々の議員バッジ。警察は、これが山上被告の銃弾によって粉砕されたものだと説明している。
「鉄の弾が金属のバッジに当たれば、高い金属音が鳴るはずです。当時、安倍さんはワイヤレスマイクを手に持っていました。バッジとの距離はわずか10cmほど。このマイクは、安倍さんが倒れた際にガサッという音を拾っており、狙撃の瞬間まで正常に作動していたことがわかっています」
山口氏は「あれだけ近い距離のマイクが、金属音を拾っていないはずがない」と指摘。録音されていないのは極めて不自然だと語った。
「真犯人は誰か」には踏み込まない理由
会見で提示された、動機、死因、物証という3つの“根拠”。『真相を究明する会』の主張どおりだとすれば、一体誰が安倍元首相を殺害したというのか。記者から「真犯人についての見解は」との質問が飛んだが、山口氏は次のように答えた。
「我々の目的はまず、『山上徹也被告の単独犯行ということで裁判が進んでしまっているが、それだけは絶対に違う』という一点を明確にすることです。ここから『では真犯人は誰か』という話に進むと、私たちの科学的な検証自体が“陰謀論”というレッテルを貼られ、色眼鏡で見られてしまうことを危惧しています。ですから、この会はあくまで『山上単独犯ではない』という一点に絞って活動する会だと、今のところ理解ください」
会は今後も、公判の進行に合わせて定期的に会見を開き、検証結果を公表していくとしている。山口氏は「次回以降の会見でも、新たな証拠や分析データも提示したい」と明言しており、法廷の外から継続的に問題提起を行う構えだ。
彼らが示す数々の疑問点は公判に影響するのか。その動向が注目される。

