日米両政府は3月16日、外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を東京都内で開いた。日本側からは、茂木敏充外務大臣及び岸信夫防衛大臣が、米側からは、アントニー・ブリンケン国務長官及びロイド・オースティン国防長官がそれぞれ出席した。
会談は約1時間半行われ、会談後に発表した共同文書で、中国を名指しして「既存の国際秩序と合致しない行動は日米同盟、国際社会に課題を提起している」と批判。中国海警法に対しては「深刻な懸念」を表明した。
総 論
四閣僚は、日米同盟がインド太平洋地域の平和、安全及び繁栄の礎であり続けることを確認した上で、両国の日米同盟への揺るぎないコミットメントを新たにした。また、拡大する地政学的な競争や新型コロナウイルス、気候変動、民主主義の再活性化といった課題の中で、四閣僚は、自由で開かれたインド太平洋とルールに基づく国際秩序を推進していくことで一致した。
四閣僚は、厳しい安全保障環境を踏まえ、日米同盟の抑止力・対処力の強化に向けた連携をより一層深めることで一致した。また、日本は、国防及び同盟の強化に向け、自らの能力を向上させる決意を表明し、米国は、核を含むあらゆる種類の米国の能力による日本の防衛に対する揺るぎないコミットメントを強調した。
四閣僚は、「2+2」の議論や共同発表を踏まえ、同盟の強化に向けた具体的な作業を進めることを担当部局に指示した。また、その成果を確認するべく、年内に日米安全保障協議委員会を改めて開催することで一致した。
地域の安全保障環境
四閣僚は、地域の安全保障環境について率直な意見交換を行い、認識のすりあわせを行った。
1.四閣僚は、中国による、既存の国際秩序と合致しない行動は、日米同盟及び国際社会に対する政治的、経済的、軍事的及び技術的な課題を提起しているとの認識で一致した。また、ルールに基づく国際体制を損なう、地域の他者に対する威圧や安定を損なう行動に反対することを確認した。
2. 四閣僚は、東シナ海及び南シナ海を含め、現状変更を試みるいかなる一方的な行動にも反対するとともに、中国による海警法に関する深刻な懸念を表明した。また、日本側から、日本の領土をあらゆる手段で守る決意を表明した。四閣僚は、尖閣諸島に対する日米安保条約第5条の適用を再確認するとともに、同諸島に対する日本の施政を損なおうとする一方的な行動に引き続き反対することを確認した。
3.四閣僚は、南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対を改めて表明した。
4.四閣僚は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。また、香港及び新疆ウイグル自治区の人権状況について深刻な懸念を共有した。
5.四閣僚は、北朝鮮の完全な非核化の実現に向けて、国連安保理決議の完全な履行の重要性を確認し、日米及び日米韓3か国で引き続き協力していくことで一致した。また、拉致問題の即時解決の必要性についても確認した。
6.四閣僚は、日米豪印を通じた協力を確認した。また、ASEANの中心性及び一体性並びに「インド太平洋に関するASEANアウトルック」への強固な支持を確認しつつ、ASEANと協働することを誓約した。
安全保障・防衛協力の強化
四閣僚は、一層深刻化する地域の安全保障環境を認識した上で、役割・任務・能力に関する協議を通じ、日米同盟の抑止力・対処力の強化に向けた連携をより深めることで一致した。
1.四閣僚は、米国で各種政策レビューが行われる中、日米の戦略・政策を緊密にすり合わせていくことで一致した。
2.四閣僚は、全ての領域を横断する防衛協力を深化させ、拡大抑止を強化することで一致した。また、宇宙及びサイバーに関する協力の重要性並びに情報保全を更に強化していくことを強調した。
3.四閣僚は、同盟の運用の即応性・抑止態勢を維持し、将来的な課題に対処するため、実践的な二国間及び多国間の演習及び訓練の必要性を改めて表明した。
戦力態勢及び在日米軍
四閣僚は、日米同盟の抑止力を維持しつつ、沖縄を始めとする地元の負担軽減を図る観点から、在日米軍再編を着実に推進することで一致した。
1.四閣僚は、米軍再編の取組に係る進展を歓迎するとともに、地元への影響を軽減しつつ、運用の即応性及び持続可能なプレゼンスを維持できるように現在の取決めを実施していくことに対するコミットメントを再確認した。
2.四閣僚は、普天間飛行場代替施設をキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に建設する計画が、普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であり、早期完了に取り組むことを再確認した。
3.四閣僚は、在日米軍駐留経費負担につき、現行の特別協定を1年延長する改正に合意したことを受け、双方の交渉官に、双方が裨益する新たな複数年度の合意に向けて取り組むことを指示した。
4.日本側から、米軍再編を着実に進める重要性を強調し、在日米軍の地元への影響に最大限配慮した安全な運用や事件・事故での円滑な対応等について要請した。
5.日本側から、東日本大震災における米側の支援に対して改めて謝意を表した上で、四閣僚は、犠牲者を追悼し、日米同盟の協力の精神を再確認した。
日米安全保障協議委員会(2+2)共同発表 【仮訳】
2021年3月16日、東京において、茂木外務大臣、岸防衛大臣、ブリンケン国務長官及びオースティン国防長官は、日米安全保障協議委員会を開催した。
閣僚は、日米同盟が、インド太平洋地域の平和、安全及び繁栄の礎であり続けることを再確認した。日本は国家の防衛を強固なものとし、日米同盟を更に強化するために能力を向上させることを決意した。米国は、核を含むあらゆる種類の米国の能力による日本の防衛に対する揺るぎないコミットメントを強調した。
拡大する地政学的な競争や新型コロナウイルス、気候変動、民主主義の再活性化といった課題の中で、日米は、自由で開かれたインド太平洋とルールに基づく国際秩序を推進していくことへのコミットメントを新たにした。
日米は、中国による、既存の国際秩序と合致しない行動は、日米同盟及び国際社会に対する政治的、経済的、軍事的及び技術的な課題を提起していることを認識した。
閣僚は、ルールに基づく国際体制を損なう、地域の他者に対する威圧や安定を損なう行動に反対することを確認した。
閣僚は、自由かつ適法な通商への支持、航行及び上空飛行の自由並びにその他の適法な海洋の利用を含む国際法の尊重を再確認した。
閣僚はまた、中国海警法等の最近の地域における混乱を招く動きについて深刻な懸念を表明した。
さらに、閣僚は、日米安全保障条約第5条の下での尖閣諸島を含む日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントについて議論した。
日米は、現状変更を試みる、あるいは、尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとする、いかなる一方的な行動にも引き続き反対する。
閣僚は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。
閣僚は、南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対を改めて表明し、1982年の国連海洋法条約の下で設置されたフィリピンと中国との間の仲裁裁判所の2016年7月の判断が最終的であり、当事国を法的に拘束することを想起した。
閣僚は、香港及び新疆ウイグル自治区の人権状況について深刻な懸念を共有した。
閣僚は、北朝鮮の軍備が国際の平和と安定に対する脅威であることを認識し、北朝鮮の完全な非核化へのコミットメントを再確認し、北朝鮮に対し、国連安保理決議の下での全ての義務に従うことを求めた。閣僚はまた、拉致問題の即時解決の必要性を確認した。
日本、米国及び韓国の三か国間協力は我々が共有するインド太平洋地域の安全、平和及び繁栄にとって不可欠である。
日米両国は、日米同盟の強さは、共通の価値に基づくものであり、志を同じくする民主主義国との緊密なパートナーシップのネットワークにより一層強化されるものであることを再確認した。
3月12日の日米豪印首脳会議は、世界に対して、普遍的な価値に基づき、威圧的な力に制約されることのない、自由で、開かれ、かつ包摂的な地域の共有されたビジョンを示した。
閣僚は、ASEAN の中心性及び一体性並びに「インド太平洋に関する ASEAN アウトルック」への強固な支持を確認しつつ、ASEAN と協働することを誓約した。
一層深刻化する地域の安全保障環境を認識し、閣僚は、日米同盟の役割・任務・能力について協議することによって、安全保障政策を整合させ、全ての領域を横断する防衛協力を深化させ、そして、拡大抑止を強化するため緊密な連携を向上させることに改めてコミットした。
宇宙やサイバーといった領域、及び情報保全を更に強化していくことの重要性を強調した。
さらに、閣僚は、同盟の運用の即応性及び抑止態勢を維持し、将来的な課題へ対処するための、実践的な二国間及び多国間の演習及び訓練が必要であると改めて表明した。
閣僚は、米国国防省が「世界的な戦力態勢の見直し」を進めている中で緊密に連携することの重要性を認識した。
閣僚は、米軍再編の取組に係る進展を歓迎するとともに、地元への影響を軽減しつつ、運用の即応性及び持続可能なプレゼンスを維持できるように現行の取決めを実施していくことに対するコミットメントを再確認した。
閣僚は、普天間飛行場代替施設をキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に建設する計画が、普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であることを再確認し、可能な限り早期に建設を完了することにコミットした。
在日米軍駐留経費負担につき、現行の特別協定を1年延長する改正に合意したことを受け、閣僚は、双方の交渉官に、双方が裨益する新たな複数年度の合意に向けて取り組むことを指示した。
2011年の3月11日の東日本大震災とその余波で失われた幾多の命を追悼し、閣僚は、日米同盟の協力の精神を強調し、インド太平洋地域で平和と安定を維持するために共に取り組んでいくことへのコミットメントを再確認した。
日米同盟の深さと幅広さ及び無数の共通の優先的な政策に関する取組を強める必要性を認識し、閣僚は、年内の日米安全保障協議委員会の改めての開催を呼びかけた。
Joint Statement of the U.S.-Japan Security Consultative Committee (2+2)
Secretary of State Blinken, Secretary of Defense Austin, Minister for Foreign Affairs Motegi, and Minister of Defense Kishi held the U.S.-Japan Security Consultative Committee in Tokyo, Japan on March 16, 2021. They reaffirmed that the U.S.-Japan Alliance remains the cornerstone of peace, security, and prosperity in the Indo-Pacific region. Japan resolved to enhance its capabilities to bolster national defense and further strengthen the Alliance. The United States underscored its unwavering commitment to the defense of Japan through the full range of its capabilities, including nuclear. Amid growing geopolitical competition and challenges such as COVID-19, climate change, and revitalizing democracy, the United States and Japan renewed their commitment to promoting a free and open Indo-Pacific and a rules-based international order.
The United States and Japan acknowledged that China’s behavior, where inconsistent with the existing international order, presents political, economic, military, and technological challenges to the Alliance and to the international community. The Ministers committed to opposing coercion and destabilizing behavior toward others in the region, which undermines the rules-based international system. They reaffirmed their support for unimpeded lawful commerce and respect for international law, including freedom of navigation and overflight and other lawful uses of the sea. The Ministers also expressed serious concerns about recent disruptive developments in the region, such as the China Coast Guard law. Further, they discussed the United States’ unwavering commitment to the defense of Japan under Article V of our security treaty, which includes the Senkaku Islands. The United States and Japan remain opposed to any unilateral action that seeks to change the status quo or to undermine Japan’s administration of these islands. The Ministers underscored the importance of peace and stability in the Taiwan Strait. They reiterated their objections to China’s unlawful maritime claims and activities in the South China Sea and recalled that the July 2016 award of the Philippines-China arbitral tribunal, constituted under the 1982 Law of the Sea Convention, is final and legally binding on the parties. The Ministers shared serious concerns regarding the human rights situation in Hong Kong and the Xinjiang Uyghur Autonomous Region.
Recognizing that North Korea’s arsenal poses a threat to international peace and stability, the Ministers reaffirmed their commitment to the complete denuclearization of North Korea and urged Pyongyang to abide by its obligations under UN Security Council resolutions. The Ministers also confirmed the necessity of immediate resolution of the abductions issue. Trilateral cooperation among the United States, Japan, and the Republic of Korea is critical for our shared security, peace, and prosperity in the IndoPacific region.
The United States and Japan reaffirmed that the strength of the Alliance comes from our shared values and is amplified by our network of close partnerships with like-minded democracies. The March 12 Quad Summit demonstrated to the world our shared vision of a free, open, and inclusive region anchored by universal values and unconstrained by coercive power. The Ministers pledged to work with Association of Southeast Asian Nations (ASEAN), affirming their strong support for its centrality and unity, as well as for the ASEAN Outlook on the Indo-Pacific.
Recognizing the increasingly serious regional security environment, the Ministers recommitted to enhancing close coordination to align security policy, deepen defense cooperation across all domains, and bolster extended deterrence by consulting on Alliance roles, missions, and capabilities. They highlighted the importance of domains such as space and cyber, as well as further strengthening information security. In addition, they reiterated that realistic bilateral and multilateral exercises and training are necessary to maintain the Alliance’s operational readiness and deterrent posture, as well as to meet future challenges. The Ministers acknowledged the importance of close coordination as the Department of Defense conducts its Global Posture Review. They welcomed progress on force realignment efforts and reaffirmed their commitment to implementing the current arrangements in ways that maintain operational readiness and a sustainable presence, while mitigating the impact on local communities. They reconfirmed that the plan to construct the Futenma Replacement Facility at the Camp Schwab-Henokosaki area and in adjacent waters is the only solution that avoids the continued use of Marine Corps Air Station Futenma, and committed to completing construction as soon as possible. Regarding Host Nation Support, having agreed to a one-year extension amendment to the current Special Measures Agreement, the Ministers instructed their negotiators to work toward a new mutually beneficial multi-year agreement.
In remembrance of the thousands of lives lost to the Great East Japan Earthquake and its aftermath in March 2011, the Ministers underscored the cooperative spirit of the Alliance and reaffirmed their commitment to working alongside one another to maintain peace and stability in the Indo-Pacific region. In recognition of the depth and breadth of the U.S.-Japan Alliance, and the need to increase momentum on numerous shared policy priorities, the Ministers called for another Security Consultative Committee meeting later in the year.
【出典】