大地震が東京を襲えば…453万人の帰宅困難者が都内にあふれる 東日本大震災時は352万人(東京新聞 2024年7月4日 06時00分)
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ヒト、カネ、モノが集中する東京は、ひとたび災害が起きると被害は甚大なものとなる。1855年の安政江戸地震では江戸市中で約1万人、1923年の関東大震災では神奈川などを含めて10万5000人の犠牲者が出たとされる。
周辺県から日々、300万人以上が通う
現在の都内人口は1400万人。周辺県からは日々、300万人以上の通勤・通学者がやってくる。帰宅困難者への対策や避難所運営が新たな課題となっている。
都の被害想定では、マグニチュード(M)7.3の首都直下地震による帰宅困難者は453万人。帰宅困難者は2011年の東日本大震災の発生時に大きな問題となった。鉄道が止まり道路には歩いて帰る人の長い列ができた。国の推計では都内で352万人が当日中に家に帰れなかった。
首都直下地震では、建物の被害がより大きくなる可能性がある。帰宅困難者が一斉に歩いて帰ると、けがや群衆雪崩などを引き起こす恐れがある。車道に人があふれると、消防車や救急車の通行の妨げになる。
発災時に行政は救命を優先する…一人ひとりが心の備えを
都は帰宅困難者対策として、都内事業者に従業員3日分の水や食料を備蓄するよう努力義務化したが、東京商工会議所のアンケートによると実施企業は約半数だ。観光客など行き場の無い人を受け入れる「一時滞在施設」の確保も進めているが、必要想定数66万人分に対し7割にとどまる。
首都直下地震による都内の被害は、死者約6100人、建壊損壊は約19万4000棟と想定されている。地震に限らず、集中豪雨に伴う都市型洪水や河川の氾濫、富士山噴火による火山灰の被害など、東京には多くの災害リスクがある。
東京大先端科学技術研究センターの廣井悠教授(都市防災)は「いざ災害が起きると、行政は救命などの業務に追われ、なかなか帰宅困難者に対応できない。『地震が起きたら無理に帰らない』という意識を広げるなど、より伝わる防災が重要だ」と話す。(岡本太)