「財務省はカルト教団です」「コメンテーターは真実を言うと干される」…森永卓郎が「死ぬ前に本当のことを全部書いておこう」と決意した理由

「財務省はカルト教団です」…森永卓郎が「死ぬ前に本当のことを全部書いておこう」と決意した理由 社会

「コメンテーターは真実を言うと干される」森永卓郎が目の当たりにしたテレビ局の「ほんとうの現実」

「コメンテーターは真実を言うと干される」森永卓郎が目の当たりにしたテレビ局の「ほんとうの現実」(+αオンライン 講談社 2024.02.27)

鈴木 宣弘 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
森永 卓郎 経済アナリスト /獨協大学経済学部教授

経済アナリストの森永卓郎氏の書籍『ザイム真理教』(三五館シンシャ)がヒットを続けている。ただ表立って財務省を批判することにはリスクもともなうと森永氏は語る。東京大学大学院教授の鈴木宣弘氏との対談書『国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係』(講談社+α新書)から一部を抜粋・再編集してお届けする。  連載第5回前編

大手新聞社と地上波テレビ局は無視

鈴木宣弘(以下、鈴木) 心ある、まともな経済学者はどのくらいいるのでしょうか。

森永卓郎(以下、森永) それでもいっぱいいますよ。

鈴木 なるほど。ただ、いっぱいと言っても、メディアに出るのはごく一部の人ですよね。

森永 ええ。正しいことを言っていると、みんな干されるんですよ。
私は2023年5月に、『ザイム真理教』(三五館シンシャ)という本を出したのですが、その過程で強くそう思いました。

この本について、ネットメディアとか、タブロイド紙、週刊誌がたくさん取材に来たんですよ。アマゾンでは3週間ほど経済書の売上ランキングのトップを走っていたので。

ところが、大手新聞社と地上波テレビ局からは無視されました。対応がきれいに分かれている。

絶対に本当のことを言ってはいけない

森永 いま、いろんな番組のコメンテーターの間では、「絶対に本当のことを言ってはいけない。干されるぞ」と言われているんですよ。

鈴木 でも、先生はまだ干されていませんよね。

森永 いや、私もけっこう干されましたよ、とくに東京の報道番組や情報番組の仕事はなくなりました。

番組名を言うとひと悶着起きるので言えないんですが、あるプロデューサーがやってきて、「森永さん、申し訳ないですけど、ちょっと番組全体をリニューアルすることになったので、降りてもらえませんか」と言う。

「リニューアルされたのは私だけだった」

森永 「わかりました。しょうがないですね」と返事をして、翌月にその番組を見たら、リニューアルされたのは私だけだった(笑)。

鈴木 そうだったんですね(笑)。

森永 テレビに出続けようと思ったら、こう言わなきゃいけない。

「いま、日本の財政は逼迫していて、孫や子の代に借金を付け回ししないためには、消費税の継続的な引き上げは避けられないんです。国民の皆様、一緒に増税に耐えましょう」と。こう言っておけば、テレビに出続けられる。

でもこういう方針ってそもそも放送法に違反しているんですよね。多様な意見を紹介するのがメディアの役割なんだから。

鈴木 本来はそうですよね。

森永 いま、地上波テレビは鈴木先生のほうが出ておられるんじゃないかな。

鈴木 それはないですよ(笑)。

「財務省はカルト教団です」…森永卓郎が「死ぬ前に本当のことを全部書いておこう」と決意した理由

連載第5回後編

どこも出版を引き受けなかった

鈴木 でも、どうしてそんなことになるんでしょうか。消費税や、財政政策についての発言がそんなに制約を受けるなんて。

森永 この『ザイム真理教』にも書いたのですが、財務省がカルト教団だからです。
そのことはみんな知っているんですよ。
でも言ってはいけない。だから大手出版社はどこもこの本の出版を引き受けてくれなかった。

「逮捕されて済むならやりましょう」

森永 行き詰まって、三五館シンシャという、中野長武(おさむ)さんという編集者が1人でやっている出版社に原稿を送ったところ、これは世に問うべき本だ、やりましょうと返事が来たんです。

「この本を出したら中野さんも逮捕されるかもしれないですよ」と言ったところ、「森永さんと僕の2人が逮捕されて、それで済むならやりましょう」と(笑)。

鈴木 なるほど。そのくらいの覚悟で出版されたんですね。国税の査察が入ったりしないんですか。

森永 そういう心配もあって、『ザイム真理教』の印税は手を付けずに取ってあるんですよ。訴訟費用の備えも必要ですし。

スラップ訴訟に負けたことはない

森永 具体的な中身については言えませんが、スラップ訴訟を受けたことも複数あります。いまのところ一度も負けていないんですが、裁判費用がかかっちゃうのでダメージはある。

あと税務調査については、いまのところ大丈夫です。うちは1割ぐらいで、その程度であれば税務調査はないと言われてはいるんです。ただ、いずれやられるかもしれません。

それでも捕まるのなら仕方がない。そのときは東京拘置所から中継しようとラジオ局と相談しています(笑)。

日本はもうロシアや中国、北朝鮮のようになっているんですよ。言論の自由が日に日になくなっている。

でも、私のところは農業をやっているので、月に10万もあれば食っていける。いまのところ年金は給付制限を受けて、1円ももらっていませんが、年金だけでもぜんぜん食えてしまう。

だから、『ザイム真理教』を出版して仮にメディアの仕事をすべて失っても問題はない。だったら、死ぬ前に本当のことを全部書いておこうと思ったんです。

財務省と経産省、日米のお友達企業に牛耳られている

森永 ほかにもヤバい話を書きかけてはいるんですけど。たぶんどの出版社も引き受けてくれないでしょうね。

鈴木 しかし、お話を伺って先生の覚悟をひしひしと感じました。みんなもっと森永先生を支えなきゃいけないですよ。私も一緒に闘います。農業の分野ではそれなりにがんばってはきましたので。

森永 本当のことってなかなか通らないですよね。農水省の役人をうちに泊めて再教育しようかと思っているぐらいです。

鈴木 仮に農水省の役人の中にわかっている人が現れても、いまの農業政策は財務省と経産省、日米のお友達企業に牛耳られています。

彼らが官邸に上げ、規制改革推進会議において、同志の連中が策定してしまう。そういうズブズブの利害関係の中で農業政策が決められていて、農水省はそれに文句すら言えない。そうした構造がある。

自律とは自由を確保するための手段

森永 なぜアメリカに全面服従しているのか、その原因についてだれも語っていない。この30年のあいだ日本経済が低迷を続けた原因は、一つは財務省がやった緊縮財政、もう一つはアメリカへの全面服従ですよ。

それをやめるためにも、SINIC(サイニック)理論(※)の言う「自律社会」を早く確立しなければならないと思っています。

 オムロン(当時は立石電機)創業者の立石一真氏が唱えた未来予測。70年代以降の情報化社会の到来を正確に予想していた。

森永 「自律」というと我慢ばかりでなんだか権力側からの抑圧のように思うかもしれませんが、自律とは本来、自由を確保するための手段なんです。

大都市に暮らしている人って、失業とか、離婚してひとり親家庭になるとか、ちょっとしたことで生活が破綻してしまう。

なぜそうなるかというと、家賃や住宅ローンが高いからです。

あと、電気代などエネルギーに払うお金も滅茶苦茶高い。最後に食費がとてつもなく高い。逆に、この3つの出費を抑えるだけで、自由な生活を取り戻すことができる。

私は太陽光発電にも挑戦しています。まだ自宅には小さい非常用のパネルしか付けていないのですが、別の場所で少し大がかりにやっているので、電気はほぼ自給できています。食料も半分以上は自給できている。

家は建ってから30年以上経つので、減価償却もほとんど終わっている。家賃も支払っていない。こういう状況だと、金のために働く必要がないから、自由なんです。
たとえ年金が半減したってまったく大丈夫です。

鈴木 宣弘(NOBUHIRO SUZUKI)
東京大学大学院農学生命科学研究科教授。
「食料安全保障推進財団」理事長。1958年生まれ。三重県志摩市出身。東京大学農学部卒。農林水産省に15年ほど勤務した後、学界へ転じる。九州大学農学部助教授、九州大学大学院農学研究院教授などを経て、2006年9月から現職。1998年〜2005年夏期はコーネル大学客員助教授、教授。主な著書に『農業消滅 農政の失敗がまねく国家存亡の危機』(平凡社新書、2021年)、『食の戦争 米国の罠に落ちる日本』(文春新書、2013年)がある。

森永 卓郎(TAKURO MORINAGA)
経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。
1957年7月12日生まれ。東京都出身。東京大学経済学部卒業。日本専売公社、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。主な著書に『長生き地獄 資産尽き、狂ったマネープランへの処方箋』『なぜ日本経済は後手に回るのか』『なぜ日本だけが成長できないのか』『親子ゼニ問答(森永康平氏との共著)』(角川新書)、『相続地獄 残った家族が困らない終活入門』(光文社新書)、『年収200万円でもたのしく暮らせます』(PHPビジネス新書)など。『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)では、“年収300万円時代” の到来をいち早く予測した。執筆のほか、テレビやラジオ、雑誌、講演などでも活躍中。50年間集めてきたコレクションを展示するB宝館が話題に(所在地:埼玉県所沢市けやき台2‒32‒5)。B宝館オフィシャルサイト http://www.ab.cyberhome.ne.jp/~morinaga/

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『国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係 』(鈴木宣弘・森永卓郎著)
講談社+α新書より2月21日発売!

『国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係 』…世界のどこかで有事が起きれば最初に飢えるのは日本、そして東京、大阪が壊滅する。気骨の農業学者と経済学者がこの国の危機を撃つ! アメリカの日本支配に加担する財務省、そしてその矛盾は「知ってはいけない農政の闇」となって私たちの生活を直撃する!