「国民の信頼回復に」 自民党政治刷新本部、中間とりまとめ全文(毎日新聞 2024/1/25 18:05 最終更新 1/25 18:05)
自民党政治刷新本部 中間とりまとめ
(国民の信頼回復に向けて)
おわびと決意
今般、自民党の政策集団における政治資金パーティーにおいて政治資金規正法違反の不透明、不適切な会計処理が指摘され、特定の政策集団の行為により、自民党全体に国民の厳しい目、強い疑念が向けられている。党の先人たちは、平成元(1989)年の「政治改革大綱」において、「『政治は国民のもの』と宣言した立党の原点にかえり、党の再生をなしとげて、国民の信頼回復をはたさなければならない」と決意し、さまざまな改革を進めてきた。にもかかわらず、わが党所属議員の逮捕をはじめ今回の一連の事態が生じたことについて、自民党として真摯に反省するとともに、国民に深くおわびを申し上げる。
政治家の倫理性が強く問われている。今後、関係者による明確な説明責任に加え、あるべき政治責任についても結論を得る。その上で、改めて「政治は国民のもの」との自民党立党の原点に立ち返り、わが党自らが変わらなければならない。
元日に能登半島地震が発生した。わが党挙げて被災地の一刻も早い復旧・復興に取り組まねばならない。加えて、本年は、30年ぶりの千載一遇のチャンスを迎えているデフレ脱却への取り組み、更なる賃上げや、次元の異なる少子化対策の推進などの先送りできない課題へ対応すべく、政治の実行力が求められている局面である。また、国際的にみても本年は世界各国で首脳級の選挙が行われ、国際情勢が流動化しかねないなかで、日本の政治の安定が求められている。しかし、「信なくばたたず」。求められている政治の安定の下での政策の実行のためには国民の信頼が不可欠である。だからこそ、わが党は解体的な出直しを図り、全く新しく生まれ変わるとの覚悟で、信頼回復に向けた取り組みを進めなければならない。このため、1月10日、自民党総裁を本部長として、「政治刷新本部」を立ち上げ、外部有識者から忌憚のない意見を賜り、全国会議員が参加し全国各地で各議員が聞いた国民の声をもとに聖域なく議論を行い、まず以下の取り組みをまとめた。
政治資金の透明性の徹底
政治資金は、その出し手・受け手の双方にとって政治活動の自由を保障するものであり、民主主義の重要な構成要素である。しかし、その政治資金の運用に疑義が生じ、国民の信頼が失われれば、わが国民主主義の基盤が揺らぐこととなる。国民の信頼回復に向け、不断の改革努力が求められる中で、まずは今回の問題の発端となったパーティー収支、政治資金の透明性の向上、及び適切な会計処理・報告に向けた①運用面及び②制度面双方の改革と再発防止策を、以下のとおり早急に進めることとする。
わが党としての運用面での取り組み
政策集団による政治資金パーティーの禁止及び外部監査の導入
わが党に対する国民の信頼を回復する第一歩は、今回の事案の原因を大もとから断つことである。すなわち、一部において不正行為の温床となった政策集団(政策研究団体)の政治資金パーティーは全面的に禁止する。加えて、政策集団(政策研究団体)の収支報告書の提出にあたり、外部監査を義務付ける。
コンプライアンスの徹底
今回の一連の問題のそもそもの原因は、現行の法律ですら順守が徹底されていなかったこと、すなわちコンプライアンスの欠如にある。そして、問題が発生した際に、関係者から説明がなかったこと。併せて、そうした関係者に対して党として責任を持った対応が図られてこなかったことが国民の不信感を増幅させた事実も否めない。まず、党として、コンプライアンスの強化を図るため、運用面におけるわが党自らの取り組みとして、以下のとおり、政治資金規正法等の順守を徹底する。
・党所属議員に対し、会計責任者の選任及び監督義務を果たさせるべく、党において党所属議員・会計責任者双方に定期的な研修を課すとともに、政治資金報告書作成の経緯を書面で保存することを求める。
・政治資金規正法違反が問題とされた党所属議員や政策集団につき、党としてすみやかな説明責任を尽くし必要な政治責任を果たすことを求める。更に、今後、個人及び組織において、党規律規約で定める倫理憲章等の規定に違反する行為をしたと思われる場合についても同様とし、これらの点を党規約及びガバナンスコードに明記する。
・逮捕、起訴等の事態となった議員につき、党規約等において除名処分等の規定をより厳格化するよう改正する。
・会計責任者が逮捕、起訴等の事態になった場合、その団体の代表を務める議員も事案の内容に応じて党規約等において処分できる党則改正を行う。
党所属議員の政治資金の透明性向上
政治資金パーティー等国会議員関係団体の収入を銀行振込で行うことを基本とする。また、収支報告書についてオンライン提出とすることを通じて政治資金の見える化を図る。上記の取り組みに加え、政治資金パーティー等の更なる適正化について検討を進めていく。
制度面での改革
党として、上述の、政策集団への外部監査の導入、収支報告書のオンライン提出、会計責任者の逮捕や起訴時の議員に対する党紀委員会の処分などについて、先行して自主的に取り組みつつ、各党との真摯な協議を経て、政治資金の透明化、公開性の向上、より厳格な責任体制の確立・厳格化、及び逮捕後の議員報酬の在り方などにつき、政治資金規正法改正など必要な法整備をすみやかに行う。
「派閥」の解消と党のガバナンス強化
そもそも政策集団は「あくまで政策研さんの場であり、党を補完し人材育成や若手議員の教育機能を担う自主的組織」である。こうした考えのもとで、昭和50(1975)年より政策集団は政治資金規正法上の「政策研究団体」として位置づけられてきた。しかしながら、わが党の政策集団は、国民の多くがイメージするいわゆる「派閥」、すなわち「お金や人事のための集団」とみられても致し方ない状況が継続してきた。そのことを率直に認め真摯に反省した上で、上述のイメージが染み付く「派閥」から脱却し本来の政策集団に生まれ変わらねばならない。そのカギは、政策集団が「お金」と「人事」から完全に決別することである。以下の取り組みを徹底すると同時に、これまで政策集団が担ってきた役割について今後は党の機能・ガバナンスを強化する必要があり、その方策の検討を進める。
① お金の面においては、政治資金パーティーを禁止するとともに(再掲)、夏季及び冬季の所属議員への資金手当等を廃止し、資金の流れの一層の透明化も図る。併せて、政策集団の活動を党本部等で行うなど、政治資金を最小限に抑える工夫をする。
② 人事の面においては、政策集団や党内グループからの推薦など、政策集団や他の特定の集団が人事に影響力を及ぼしていると見られるような働きかけや協議は行わないこととし、党全体として若手、女性はじめ多様な人材の登用を進める。このことを党のガバナンスコードに明記し、順守状況をガバナンス委員会でフォローアップする。同時に、党所属の各国会議員についてその経歴や専門分野などの情報を一元的にプールし、実績を更新しつつ人材育成に活用する仕組みを構築していく。
③ 政策集団等において政治資金規正法等の違反が明らかとなった場合、党として審査を行い、事案に応じて一定期間の活動の休止もしくは解散を求める。
④ 政策集団が文字通り政策を研さんしていく場であることを理解してもらえるよう、政策集団の活動報告及び政策の重点方針等の作成・公表を求める。
不断の改革努力の継続
まずは上記の「中間とりまとめ」で示された方向性についてそれぞれの制度やルールの詳細を検討していく。
更に、政治の刷新に向けては、選挙制度の在り方、国会運営の在り方、官僚との距離感の在り方など、見直すべき課題は山積しており、不断の改革努力が不可欠である。このため、今後も「政治刷新本部」において、上述の残された課題や新たな問題についての議論を進め、令和の時代の不断の改革努力の推進力としていく。その際、わが党の次代を担う世代や、地方組織・党員党友の意見を最大限尊重し、国民各層の声に丁寧に耳を傾けていく。