<社説>地球の「沸騰」 対策加速させ危機の回避を…京都新聞

地球沸騰化の時代が到来 社会

社説:地球の「沸騰」 対策加速させ危機の回避を(京都新聞 2023/08/12)

「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」―。国連のグテレス事務総長の警告である。その言葉を裏付けるようなニュースが相次いでいる。

欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」は7月の世界平均気温が16.95度となり、1940年からの観測史上、月平均で最高になったと発表した。海面水温も過去最高タイの20.89度だった。

世界各地が猛烈な熱波に襲われている。大規模な森林火災が続発し、熱中症などによる死の危険も招いている。

日本も例外ではない。気象庁によると、7月の平均気温は基準値を1.91度上回り、45年ぶりに最高を更新した。

非常に遅い上、Uターンした台風6号が沖縄県と九州などを襲った。異常な動きは、温暖化による海面水温の上昇だけでなく、北極の温暖化が偏西風を蛇行させている影響があると指摘する専門家もいる。

その北極海の氷の融解が加速しているとの分析を発表したのは、韓国などの国際研究チームだ。夏に消失する事態が、早ければ2030年代に起こる可能性があるという。

まさに私たちは危機の時代に直面している。だが二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出削減は遅々として進んでいないのが実情だ。

パリ協定の下、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えるのが世界の目標だが、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は「気温は既に1.1度上昇し、対策を強化しなければ今世紀末に最大3.4度の上昇になる」と予測する。

今後10年間の対策が人類や地球に数千年にわたり影響を与えると警告する。逆に言えば、思い切って方向転換すれば暮らしに適した未来を確保できるということではないか。

日本政府は30年度の温室効果ガス排出を13年度比で46%減、50年に実質ゼロとする方針を掲げる。達成するには、社会や経済の仕組みを抜本的に見直すことが欠かせない。

だが、岸田文雄政権は目標に向けた具体策に乏しい。核のごみなど持続性に欠陥を抱える原発の最大限活用にかじを切る一方、石炭火力発電を温存する。近視眼的な政策に終始し、危機感が感じられない。

今年11~12月には、アラブ首長国連邦で気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が開催される。

「化石燃料の時代は終わったと首脳たちが宣言してリーダーシップを発揮するべきだ」と、米環境シンクタンクの代表は指摘する。

日本は不名誉な「化石賞」の受賞を続けている。世界から向けられる目は厳しさを増すばかりだ。再生エネルギーの大幅拡大を軸に、対策を加速させなくてはならない。

京都新聞