日銀の「埋蔵金60兆円」が少子化対策の財源に急浮上 保有ETFの含み益が膨張中(日刊ゲンダイ 公開日:2023/06/13 06:00 更新日:2023/06/13 06:00)
膨れ上がる「埋蔵金」は生かされるのか──。バブル後最高値の株高にマーケットが沸いているのと同様、ウハウハなのが日銀だ。保有するETF(上場投資信託)の含み益が膨れ上がっているからだ。
■株価 バブル後最高値続く
日銀の発表によると、2023年3月時点でETFの簿価は約37兆円、時価が約53兆円と含み益は約16兆円だった。その後、株高が続き、民間試算によると5月末の含み益は20兆円程度に達し、1年前から6兆円も増えたという。
「5月末からさらに株価は上昇しており、足元の時価は60兆円に迫っているはず」(市場関係者)とみられる。
この巨額の埋蔵金を眠らせておいていいのか、とにわかに浮上しているのが、少子化対策の財源への活用だ。岸田政権の「異次元の少子化対策」に必要な財源は年間3.5兆円だが、全くメドは立っていない。20兆円の含み益を充てれば6年分はまかなえる。
■植田総裁は決断できるのか
ネット上では〈少子化対策の予算は日銀が株で儲けた20兆円充てりゃいいじゃん〉〈増税しなくて済む〉〈ETF今売らないでいつ売るの?〉など“活用論”が盛り上がっている。
先週の国会でも日銀のETFを少子化対策の財源に活用する件が取り上げられ、植田総裁は「ETFの処分の具体的な方法に言及するのはまだ早い」と答弁している。
金融ジャーナリストの森岡英樹氏が言う。
「世界の中央銀行の中でETF買いをしているのは日銀だけ。いずれ、売却を進め、出口に向かう必要がありますが、今が絶好のチャンスです。巨額の利益を上げられるし、今なら海外投資家が日本株を買い支えているので、売却によるショックも比較的小さいはずです。少子化対策の財源であれば、世論の支持も見込まれ、『何もしない』と評判の良くない植田総裁の“株”を上げることにもなります」
しかし、植田総裁は簡単にはETFの売却を進めないとみられている。
「今後、金融緩和を修正し、金利が上昇すれば、日銀が保有する国債の含み損が膨れ上がる。長期金利が2%に上昇すれば含み損は約50兆円との試算もあります。こうした事態に備え、植田総裁はETFをキープしておきたいのでしょう。少子化対策に充ててしまえば日銀は含み益を得られず、その後の配当もなくなりますからね。しかし、日銀は国債を満期まで持つので実損は生じないし、債務超過に陥ってもつぶれるわけではありません。財務悪化はそれほど気にしなくていい」(森岡英樹氏)
少子化対策より、日銀の財務を優先させれば、植田総裁の評判はガタ落ち必至だ。