プーチン大統領の〝跡目抗争〟が激化 「愛人」カバエワ氏の隠し資産が暴露される、「料理人」プリゴジン氏創設のワグネルは失速目立つ、「忠臣」メドベージェフ氏が台頭か

ロシアのプーチン大統領(左)と事実婚の関係にあるとされるアテネ五輪女子新体操金メダリストのアリーナ・カバエワ氏=2004年11月 国際

プーチン大統領の〝跡目抗争〟が激化 「愛人」カバエワ氏、排除勢力が隠し資産を暴露 「料理人」プリゴジン氏、目立つワグネルの失速 「忠臣」メドベージェフ氏が台頭か(zakzak 2023.3/6 06:30)

ウクライナ侵略から1年が過ぎるなか、ロシアのプーチン大統領の周辺に不穏な兆候だ。「愛人」に巨額な隠し資産のスキャンダルが流出し、情報の出所が憶測を呼ぶ。一方、プーチン氏の立場を脅かすとみられていた「料理人」が失速し、最大の「忠臣」が再浮上するなど、政権中枢の「跡目争い」が激化しているようだ。

ロシアの反政府系ネットメディア「プロエクト」が2月28日に報じたのは、プーチン氏の愛人とされる元新体操五輪金メダリスト、アリーナ・カバエワ氏(39)が秘密裏に所有していた国内最大規模のペントハウスの存在だ。冬季五輪も開かれた黒海沿岸の保養地、ソチにあり、部屋が20室、シアタールーム、ビリヤード場、美術館などがあり、2011年基準で15億円以上の価値があるとされる。

プーチン氏はまた、ロシア北部のバルダイ湖にある自身の別荘の隣に、カバエワ氏と子供たちのための木造の邸宅建設を指示したという。

プーチン氏とカバエワ氏の関係は公然の秘密だが、なぜこの時期に隠し資産が暴露されたのか。

筑波大の中村逸郎名誉教授は「カバエワ氏を快く思わない一派から資産情報が暴露された可能性がある。政権内にはプーチン氏の元妻やその子供と連携する勢力もあるといわれる。カバエワ氏もプーチン氏の庇護を受けなければならない立場で、権力闘争の激化が家族の跡目争いにまで波及したことを示している」と解説する。

政権中枢の争いも混沌としてきた。「プーチンの料理人」と呼ばれる立場から、ウクライナ侵略後は政権奪取をうかがうほどの力を付けてきた民間軍事会社「ワグネル」創設者、エフゲニー・プリゴジン氏だが、ここにきて失速が目立つ。米紙ウォールストリート・ジャーナル(日本語版)は、プリゴジン氏がロシアの正規軍への批判を「トーンダウン」させていると伝えた。

対照的に、長年にわたりプーチン氏と、大統領と首相の「タンデム(二頭)体制」で知られた前大統領、ドミトリー・メドベージェフ安全保障会議副議長が、再び頭角を現しているという。

米誌ニューズウィークは、「プーチン氏とメドベージェフ氏がロシアの崩壊について、ここ3、4カ月話し合ってきた」とするウクライナのゼレンスキー大統領元顧問の見方を伝えた。

2月のプーチン氏の年次教書演説中に居眠りする姿も話題になったメドベージェフ氏には、「強力な後ろ盾」も見え隠れする。前出の中村氏は「メドベージェフ氏は昨年12月に訪中し、習近平国家主席と会談したと報じられている。中国からの武器支援を成果として再びメドベージェフ氏が台頭してきた可能性もある」との見方を示す。

「忠実なるイエスマン」とみられるメドベージェフ氏に政権を譲ればプーチン氏はその後も権力を維持できるのか。中村氏は「メドベージェフ氏が実権を握った場合、中国の意向がより強く反映されることも考えられる。プーチン氏は侵略の責任を取らされる形で、院政も難しくなるのではないか」と指摘した。