総務省の内部文書に“クビ”を懸けた高市早苗氏の誤算と窮地…行政文書認定でも「捏造」強調

総務省の内部文書に“クビ”を懸けた高市早苗氏の誤算と窮地 政治・経済

総務省の内部文書に“クビ”を懸けた高市早苗氏の誤算と窮地…行政文書認定でも「捏造」強調(日刊ゲンダイ 公開日:2023/03/07 13:20 更新日:2023/03/07 16:17)

「捏造でなければ辞職」と威勢よくタンカを切ったものの、どうも旗色がよくない。高市早苗経済安保相にとっては誤算だったのではないか。

放送法の政治的公平性の解釈をめぐり、第2次安倍政権が総務省に“圧力”をかけたとされる内部文書が注目を集めていたが、松本総務相が7日午前、「すべて総務省の行政文書であることが確認できた」と明らかにした。

当時、総務相だった高市氏は、3日の参院予算委員会でこの文書を「まったくの捏造」と断言。立憲民主党の小西洋之参院議員から「もし捏造でなければ議員辞職するのか」と迫られると「結構ですよ」と応じていた。

売り言葉に買い言葉の展開で、高市氏が自らの進退を懸けたことで、この文書に対する関心が一気に高まった。

「官僚経験者が見れば、捏造文書でないことはすぐ分かる。発言記録が一言一句まで正確かはともかく、大まかな流れは文書の通りなのだろう。それを捏造と言い切り、自分のクビまで懸けてしまうのは、閣僚としてあまりに不用意だ。文書を読むと、放送法の解釈変更を居丈高になって主導していたのは礒崎陽輔首相補佐官(当時)で、高市さんは乗り気でなかった。なぜ、高市さんがあんなムキになって文書の信憑性を否定したのか分かりません」(官僚出身の自民党議員)

6日の参院予算委員会でも、この文書について質疑が交わされ、松本総務相は「総務省が礒崎総理補佐官から問い合わせを受け、これを契機として当該解釈の補充的な説明が示されたことは確認されている」と答弁。文書に記載された経緯を認めた形だ。

岸田首相は「総務省において精査することが必要」と繰り返し、我関せずを決め込んでいる。

■答弁を微妙に修正

さすがに分が悪いと感じたのか、6日の予算委で文書のどこが捏造なのかと問われた高市氏は、「私の発言や、私と安倍総理の電話にかかる内容だとされる文書計4枚」「文書のうち、私が読んだのは4枚だけ」と微妙に修正。計78枚の文書のうち、問題にしているのは自分に関わる4枚だけという理屈で、文書そのものの真贋から防衛ラインを下げてきた。

それにしても、8年も前の文書が、今になって表に出てきた理由はハッキリしない。報道の自由に政治が介入することへの義憤だけであれば、もっと早く内部告発があってもよかったはずだ。

このタイミングなのは、落選中の礒崎氏が4月に行われる参院大分補選に立候補するのを牽制する目的なのか。それとも、高市氏自身が言っていたように「非常に悪意を持って私(高市)を辞めさせようと」する“高市潰し”の動きなのか。

自民党内では、“これで高市さんも終わり”と冷ややかに見ている人が多い。地元の奈良県知事選で分裂を招き、党内対立を抱えているし、後ろ盾だった安倍元首相がいなくなった今は守ってくれる人もいない。総務省の文書でダメージを負い、4月の知事選でも野党に負けるようなことになれば、万事休すです。ただ、総務省の文書は高市氏が進退に踏み込んで、自ら問題を大きくしてしまったとも言える。こういう事態に陥ったのは自業自得という声もあります」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)

高市氏は7日午前の記者会見で、文書に記された発言について、「捏造で内容は不正確であると理解している」と改めて強調。文書の内容についても「作成者が書いていない、日時が特定できていない、内容が不正確である」などと主張。自身の進退について問われると、「私に対して議員辞職を迫るのであれば、文書が完全に正確なものであると相手様も立証されなければならない」と語ったが……3月末の予算成立まで高市氏は持ちこたえられるのか。