〈政策秘書の「業務委託契約書」入手〉 秋本真利外務大臣政務官に秘書給与法違反の疑い

秋本真利外務政務官 政治・経済

〈政策秘書の「業務委託契約書」入手〉 秋本真利外務大臣政務官に秘書給与法違反の疑い(「週刊文春」編集部 2023年2月15日 source : 週刊文春 2023年2月23日号)

秋本真利外務大臣政務官(47)が、私設秘書の給与を政策秘書に肩代わりさせるなどしていた疑いがあることが、「週刊文春」の取材でわかった。政策秘書と私設秘書が締結した「業務委託契約書」を入手した。秘書給与法違反の疑いがある。

秘書給与を巡る新たな疑惑

秋本氏は2012年に千葉9区から初当選し、現在、当選4回。昨年8月の内閣改造で、外務大臣政務官に就任した。再生可能エネルギー事業の推進に熱心で、河野太郎デジタル相の最側近としても知られている。

「週刊文春」2月2日発売号では、秋本氏の地元事務所(千葉市若葉区)が無許可で市街化調整区域内に建築され、約10年間にわたり、違法状態にあった旨を報道。秋本氏は翌3日の国会で「深く反省をしています」と述べたうえで、事務所を移設する方針を示した。

また、「週刊文春」2月9日発売号では、再エネ事業を手掛ける「レノバ」(東京都中央区)との関係を巡り、秋本氏がレノバ関係者からの献金について国会で否定していたにもかかわらず、同社の創業メンバーで特別顧問だった人物の会社から献金を受け取っており、虚偽答弁の疑いがある旨を報道。秋本氏は「法的には何ら問題ないものだと認識している」などとしている。

その秋本政務官に新たに発覚したのは、秘書給与を巡る疑惑だ。

『金か人、どっちかとってこいよ』と怒鳴られたことも

「週刊文春」が入手した「業務委託契約書」は、秋本氏の政策秘書・小林亞樹氏と、私設秘書・C氏が所有する賃貸物件を管理する個人会社の間で締結されたもの。2021年6月1日付で、契約期間は1年間としている。

「2021年6月頃に政策秘書に就任したのが、弁護士の小林亞樹氏。政策秘書の兼業は原則禁止ですが、議員が許可した場合は認められる。その小林氏に誘われ、ほぼ同時期に私設秘書に就任したのが、彼女の友人だったC氏です」(地元関係者)

C氏の名刺には〈秋本真利 秘書〉と記され、事務所ドメインの個人用アドレスなども載っていた。自民党関係者が明かす。

「C氏は平日9時から18時まで議員会館で勤務していました。2021年10月の衆院選の時は毎日のように千葉まで通い、秋本氏の指示を受けて約300社を訪問。秋本氏から直接、『ただ支援者回っても意味ねぇんだ、金か人、どっちかとってこいよ』などと怒鳴られたこともあったと聞きました」

事務所が人件費を負担しないよう、政策秘書の給与を公費で分け合う形に

小林氏とC氏が締結した「業務委託契約書」には、次のように記されていた。

〈甲は、乙に対し、衆議院秋本真利の政策秘書業務に付随する一切のサポート業務を委託し、乙はこれを受託する〉

〈甲〉は小林氏、〈乙〉は実質的にC氏だ。「この形式にこだわったのは小林氏」(C氏に相談を受けていた知人)だという。契約書の本文はこう続く。

〈甲は、乙に対し、本業務を委託する報酬として月額25万円を支払う〉

この契約書が示すのは、小林氏が一旦、国から政策秘書として給与の手取り額約50万円を受け取り、その約50万円の中から政策秘書のサポート業務という名目で、C氏が私設秘書としての給与25万円を受け取るという金銭の流れだ。秋本氏の側から見れば、本来、自身が支払うべき私設秘書の給与を、政策秘書に肩代わりさせていたという構図になる。なぜ、こんな異例のスキームを取っているのか。

政策秘書と私設秘書の業務委託契約書

「小林氏の前任の政策秘書も女性弁護士でした。秋本氏としては、弁護士を政策秘書に雇えば、顧問料を負担せずに法律家を傍における。ただ、小林氏は本業が多忙で国会事務所にはほとんど出勤できず、月1回程度の時もある。日常業務に差し障りがないよう、代わりの常勤秘書が必要でした。しかし新たに秘書を雇用すると、秋本事務所が人件費を負担しないといけない。そこで公費である政策秘書の給与を分け合う形になったのです。小林氏としても、特別職国家公務員としての福利厚生を享受できる。このスキームについては、秋本氏も『(政策秘書給与を)うまく2人で分けて』と了承していました」(前出・C氏から相談を受けた知人)

「そうしたことがあったのは事実です」C氏は事実関係を認める

しかし、政策秘書は3人まで認められる公設秘書の中でも最も厳しい条件が課せられ、代わりに報酬も多額だ。言うまでもなく、その原資は税金である。こうした支払いは認められるのか。永田町法律税務事務所の長谷川裕雅弁護士が指摘する。

「議員が政策秘書に、その給与の中から、私設秘書の給与を出させていたと認定されれば、寄附の要求を禁じた秘書給与法21条の3に違反する可能性がある。政策秘書は実質的に、私設秘書の給与分を議員側に寄附したことになるからです。

私設秘書が拘束時間を定められ、議員から指示も受けていたなら、業務委託ではなく、労働基準法の適用対象の雇用関係とみなされる可能性もある。そうなれば、政策秘書と私設秘書の間の業務委託契約による委任としている点で不適切で、場合によっては労働基準法違反の疑いも生じます」

C氏に尋ねると、当初は「もう関わりたくないので……」と固く口を閉ざしていたが、記者が一つ一つ質問を重ねると、「そうしたことがあったのは事実です」「契約書も本物です」と事実関係を認めた。

「両者の関係性について、弊所は一切関知しておりません」

秋本事務所に事実関係の確認を求めたところ、C氏を私設秘書に据えた経緯や、小林氏がC氏に月25万円を支払うスキーム、C氏の勤務状況を問う質問などには一切答えず、小林氏の勤務実態は適切なのか見解を求める質問について、秋本氏が代表を務める「自由民主党千葉県第九選挙区支部」名で以下のように回答した。

「当該秘書(小林氏)は、メディア対応のみならず、政策対応及び省庁等対応並びに支援者からの陳情対応等、多様な業務を担当しております。

当該秘書は、弁護士業務との兼業を許可されており、かつ、コロナ禍の影響も大きく、秘書業務については、リモートやメール等の通信手段を利用する事もあるものの、常時、対応可能となるよう、万全の態勢で業務を遂行しています。

なお、当該秘書は、法律事務所に赴くことがあるので、急な対応を要する際にも支障をきたすことのないよう、自身の事務員を会館事務所に待機させることがあり、当該秘書の指示で仕事をするほか、手が空いている時には、事務所のお手伝いをしてくれることもありましたが、両者の関係性について、弊所は一切関知しておりません。

また、当該秘書の給与については、当該秘書に対し、秘書給与全額を渡していますので、秘書給与法に抵触するようなことはありません」

小林氏からの回答は…

事務所の回答を受け、小林氏に見解を求めたところ、次のように回答した。

「当職は、政策対応及び省庁等対応並びに支援者からの陳情対応等、一般的な政策秘書業務全般に携わっております。

また、弁護士業務との兼業許可を得ておりますので、法律事務所や裁判所等に赴くこともありますし、コロナ禍中でもありますため、リモートワーク等の勤務形態を活用しております。

また、秘書業務において急な対応を要する際にも、支障をきたすことのないよう、当職の事務員を会館事務所に待機させた時期もあります。事務員には、主に当職の業務に関わる連絡等をお願いしていましたが、会館事務所のスタッフとの人間関係を重視し、手が空いている時には、事務所のお手伝いをしてもらうこともありました。当然ながら、事務外注費は、当職が支出しております」

秋本氏は今後どのような説明を行うのか

秋本氏を巡っては、地元事務所の“違法物件”問題に加え、虚偽答弁の疑いも浮上し、国会で追及される事態が続いている。そうした中、新たに発覚したのが、自らの秘書給与を巡る疑惑だ。2003年には辻本清美前衆院議員(当時・辻本氏のつじは一点しんにょう)が、ほとんど勤務実態のない政策秘書の給与を私設秘書の給与などに流用していたとして、秘書給与詐取容疑で逮捕されている。この事件を受け、公設秘書への寄附の勧誘や公設秘書の兼職を原則禁止するなど厳格化の方向で秘書給与法は改正されたはずだった。にもかかわらず、自らの政策秘書と私設秘書が締結した「業務委託契約書」について、「一切関知しておりません」とした秋本氏。今後、どのような説明を行うのか、対応が注目される。

2月15日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および2月16日(木)発売の「週刊文春」では、小林氏とC氏が締結した「業務委託契約書」の詳細や、現金手渡しとされる秋本事務所の給与の支給方法のほか、公設秘書(当時)に寄附を強要していた疑いを示す音声データ、当の公設秘書の証言などについても報じている。

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「疑惑の政務官」に秘書給与法違反の疑い