第211通常国会 首相、施政方針演説で「次元の異なる少子化対策」を最重要と位置付け

衆院本会議で施政方針演説をする岸田首相(23日) 政治・経済

首相、施政方針演説「次元の異なる少子化対策」 最重要と位置付け(毎日新聞 2023/1/23 14:53 最終更新 1/23 16:25)

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第211通常国会が23日召集され、岸田文雄首相は衆院本会議で施政方針演説に臨んだ。子ども・子育てを「最重要政策」に位置づけ、「従来とは次元の異なる少子化対策を実現する」と表明。必要財源の確保に向け、社会保険料の引き上げを模索する考えを示唆した。会期は6月21日までの150日間。

首相は、2022年の出生数が80万人を割るとの見通しに触れ、「我が国は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況」だと強調。「子ども・子育て政策への対応は待ったなし」だとし、出生率の反転に努める考えを示した。政府は①児童手当を中心とした経済的支援強化②子育て家庭向けのサービス拡充③仕事と育児の両立促進――に取り組む方針だ。

高等教育の負担軽減に向け、出世払い型の奨学金制度を導入すると説明。4月発足の「こども家庭庁」で必要な施策を体系的に取りまとめつつ、6月までに「将来的な子ども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示する」と語った。

数兆円必要になるとみられる追加財源の確保に向け「各種の社会保険との関係、国と地方の役割などさまざまな工夫」を図るとし、社会保険料の見直しを念頭に置く構えを示した。

新型コロナウイルス対策では、今春にも感染症法上の位置づけを季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げる方針を説明した。政府は今後の感染症危機への備えとして内閣感染症危機管理統括庁の設置法案を今国会に提出する。

物価高対策に引き続き取り組むとし「物価上昇を超える賃上げが必要」だとも強調。持続的な賃上げ環境整備に向け①リスキリング(職業能力の再開発)による能力向上支援②日本型職務給の確立③成長分野への円滑な労働移動――といった労働市場改革を進めるとした。

リスキリングについては企業経由が中心の在職者向け支援を個人への直接支援中心に見直す。「6月までに日本企業に合った職務給の導入方法を類型化し、モデルを示す」とも語った。

エネルギーの安定供給に向け「多様なエネルギー源を確保しなければならない」と強調。安全確保と地域の理解を前提に「廃炉となる原発の次世代革新炉への建て替え」や「原発の運転期間の一定期間の延長」を進めるとした。

防衛費増額や反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有に理解を求めた。27年度以降、年1兆円強不足する防衛費増の財源を巡っては「今を生きる我々が、将来世代への責任として対応する」と語り、増税で対応する考えを改めて示した。

5月の主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)議長国として「核兵器のない世界」への意欲も語った。 演説終盤、22年は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係や「政治とカネ」を巡る問題で「国民の皆さんから厳しい声をいただいた」と振り返り陳謝した。その上で「今後、こうしたことが再び起こらないよう、さまざまな改革にも取り組んでいく」と述べた。