「反撃しても、原発狙われたら終わり」立憲民主党・辻元清美参院議員 安保3文書改定、与党だけの決定に怒り(東京新聞 2022年12月20日 06時00分)
<安保政策大転換 私はこう考える> 辻元清美参院議員(立憲民主党)
今回の安全保障関連3文書の改定は、日本が世界的な大軍拡競争の流れに身を任せるのか、それとも歯止めをかけるのか、大きな時代の分かれ道だ。それを国会の議論なく与党だけで推し進め、閣議決定で決めたことに、怒りとともに危機感を持っている。
岸田政権が決めた敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有は、軍拡競争を招くリスクがある。本当に抑止力になるのかも疑問だ。日本は狭い国土に多くの原発がある。「反撃」をしても、相手から原発を一斉に狙われたら終わり。ミサイルを全部撃ち落とすことはできない。
そんな安全保障上の弱点である原発なのに、政府は新増設したり運転期間を延長したりしようとしている。矛盾した政策であり、本当に日本を守ろうとしているのだろうか。
最大の防御は外交しかない。中国との対話の機会を増やしたり、北東アジアで多国間の外交の枠組みをつくる努力をするべきだろう。岸田文雄首相は軍事的な力を持つことで外交力が強くなるという考えだが、逆に相手の敵対心が必要以上に強くなり、外交力が弱くなる可能性もある。そのさじ加減が大事なのに、今は軍事偏重になっていて大きな懸念を持っている。
防衛費を大幅に増やすのであれば、まず教育費に使った方がいい。国を守るのは人だ。さらに農業や漁業などの1次産業に予算を回し、食料自給率を上げた方が強い国になる。税金の使い道の順番を間違えていると感じる。
政府はこれまで米国から武器を「爆買い」し、沖縄県名護市辺野古へのこの軟弱地盤の上にいつできるかも分からない基地をつくろうとするなど、湯水のように税金を使ってきた。それでさらに増税しようというのは納得を得られないだろう。
国民的な議論が必要だ。安倍政権下での安保法制定時も最初は声を上げる人は少なかったが、途中で火がついて、あれだけの反対の動きになった。今回もまだどうなるか分からない。
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つじもと・きよみ 参院比例、1期。衆院議員は7期務めた。立憲民主党の国対委員長や副代表を歴任。現在は、つながる本部長代理。民主党政権で国土交通副大臣や首相補佐官を務めた。奈良県生まれ、大阪府育ち。早大卒。62歳。