自民党内で「岸田下ろし」が始まる…その時、二階元幹事長が推す「次期総理」の名前 河野も茂木も0点だ(現代ビジネス 2022.12.09)
支持率下落が止まらず、ますます弱りつつあると言われる岸田総理。まるでその精気を吸い取っているのかのように見えるのが、近ごろ活気を取り戻してきている二階俊博元幹事長だ。【前編】『83歳・二階元幹事長がまた暗躍…「世耕なんぞ舎弟にしてやったわ」剛腕ぶりが圧巻』に引き続き、復活しつつある彼の動向についてレポートしよう。
警察関係者との太いパイプ
岸田政権で幹事長を離れ、鳴りを潜めた二階を「このまま引退するのではないか」「もはや終わった老人だ」などと、願望混じりに評する議員は自民党にもいる。だが今、二階は完全復活を遂げた。そして、間違いなく近年で最も高揚している。
それは、吹き始めた政局の生臭い風を嗅ぎとっているからに他ならない。
二階は10月31日の夜、総理・岸田文雄の希望を容れ、行きつけの麻布の高級中華「富麗華」で面会した。が、岸田は二階を主流派から外した張本人であり、二階はほとんど口もきかずに追い返した。他にやりたい者がいないから「総理をやらされているだけ」のゾンビ同然の岸田に、二階が労を割くはずもないのだ。
本番はそのあとだった。11月11日の夜、二階は同じ「富麗華」に次のような面々を集めた。
二階派会長代行で腹心中の腹心・林幹雄。同じく二階派事務総長で元総務大臣の「若頭」、武田良太。8月に警察庁長官に就いた露木康浩。そして露木の前任者、安倍晋三・菅義偉の両政権で「番人」を務めた中村格―。
二階派の最高幹部と警察の最高幹部がメシを食う。狙いは何なのか。
「岸田政権の主流派、とりわけ総理の後見役で、(地盤が同じ福岡で)武田さんを毛嫌いしている麻生(太郎副総裁)さんへの牽制ですよ。安倍・菅政権では、北村滋(前国家安全保障局長)や中村が情報を統制し、内閣を陰で支えてきたことが政権の安定につながっていた。
でも岸田政権は公安警察や情報機関へのグリップが弱いから、こんなにグズグズになっている。そうした中で、二階さんと武田さんが警察関係をガッチリ押さえているとなれば、岸田総理や麻生さんにとっては不愉快極まりない。それと同時に、次の政権では二階派を下に置くことはできない、という認識も自民党内に広がる」(自民党閣僚経験者)
岸田よ、麻生よ、お前らは政治の要諦がわかっとらんのじゃないか。だから、この体たらくなんだ―要するに二階は、そう言いたいのである。
河野も茂木も0点だ
中村が仕えた二人の総理のうち、安倍はもうこの世にいない。残る菅の再登板こそ、二階がこれから果たそうとしている「最後の大仕事」だ。
「帯に短し、襷に……」
岸田、河野太郎、高市早苗、野田聖子が壇上に並んだ’21年9月の総裁選。ある側近は、二階がボソボソと口を動かしたのを聞き逃さなかった。
「二階さんは世間で『総理候補だ』と言われている政治家のことは、誰一人として評価していない。茂木(敏充幹事長)も、菅さんが目をかける河野も、まして麻生さんが自分の後継に立てようとしている鈴木俊一(財務大臣)も、二階さん基準では全員0点」(二階と近い自民党ベテラン議員)
「嫌われる」のと「恐れられる」のはまったく違う。河野や茂木は、それすら心得ていない。だから60になっても70になっても、いつまで経っても人が集まらんのだ―。
「その点、『菅総理』であればどの派閥にとってもアレルギーがない。岸田下ろしの党内合意が形成されれば、即座に二階派43人と(二階側近の森山裕が率いる)森山派7人は菅グループに合流する用意ができている。
安倍派は最終的に、萩生田(光一政調会長)、西村(康稔経産大臣)が菅支持でまとめるだろう。跳ねっ返りになりそうだった世耕も今回、二階さんに降った。岸田・麻生・茂木は、束になっても二階・菅に敵わない」(同前)
国会議員の史上最高齢在職記録は、「憲政の神様」尾崎行雄の94歳。といっても最後の10年は、病気がちで半引退状態だった。だが二階は衰えるどころか、総理も総理候補も食らい尽くして、ますます力をみなぎらせている。
「俺は国会で死ぬんだ」
そんな二階の言葉は現実になりそうである。ただし、その日が来るのは10年後、いや20年後になるかもしれない。
(文中敬称略)
「週刊現代」2022年12月10・17日号より