リシ・スナク氏、有色人種初の英首相に 「スーパーリッチの元銀行マン」「外交手腕は未知数」「ジョンソン氏退陣の引き金を引いた戦犯」

スナク元財務相、首相就任へ 国際

リシ・スナク氏、スーパーリッチの元銀行マンが有色人種初の英首相に

リシ・スナク氏、スーパーリッチの元銀行マンが有色人種初の英首相に(CNN 2022.10.25 Tue posted at 12:07 JST)

ロンドン(CNN) トラス英首相の辞任を受けた与党・保守党の党首選を制したリシ・スナク元財務相は24日、次期首相に就任することについて「光栄であり、身の引き締まる思いがする」と語った。

その上で「英国は偉大な国だが、深刻な経済的課題に直面している」「我々には安定と結束が必要だ。今後は我が国と我が党をまとめることを最大の優先課題にする」と付け加えた。

トラス氏と同様、スナク氏は不法移民に対して強硬な姿勢で臨むことを約束。 亡命を求めて英国にたどり着いた人たちを東アフリカのルワンダに移送するという政府主導の物議を醸す計画も拡大するとしている。

インドにルーツを持つスナク氏の両親は、1960年代にアフリカ東部から英国へ渡ってきた。父親は医師として働き、母親はイングランド南部で薬局を経営していた。

スナク氏は2015年の印ビジネス・スタンダード紙とのインタビューで、自分は完全に英国人であり英国こそ祖国だとしつつ、自身の宗教的、文化的立場はインド人だと説明。「妻もインド人であり、ヒンドゥー教徒であることを隠していない」と述べた。

英国でヒンドゥー教徒、有色人種の首相が誕生するのは初めて。また42歳での就任は過去200年余りで最年少となる。

スナク氏はこれまで、エリートとしての経歴を巡る課題に直面してきた。名門パブリックスクールのウィンチェスター・カレッジとスタンフォード大学で学び、ファッションは高級志向で知られる。これまで米ゴールドマン・サックスを含む銀行やヘッジファンドで勤務した経験を持つ。

インドの富豪の娘である妻の納税免除に対しては、厳しい批判の声が上がってもいた。

今年、スナク氏と妻のアクシャタ・マーシー氏は英紙サンデー・タイムズの長者番付で英国の最も裕福な250人にランク入りした。同紙の推計する夫妻の試算は合わせて7億3000万ポンド(約1228億円)

一方でスナク氏には、経済の危機に対処した経験がある。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の際には4000億ポンドを支出して経済のテコ入れを図った。具体的には手厚い雇用維持制度や企業向け融資の実施のほか、飲食店の利用の割引などを行った。ただ、こうした景気刺激策には巨額のコストがかかった。

スナク氏は早くからトラス氏の経済政策を批判。これらの政策は投資家や国際通貨基金(IMF)、格付け機関から酷評されていた。

トラス氏と同様減税を支持する立場を取りつつ、スナク氏は実際の税率の引き下げについてインフレを制御下に置いた場合にのみ可能だと指摘。それにはあと数年かかるだろうとの見方を示している。

投資銀行出身スナク氏、外交手腕は未知数…初当選から異例のスピード出世

投資銀行出身スナク氏、外交手腕は未知数…初当選から異例のスピード出世(読売新聞 2022/10/25 07:01)

英国の新首相に決まったリシ・スナク元財務相(42)は、下院初当選から7年で異例のスピード出世を遂げた。経済分野で実績がある一方、外交・安全保障政策では門外漢に近く、最高指導者としての手腕は未知数だ。

スナク氏は、与党・保守党党首選への立候補を表明23日の声明で「私には問題を解決するための明確な計画がある」と訴え、英国経済の立て直しを迅速に進めることを約束した。

スナク氏は前回の党首選で、減税を主張するリズ・トラス首相らライバル候補の経済対策を「おとぎ話」と痛烈に批判した。インフレ(物価上昇)の抑制を優先し、マクロ経済の原則を踏まえた対応を訴えていた。

実際、トラス氏が就任後1か月半で辞任に追い込まれたのは、稚拙な経済対策が金融市場の拒絶反応を招いたためだ。結果的にスナク氏の主張が正しかったことが証明され、党内で急速に首相待望論が高まった。

スナク氏は2020年2月、当時のボリス・ジョンソン首相に登用されて財務相に就任。新型コロナウイルスの感染拡大で政府が緊急対応を迫られる中、外出制限で営業不能に陥った事業者や収入を失った労働者への支援など危機下の財政出動で存在感を示した。

米投資銀行大手ゴールドマン・サックスを経て、ヘッジファンドで投資業務に携わるなど経済・金融分野には精通しているが、政治家として経験豊富とは言いがたい。最大の不安材料は外交経験に乏しいことだ。国際社会では無名の存在に近い。

国際情勢に関する現状認識も明瞭ではない。財務相在任中は、香港民主化デモ弾圧を巡って英中関係が悪化する中、中国との「成熟して均衡のとれた関係」を呼びかけて経済対話再開を模索したとされる。

人種的少数派で初の首相という立場は重圧となりそうだ。英国の欧州連合(EU)離脱を巡っては、16年の国民投票で離脱を支持し、一貫して推進の立場をとっている。

英次期首相のスナク氏は「インドの星」42歳

英次期首相のスナク氏は「インドの星」42歳(産経新聞 2022/10/24 22:45)

英国のかじ取りを「インドの希望の星」と呼ばれるスナク元財務相(42)が担うことになった。39歳で財務相に就任するなどエリートコースを歩んできたスナク氏は、インド系移民の両親に育てられた出自をアピールし、「多様性尊重」の姿勢で支持拡大を図る。その半面、労働者階級を突き放すような発言を批判的に取り上げられた過去もある。

スナク氏は、ともにインド系である医師の父と薬剤師の母の間に英国で生まれた。米金融大手ゴールドマン・サックスを経て、2015年に保守党下院議員に当選。19年12月の総選挙で脚光を浴びた。ジョンソン首相(当時)に代わって出演した討論番組で他党の党首相手に舌戦を繰り広げ、「ディベート力が党内で一目置かれた」(党員)。

翌年には議員歴わずか約5年で内閣ナンバー2とされる財務相に抜擢。新型コロナウイルス禍での休業者に給与補塡を決断するなど大胆な経済政策で世論の支持を得た。「(多様なルーツの)子供たちに、より良い未来の機会を与えたい」。前回の保守党党首選ではこう訴えて「多様性尊重」の姿勢を前面に出した。

インドIT大手インフォシスの共同創業者の娘と結婚したスナク氏は最も裕福な下院議員の一人。英メディアによると、490ポンド(約8万円)の靴を履いている。トラス氏が4.5ポンド(約760円)のイヤリングを着け、庶民派をアピールしたのと対照的だ。

一部メディアは前回党首選の際、スナク氏が「貴族や上流階級の友人はいるが、労働者階級の友人はいない」と過去に発言していたことを報じ、反発を招いた。

英保守党内の分断深刻 総選挙へ結束課題―スナク新党首

英保守党内の分断深刻 総選挙へ結束課題―スナク新党首(JIJI.COM 2022年10月25日07時12分)

辞任を表明したトラス英首相の後任として与党保守党の新党首に決まったスナク元財務相にとって、最大の使命は遅くとも2年余り先に行われる総選挙での勝利だ。そのためには自身の出馬表明でも触れた党の結束が必須だが、党首選の過程で明らかになったのは党内の深刻な分断だった。

今回の党首選でジョンソン前首相を担ぐ動きがあったのも、カリスマ性があり前回総選挙で党を大勝に導いた「勝てる党首」に期待してのことだ。だが、スキャンダル辞任から間がない再登板の動きに、反ジョンソン派は激しく反発。ジョンソン氏は出馬断念に追い込まれた。

ジョンソン氏は声明で「党が団結しなければ効果的な統治はできないため、それ(出馬)は正しいことではないとの結論に至った」と出馬断念の理由を説明した。だが、選挙戦を回避しても団結を実現するのは容易でない。

そもそもジョンソン政権は、スナク氏の財務相辞任を機に一気に崩壊に追い込まれた。スナク氏をジョンソン氏退陣の引き金を引いた「戦犯」と見る議員には、スナク氏に対する反感が依然として根強い。ジョンソン氏が党首選でモーダント氏に連合を持ち掛けたともいわれる。

トラス氏の辞任は、大型減税を柱とする経済対策が市場の混乱を招いたためだが、重要閣僚の辞任や下院採決での党上層部によるパワハラ疑惑など、党内の混乱が直接のきっかけだった。スナク氏が早期に党内融和を実現できなければ、支持率ではるか前を行く野党労働党の背中は遠のくばかりだ。