沖縄住民の有機フッ素化合物血中濃度、全国平均の14倍 基地由来か(毎日新聞 2022/10/15 19:41 最終更新 10/15 19:41)
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沖縄県の米軍基地周辺の河川や湧き水から発がん性が疑われる有機フッ素化合物が高濃度で検出されている問題で、市民団体は15日、県内の住民を対象にした調査の結果、有機フッ素化合物の血中濃度が最大で全国平均の14倍に達したと発表した。市民団体は原因の特定や健康リスクの解明のため、国や県に基地内の立ち入り調査や大規模な疫学調査の実施を求めている。
調査は、県内の環境学者らでつくる「有機フッ素化合物(PFAS)汚染から市民の生命を守る連絡会」が、原田浩二・京都大准教授(環境衛生学)の協力を得て6、7月に実施。米軍基地を抱える5市町(沖縄市、宜野湾市、嘉手納町、金武(きん)町、北谷(ちゃたん)町)と、比較のために基地が所在しない本島北部の大宜味(おおぎみ)村で、18歳以上の計387人の血液を採取した。
分析の結果、有機フッ素化合物の一種「PFHxS(ピーエフヘクスエス)」は住民の平均値が最も低かった大宜味村で1ミリリットル当たり1.7ナノグラム(ナノは10億分の1)、高かった金武町では14.3ナノグラムを検出した。
環境省が2021年度に実施したモニタリング調査(対象119人)の全国平均値と比べると、1.7~14.3倍となった。「PFOS(ピーフォス)」も1.5~3.1倍と全国平均より高く、「PFOA(ピーフォア)」は0.8~3.0倍。基地がない大宜味村の住民は濃度が比較的低く、連絡会は「PFASを含む泡消火剤などが使用された米軍基地が汚染源になっている疑いがある」と結論づけた。
国内では有機フッ素化合物の血中濃度の基準値は定められていない。連絡会によると、ドイツは原則的にPFOSは1ミリリットル当たり20ナノグラム、PFOAは同10ナノグラムを管理目標値とし、値を超えると健康影響が考えられるとして行政は緊急の低減策が求められる。
今回の調査では計27人がこの値を上回った。また、水道水をそのまま飲んでいる人や男性、年配者の濃度が高い傾向があり、出血を伴う月経の有無や有害物質の体内の蓄積が影響していると推定した。
沖縄県では基地周辺の河川や湧き水から日常的に高濃度の有機フッ素化合物が検出され、県は基地への立ち入り調査を求めている。しかし、日米地位協定で基地の管理権は米軍にあり、明らかな漏出事故などのケースを除き、米軍は調査に応じていない。