ジェネリック医薬品について薬剤師が解説! 先発医薬品との違いとは?

ジェネリック医薬品は先発医薬品よりも値段が安い 科学・技術

ジェネリック医薬品について薬剤師が解説! 先発医薬品との違いとは?(Medical DOC 公開日:2022/08/25)

ジェネリック医薬品という言葉は、最近では聞き覚えがある方も多いと思います。しかしながら、先発医薬品との明確な違いなどについて知らない方も多いのではないでしょうか。今回は、鈴鹿医療科学大学薬学部准教授で薬剤師の榎屋さんにジェネリック医薬品と先発医薬品の具体的な違いを解説していただきました。

監修薬剤師:榎屋友幸(薬剤師)

ジェネリック医薬品は先発医薬品よりも値段が安い

編集部

そもそも、医薬品の値段はどうやって決定されるのでしょうか?

榎屋さん

医薬品の値段は、「薬価」と呼ばれており、国によって定められています。新しく開発された先発医薬品の薬価は、すでに発売されている医薬品と比較して決定されます。類似した治療効果を持っている医薬品の薬価と比較して決定するわけです。

もし、すでに発売されている医薬品の中に、類似した治療効果を持つ医薬品がない場合は、製薬企業のデータによって示される研究開発費など、販売までに必要とした費用に基づいて計算し、薬価が決定されます。

編集部

どうしてジェネリック医薬品の「薬価」は先発医薬品よりも安く設定されるのでしょうか?

榎屋さん

ジェネリック医薬品の有効成分は、先発医薬品と同一であり、先発医薬品の再審査期間と特許期間が満了した後でなければ製造・販売の承認はされません。

再審査期間とは、実際の医療現場で使用されたデータを収集して、先発医薬品の有効性と安全性を確認する期間のことです。

すなわち、ジェネリック医薬品は、先発医薬品の有効性と安全性が確認されている状況で開発されていくため、研究開発費などが先発医薬品よりも少なくなります。その分、薬価が低く設定されるというわけです。

編集部

ジェネリック医薬品が普及するとどのようなメリットがあるのでしょうか?

榎屋さん

日本では、国民皆保険制度により、患者さんが医薬品による治療を受けるときに支払う金額の負担割合が決まっていて、残りは国民医療費から支払われ、国の財源によって負担されています。

近年、国民医療費は増加傾向であり、その内の約20%が薬剤費であることが公表されています。ジェネリック医薬品は、先発医薬品よりも薬価が低くなるため、ジェネリック医薬品の使用が普及すれば薬剤費が下がり、その結果、国民医療費の削減、すなわち国の財源による負担の削減に繋がることになります。

ジェネリック医薬品は、薬の剤形や添加剤が先発医薬品と異なっていることがある

編集部

ジェネリック医薬品は、先発医薬品と全く同一でなくても良いということでしょうか?

榎屋さん

ジェネリック医薬品の剤形や添加剤は、先発医薬品と全く同一でなくて良いとされています。

もし先発医薬品が製剤特許を取っていれば、ジェネリック医薬品は先発医薬品と異なる添加剤を使用することがあります。ただし、使用できる添加剤は、すでに使用前例があり、安全性が確認された添加剤や毒性試験などを実施して安全性等の審査を受けた添加剤が用いられます。

編集部

剤形や添加剤が異なることで、治療効果や安定性が変化することはないのでしょうか?

榎屋さん

剤形や添加剤が異なることで治療効果が影響を受ける可能性もあります。しかしながら、厚生労働省が行うジェネリック医薬品の販売承認の審査において、有効成分の治療効果に影響しないことを示すデータやジェネリック医薬品の安定性に問題がないかを示すデータの提出が求められます。

すなわち、ジェネリック医薬品は、剤形や添加剤が異なっていても、治療効果と医薬品の安定性に問題がないことを審査されたうえで販売承認されているということです。

編集部

剤形や添加剤を変えることで、患者さんにはどのようなメリットがあるでしょうか?

榎屋さん

ジェネリック医薬品の製薬企業は、剤形や添加剤を変えることで、患者さんが飲みやすいように風味を加えるなどの工夫をすることができます。また、水なしで服用することができない先発医薬品であっても、企業独自の技術を活用して、水なしで服用できるようなジェネリック医薬品を開発している製薬企業もあります。

剤形や添加剤を変えることで、患者さんが医薬品を服用する時に感じる苦痛を、少しでも和らげるために工夫できるという点でメリットがあります。

ジェネリック医薬品と先発医薬品では、厚生労働省による販売承認の審査が異なる

編集部

ジェネリック医薬品と先発医薬品の販売承認の方法にはどのような違いがあるのでしょうか?

榎屋さん

ジェネリック医薬品の有効成分は、先発医薬品によって、すでに有効性と安全性が確認されています。したがって、先発医薬品のように、臨床試験などを改めて行う必要はありません。

ただし、ジェネリック医薬品の販売承認を得るために、提出しなければいけないデータがあります。製薬企業は、下記のデータをジェネリック医薬品の販売承認の審査時に厚生労働省に提出しなければいけません。

①有効成分となる原薬の純度や含量、薬の性状や溶けやすさなどが先発医薬品と同等であることを示すデータ
②通常の保存条件下で3年間安定であることを保証するためのデータ
③先発医薬品と効果が同等であることを保証するデータ

編集部

どのような方法でジェネリック医薬品の安定性が先発医薬品と同等であることが保証されるのでしょうか?

榎屋さん

ジェネリック医薬品の安定性を保証するために、製薬企業は加速試験を行います。加速試験とは、ジェネリック医薬品が最終包装された状態で、通常の保存状態よりも厳しい状況で6カ月間保存し、有効成分の含有量の変化や不純物の程度を調べる試験です。

加速試験の結果により、通常の保存条件下で3年間安定であることが保証されると考えられています。

編集部

では、ジェネリック医薬品の効果が先発医薬品と同等であることは、どのようにして保証されるのでしょうか?

榎屋さん

ジェネリック医薬品の効果が先発医薬品と同等であることを保証するために、生物学的同等性試験という臨床試験が行われます。

この臨床試験では、健康な成人にジェネリック医薬品または先発医薬品を服用してもらい、薬の血液中濃度の推移を調べることで、ジェネリック医薬品と先発医薬品の吸収、代謝および排泄が、統計学的に同じであるかどうかを確認する試験です。

理論的には、薬の血液中濃度の動きがほとんど同じであれば、薬効や副作用が先発医薬品とほぼ同じであることが保証されると考えられています。

編集部

先発医薬品ではなく、ジェネリック医薬品を使った方が良いのでしょうか?

榎屋さん

ジェネリック医薬品に変更することで、自身の医療費負担だけでなく、国民医療費も削減され、国の財源も削減されます。

しかしながら、これまで先発医薬品で安定していた症状がジェネリック医薬品に変えることで、悪化した事例なども報告されています。これは心理的な要因もあると考えられています。

したがって、心理的な面でジェネリック医薬品に不安を感じている患者さんに対して、服用している先発医薬品をジェネリック医薬品に変更することは、悪影響に繋がる可能性もあるということです。

また、ジェネリック医薬品の適応症は、先発医薬品と異なる可能性があります。したがって、診断された病名によっては、ジェネリック医薬品に変えると適応外の使用方法となるため変更することができないこともあります。

編集部まとめ

ジェネリック医薬品と先発医薬品の間には、薬価や販売承認の審査方法において違いがあることが分かり、ジェネリック医薬品は、効果や安定性が保証されたうえで国民医療費の削減に繋がるというメリットがあることがわかりました。

また、ジェネリック医薬品は、剤形や添加剤を変えることで飲みやすいように工夫されていることがあることもわかりました。

一方、ジェネリック医薬品に不安を強く抱いている人では、心理的な原因で、ジェネリック医薬品に変更した後に病気が悪化してしまうこともあるようです。

したがって、最終的には患者さん自身が納得した上でジェネリック医薬品を服用する必要があると考えられます。ジェネリック医薬品へ変更するか迷っているけれども不安が残っている方は、薬剤師に相談してみてはいかがでしょうか。

榎屋友幸 薬剤師
東邦大学薬学部薬学科卒業、横浜市立大学大学院総合理学研究科博士前期課程を修了。その後、三重大学医学部附属病院薬剤部に入局し、薬剤師として勤務しながら、研究を行い、2015年に医学博士を取得。2018年から鈴鹿医療科学大学薬学部の医薬品情報学研究室の准教授に着任。日本医療薬学会指導薬剤師、日本病院薬剤師会感染制御専門薬剤師、日本中毒学会クリニカルトキシコロジスト。